めんどくせぇことばかり 『比ぶ者なき』 馳星周
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『比ぶ者なき』 馳星周

なにも、ここで藤原不比等を読もうと思ったわけではないんです。山の話を書き始めた馳星周さんの本を追っていて、ここにたどり着いちゃっただけなんです。

刊行された順じゃないんですけど、『蒼き山稜』、『神奈備』、『神の涙』と読んできて、たまたまなんです。でも、もとから興味を持ってる範疇ですから、さすがにすぐ分かりましたよ。「『比ぶ者なき』って、もしかして、不比等のことを書いてるの」って。

いやいや、大したもんですねぇ。だって、馳星周さんと言えばハードボイルドっていうんですか。犯罪とか、闇社会とか、んん? 暗黒小説なんて言う分野なんですか? そっちの分野からやってきて、大変難しい日本古代を舞台にして、大方の定説に挑んで、見事に理屈の通った世界を書き上げてるじゃないですか。

やっぱり、“犯罪”、“闇社会”からやってきた馳星周さんですから、その人が、この時代を見れば、大方の定説なんて「歯牙にも引っ掛けない」ってところでしょう。

でも、まともに考えれば、そういうことになるんですよね。だから、本来、畑違いだった人がこの時代に入ってくれば、大方の定説がいかにバカバカしいもんであるかが、世の中に示されることになります。

大津皇子は、鵜野讃良に殺された。
鵜野讃良は草壁を皇位につけるために、不人と悪魔の成約を交わした。
不比等は、日本書紀において、藤原氏の利益のために、この国の歴史を改竄した。
不比等は、藤原氏の利益のために、律令を制定した。

日本書紀は、日本の正史ってことになってます。でも、不比等によって改竄されたお話です。持統天皇と軽皇子の関係になぞらえて、天孫降臨の話が作り上げられて、そこから始まる話です。神話の世界から、ツッコミどころ満載です。

馳星周さんだけじゃなくて、いわゆるミステリーの世界の人に、どんどん突っ込んでいってほしいなぁ。どんどん突っ込んでいって、大方の定説なんてもの、口の出すのも恥ずかしいような感じにしてほしいなぁ。

『比ぶ者なき』    馳星周

中央公論新社  ¥ 1,836

万世一系、天孫降臨、聖徳太子――すべてはこの男がつくり出した
時は七世紀末。先の大王から疎まれ、不遇の時を過ごした藤原不比等。彼の胸には、畏しき野望が秘められていた。
それは、「日本書紀」という名の神話を創り上げ、天皇を神にすること。そして自らも神となることで、藤原家に永遠の繁栄をもたらすことであった。


この本は、藤原不比等の目で進められう話です。

藤原不比等は、悪魔的です。不比等に貶められた者たちの怨嗟に満ちた魂がまとわりついています。その不比等の目で、草壁が死んだところから不比等の生涯が閉じるまでを書き上げています。

不比等は悪すぎますから、読んでいるだけで、苦痛でした。読んでいるだけで苦痛を感じる物語を、よく書き上げたもんだと感心してしまいます。

壬申の乱の敗北で、息を潜めて生きなきゃいけないところまで落ちました。最低のところまで行った不比等が、自分を最低のところまで突き落とした天武の家系の中に寄生虫のように取り付きます。そして天武系の家系の血をすすりながらの仕上がり、やがて宿主に取って代わっていく人生に、馳星周さんは爽快感でも感じたんでしょうか。

祟られそうな不比等の話の中でも、道代とのロマンスの部分だけ、どこか初々しく感じられる部分でしたが、道代との関係においても、不比等は悪魔的だったんじゃないかと思うんです。

“県犬養橘三千代”と、のちに“橘”という姓を賜ります。道代はもとは美努王の妻ですね。宮廷の女性を束ねる才覚を持った人だったようで、不比等はどうしても、道代の能力が必要だったわけです。美努王が大宰府に厄介払いされている間に、道代は不比等のものになります。

私は、道代は不比等に脅されて、美努王を裏切ったんだと思います。美努王や、美努王との間に儲けた子どもたちの命を守るためにです。

そうじゃなければ、美努王との間に儲けた子どもたちは、父を裏切った道代を許せなかったと思うんです。しかし、子供の葛城王と佐為王が、臣籍降下した時に、道代と同じ“橘”を名乗っているのが、説明付きません。橘諸兄は、母の悲しみを知っていたんじゃないかと思うんです。

そして、それでこそ不比等だと、そう思うんです。




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もう読まれましたか、
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。

ありがとうございました



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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