めんどくせぇことばかり 『未踏峰』 笹本稜平
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『未踏峰』 笹本稜平

この題名から、この内容を思い描くのは、極めて難しい。

あらかじめ内容を連想しようなんて思ったわけではないんですが、なんとなくギャチュン・カン北壁を登った山野井泰史さんみたいな先鋭的なクライマーの話を思い描いていました。

そういった内容の話ではありませんでした。

もちろん、山の話です。ネパール北西部のカンティ・ヒマール山域にある6720mの名もない未踏峰に挑もうとする、ほんの3年前までは、自分の人生が、その後、山に関わっていくだろうなんてことは夢にも思っていない3人の、ちょっと前まで真っ新な素人の話です。

この三人、いずれも自分の人生に絶望していました。一人は仕事に失敗し、犯罪に走って底辺に身を沈めました。一人は人並み外れた料理の能力を持ちながら、アスペルガー症候群ゆえに自分に絶望し、死に場所を探していました。一人は知的障害に付け込まれて人間不信に陥り、自分の将来にも絶望していました。

そんな三人に、自己を“再生”させる場を与えたのが、北八ヶ岳の山小屋の主、“パウロさん”でした。しかし、そのパウロさんも、その三人によって、“再生”の機会を与えられていたのです。

彼には、人に語れない過去があったんです。

この物語のテーマは、言葉として出てくるわけではありませんが、“再生”です。人間が、生き直そうとする物語です。まったく思い出せないんですけど、かつてキリスト者を主人公にしたそんな話を読んだことがあります。その舞台を山にしたのがこの物語ですね。“パウロさん”と呼ばれる山小屋の親父がキリスト者で、そのあだ名は洗礼名からきているというのも、おそらく偶然ではないように思います。

つまり、著者の笹本さんも、今、私が申しあげた、私が思い出せない本を読んでらっしゃるように思います。誰かその本のこと、ピンとくる方いらっしゃいませんか?

『未踏峰』    笹本稜平

祥伝社文庫  ¥ 720

ビンティ・チュリ=祈りの峰と名づけた無垢の頂に、はたして彼らは何を見るのか?
遺骨の入ったケースを胸に、それぞれに事情を抱える橘裕也と戸村サヤカ、勝田慎二の三人は、ヒマラヤ未踏峰に挑んでいた。彼らをこの挑戦に導いたのは登山家として世界に名を馳せ、その後北八ヶ岳の山小屋主人になった“パウロさん”だった。祈りの峰と名づけた無垢の頂きに、はたして彼らは何を見るのか?圧巻の高所世界に人間の再生を描く、著者渾身の長編山岳小説。


さやかの、人並み外れた料理の能力には、彼女がアスペルガー症候群であることが関わってるんですね。私かつて、アスペルガー症候群の青年に関わったことがあるんです。

一時、定時制高校の生徒に関わっていたんですが、彼はその学校の生徒でした。一年生に入学した時点で、彼はすでに、他の高校を退学していました。二度目の高校一年生です。

彼が一校目の学校を退学した理由は、きわめて興味深いことでした。彼に笑顔を向けてくれた若い女性の教員がいたそうなんです。彼は、その先生の笑顔に安心して、その先生に、母親に甘えるように接したらしいんです。それで、その先生が彼のことを怪訝に思い、遠ざけたらしいんですね。彼は、母親にでも遠ざけられたかのように感じ、粗暴な行動に出たということなんです。これは、彼の本当の母親から聞いた話です。

ものすごい運動神経の持ち主でした。体育の先生が遊びで走り幅跳びを飛ばせて、上履きのままで6mを越えました。彼が初めて本気でやった卓球で、2時間ほど彼につき合わされましたが、1時間半経つころには、私は彼に勝てなくなりました。入学した年の夏には、定時制通信制の全国大会に走り幅跳びで出場しました。ぎりぎり決勝には出場できませんでしたが、この先に大きな希望を持つことができました。

翌年も、同じ大会に出場しましたが、前の晩に徹夜でゲームをしていた彼は、選手招集時にどこかで寝ていて出場機会を失いました。

もちろん、教室の中では問題児でした。ただし、粗暴な行動に出ることがどんな不幸を招くか、とことん話し合ってありましたので、彼は決してそのような行為に及ぶことはなかったのですが、行き場所を失った感情を、彼は母親に向けました。

・・・

卒業後、彼は本人の希望により、自衛隊に入隊しました。その夏、自衛官の制服で、彼が学校に来てくれました。運動能力測定のソフトボール投げで90m投げて、すごく褒められたことなどを話してくれました。キラキラ輝いて見えました。

ゲームに熱中しているのを見とがめられて、彼を注意した上官を殴り、彼が自衛隊を除隊したと聞いたのは、それから半年ほどたってからのことでした。

以来、彼の消息は分かりません。

私は運動の専門家ではありませんが、彼の運動能力が桁外れであることは分かりました。でも、そんな能力はどうでもいいんです。“変わったやつ”を受け入れられる世の中かどうかが問題なんでしょう。

私もまた、“変わったやつ”の一人です。あなたも、そうでしょう。




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ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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