めんどくせぇことばかり 富士『日本の心を旅する』 栗田勇
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富士『日本の心を旅する』 栗田勇

富士
この間、奥多摩の大岳山に登りました。最後の岩場の急な登りが辛いんですよね。息せき切って登って、ようやく斜度が緩んできて、更に進むとそこは山頂で、左手に一気に視界が広がります。

そのど真ん中に、ドドーンと、これです。まったく千両役者ですね。

《この日本一の山について今さら何を言う必要があろう。かって私は『富士山』という本を編むために文献を漁って、それが後から後から幾らでも出てくるのにサジを投げた。おそらくこれほど多く語られ、歌われ、描かれた山は、世界にもないだろう。》

深田久弥さんはそう書かれています。でも、そんな富士山でも、日本国中どこからでも見えるわけではありません。いや、むしろ富士山が見える場所は、ごく限られています。

私のところからも富士山は見えません。でも、だからこそ、だからこそなんです。「ああ、見えた」と、「ようやく見えた」と、感じさせられる富士山なんです。

故郷の秩父は盆地で、まるでお盆の底のような場所ですから、富士山からそう離れているわけではないのに、見えません。秩父には富士見坂も富士見台もありませんでした。それだけに、丸一日かけて登った雲取山頂から見た富士山は、やはり格別でした。

槍穂高や、剣であれば、それこそアルピニストの聖地と言われるように、特定の人々にとっての特別な山ですが、富士山は特定の人々だけの山じゃありません。

《と、いうより国民的な山なのである。日本人は子供の頃から富士の歌をうたい、富士の絵を描いて育つ。自分の土地の一番形のいい山を指して何々富士と名づける。最も美しいもの、最も気高いもの、最も神聖なものの普遍的な典型として、いつも挙げられるのは不二の高根であった》

また、深田久弥さんの文章をお借りしてしまいました。



春秋社  ¥ 時価

私たち日本人の“こころ”と“いのち”。その本当の煌きとは。新たな“生”の息吹に向けて
Ⅰ 色はにおえどーこころの旅路
Ⅱ 美と無常を生きる
Ⅲ 書ー宇宙の声を聴く
Ⅳ 聖と旅する

この本の中で富士山は、《Ⅱ 美と無常を生きる》の中の一項目として、《富士と日本人》という項目を付けて語られています。

例えば葛飾北斎の『富嶽三十六景』の話が出てくるのですが、そこに描かれている富士山は、決して、上の写真のように、まん真ん中にドカーンと居座る富士山じゃないんですよね。

画面には富士山よりも、まずは名所や風俗が描かれていて、富士山そのものの姿は、その背景として、庶民の日常生活の中で、心の一隅にいつも確実に写り込んでいる風景として描かれているんですよね。

しかし、同時に富士山は活火山で、まさに生きている山です。江戸時代の宝永の大噴火は、『富嶽三十六景』の葛飾北斎の生まれる五十年前のことです。伝説化していたとしても、まさに生きた伝説だったでしょう。だからこそ、そんな富士山を、各地の名所や庶民の生活の中に溶け込ませることに、意味があったのかもしれません。

著者の栗田勇さんによれば、万葉集の詠われた頃、富士山はまさに噴煙を上げていたそうです。平安時代の初期、九世紀から十世紀にかけては、富士山は二・三十年おきに噴火していたんだそうです。《最澄も空海も、おそらく清少納言も紫式部も、都から遠く離れているとはいえ、噴火すぐ富士をよく知っていた》と教えてくれています。

とすれば、当時流行った浄土教の背景にある末法思想にも、富士山の噴火は影響を与えていたのかもしれませんね。

富士山は、「万葉集」、「古今集」、「新古今集」、「後撰集」などの恋の歌の中に、多く読み込まれているそうです。煙を吐きながら鳴動する火の山と恋を結びつけるのは、無理があるようにも感じるんですが、それはどうも、現代人は、本来の、古代人の持っていた恋のあり方を失ってしまっているからのようなんです。

古代の日本人にとって、恋は心理の遊戯ではなく、《心がそのまま肉体の熱情となり、性の欲望は新たなる生命の誕生への願いと直結していた》と、著者は教えてくれています。《矮小な個人的な心理の綾や満足感》で、想いを富士山に託しているのではなく、《恐るべきエネルギーの噴煙》を、自らの内に燃える生命のエネルギーの比喩としてためらうことがなかったというのです。

人知れぬ思ひをつねに駿河なる ふじの山こそ我身なりけれ(『古今集』詠み人知らず)

そう言い切れるほど、私も、もう少し、激しく生きてみようかな。




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一言「霊峰」です

今晩は。もう理屈も何もありません。拙者には一言「霊峰富士」であります。
聞いた所では、富士の英姿をじっくり画像に収める為に職を変え、近辺に移り住む方も少なからずあるとか。
正に「人生を変える霊力」ですね。

拙者は、時間を得て間近で拝める時は、静岡・富士市内の富士河畔から。
次は一度、旧清水の三保辺りからと思いながら 果たせないでいます。
用あって新幹線で上京の折、わざと到達の遅い「こだま」に乗り、新富士駅での長目の停車中に撮影・・なんて事もありまして・・。

HAKASE(jnkt32) さま

著者の栗田さんは、「毎日、朝夕あの富士を拝める土地に住まずして、日本人の心が分かるか」と、富士山北麓、山中湖畔に小さな山荘を営むことになったとか。

あの端正な姿を見せる富士は、同時に近づきすぎると、過酷な自然環境と本質的には火山としての実態を持った畏怖の対象であると・・・。

だから、手を合わせるんですね。

ありがとうございました



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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