尊氏像『教科書に載ってない最先端の日本史』 現代教育調査班
勇み立たんばかりの黒い馬に乗って、白刃をかざし、ざんばら髪を振り乱す騎馬武者像。 そうそう、私たちが高校の頃の足利尊氏は、やっぱりこの姿でしたよね。いやー、勇ましい。 これを足利尊氏と認定したのは東京帝国大学名誉教授の黒板勝美さんという先生で大正9年のことだそうです。でも、早くから異議が唱えられていていたんだそうです。 | ![]() |
違うとしても、将軍と見紛うほどの鎧に馬具を付けている武将なわけで、そんな武将がこんな姿で描かれるような時代であったと。時代を表す絵としては、やはり象徴的なものと考えていいでしょう。
これが足利尊氏ではないというのは、いつか、どこからか話で知りました。それでは、これが間違えられたわけだから、間違いのない本物の足利尊氏の肖像と言われるものはないというところまでが、この本を読む前の私の認識でした。
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足利尊氏像はない。
そんな私の認識は、もはや古いものでした。あるんですね。足利尊氏像。しかも、複数。それが次の二つの写真。
![]() | 左は広島県尾道市の浄土寺が所蔵する《絹本著色足利尊氏将軍画像》 右は大分県国東市の安国寺が所蔵する《木造足利尊氏坐像》 | ![]() |
面長で、鼻が大きくて、垂れ目で、モデルは同じ人物と考えて良さそうじゃないですか。
更に決定的な肖像画が見つかったんだそうです。2016年10月だそうです。・・・2016年10月と言えば、その子の27日に、私は足の手術をしています。いや~、痛かったな~。
・・・お前のことはどうでもいい。こりゃまた、失礼いたしましたっと。その絵が右のもの。 | ![]() |
古美術店を営む所有者が、入手した掛け軸を表具師に頼んでクリーニングしたところ、たまたま来店した栃木県立博物館の学芸員の目に止まったんだそうです。偶然というか、呼ばれたと言うか、不思議な事ですね。
その掛け軸には上方に画中の人物の来歴が記してあって、そこに尊氏の諡号の一つである《長寿寺殿》など、尊氏を示す事が書かれていたんだそうです。
所有者の古美術店主は交換会でこれを手に入れたということで、当然、前の持ち主がいたわけです。前の持ち主の段階では、これは足利尊氏像とは気づかれなかったわけですね。
ああ、日本各地の蔵の中に、もしかしたら、とんでもないお宝が眠っているわけですね。


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