めんどくせぇことばかり 『武士の日本語』 野火迅
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『武士の日本語』 野火迅

“俗塵を払う”かあ。

いい言葉ですねぇ。俗塵ていうのは、「俗世のわずらわしいことの一切」ということですね。私なんか、それこそ俗塵にまみれて生きてきましたからね。私の仕事は若い人を相手にする機会が多いんです。よく言われるんですが、若い人は欲得にまみれていないから、つまりは俗塵にまみれてないからいいと。そういう若い人を相手に仕事ができていいねってことなんですね。

私はそうは思いません。誰だって、欲得にまみれます。多かれ少なかれ、そういったものと無関係でいられる人はいません。若い人でもおんなじです。ただ露骨なものに出会っていないだけ。

だけど、若い人は未熟だから、そういうものとの付き合い方が分かりません。距離の取り方を学んで大人になるのであって、若い人は露骨に求めすぎたり、逆に遠ざけすぎたりします。ときには目を覆いたくなることもあるんです。

だから私も、俗塵を払いに山に登るのかな。

“俗塵を払う”なんて、今でも使えますね。しかも、とってもかっこいい。

この本、けっこうおもしろい。ちょっとした暇つぶしにでもなればと思って買ったんだけど、思いの外面白い本でした。けっこう、今でも使える武士言葉ってのがあるんですね。
これは私が、私よりも三つ年下の同僚に聞いた話。採用試験における面接に関わる話で、私の時にはなかった集団面接なるものが導入されたんだそうです。今は、何かと事前の教育が行き届いて、何度も練習を重ねた上で本番に臨む学生が多いですが、そんな風潮が始まる前の話。

6・7人が一つのテーマで話を進めていくらしいんですが、中に緊張という暗い影に覆いつくされたような学生がいたらしいんです。まずは、自己紹介を回している段階から、自分の名前までつっかえつっかえで、まわりがドキドキしてしまうような感じ。・・・すると、

「私は**からま・まい・参りました****で、・・・」で、止まったんだそうです。

そこは、「****で」ではなく、「****と」だろう。「****と申します」と続けるところだろうと、若き日の私の後輩は心配しながら、その学生が「****と申します」と言い直すのを待ったんだそうです

ところが彼は、「****で」から、無理やり、強引に中央突破を図ったんだそうです。

「****で、・・・ご・ご・ござる」

「ござる~! ござるだと~!」(若き日の私の荒廃の心の声)
「おまえ、いったいどの時代から来たんだ~!」(若き日の私の荒廃の心の声)

採用試験に合格した私の後輩は、その後、二度とその“ござる”君を目にしたことはなかったそうです。


『武士の日本語』    野火迅

朝日文庫  ¥ 713

武士ならではの言葉から、武家の作法や、剣技の躍動感、江戸風景がよみがえる
第1章 武士の決まり文句
第2章 春夏秋冬が薫る言葉
第3章 武家社会の言葉(1)切腹という「しきたり」
第4章 武家社会の言葉(2)敵討という「義務」
第5章 剣術の醍醐味を伝える言葉
第6章 行動・しぐさを表す言葉
第7章 人物を評する言葉
第8章 酒と色を語る言葉
第9章 傑作古典から掘り出す、文化遺産的な武士語


さすがに、「ござる」は使えませんね。

だけど、目下の者に対しては、《大儀である》なんてのは、親愛の情として、面白おかしく受け取ってもらえるんじゃないでしょうか。下の者に対してなら、《ちょこざいな!》なんてのもいいですね。

「ちょこざいな小僧め。名を、名を名のれ」「赤胴鈴之助だー」ってね。

色っぽい言葉なら、《肉置き》なんてのがいい。いかにも脂ののった、抱き心地のよさそうな女の肌を連想させる。色っぽい言葉では、完全に今の世の中はかないませんね。

《枕を並べる》、《枕を重ねる》、《枕を直す》、《枕を濡らす》。言ってるのは枕だけど、想像させますよね。その情景を・・・。

女をものにすることを、《手折る》と表現したんですね。目当ての女を、多少強引ではあっても自分のものにすること。これは今の時代に似つかわしくはないですか。なにしろ女は、男に手折られなくても生きていけますからね。手折られた女は、その男の庇護に入るわけです。もちろん、女には手折られるにふさわしい美貌が求められます。

この本にはありませんが、ほぼ同じ状況を《花を散らす》とあらわすことがあります。《咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る》というのは都都逸だったでしょうか。

表現が豊かですね。男と女の世界も、昔の方が豊かだったのかもしれませんね。




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ジャンル : 本・雑誌

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言葉に関しては・・

今晩は。拙的には「ござる」は好感でして。現在でも少しは使えるのでは?と心得ます。

それにしても、男女の間柄はよく存じませんが、言葉に関しては 映像やITが幅を利かす現代より、
昔の方が豊かだったかも知れませんね。何せ、知恵と思考をフルに使って表さなければなりませんから。

前回貴記事の地図にしても、似た様な事が言える様な気がします。因みに拙者は Google Mapが苦手で、今も紙の地図帖の方がしっくり来る質です。苦笑

HAKASE(jnkt32) さま

HAKASE(jnkt32) さんの自称である「拙者」って言葉も、いかにも日本的でいいですよね。

地図もそうですが、最近感じるのは天気図なんです。天気図を表示しない天気予報が多くて困ります。デジタルの予報ばかりで、そのうち、予報士さんも天気図を読まなくなるんじゃないでしょうか。

ありがとうございました



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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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