めんどくせぇことばかり 『オオカミの護符』 小倉美惠子
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『オオカミの護符』 小倉美惠子

子どものころ、秩父の私のうちから見える和名倉山が燃えていました。山火事です。何日も、何日も燃えました。うちからすると、ちょうど日の沈む方角なのですが、夕焼け空に山火事の煙がただよって、とても怖かったことを覚えています。

その後、高校一年の時に、仲間と四人で和名倉山に登りました。秩父の学校なんですが、土曜日の午後、学校が終わってから出かけて、日が傾き始めてから登りました。二瀬ダムから登ったんですが、道が薄くて困りました。なんとか秩父の街の明かりが見えるところまで登って、テントを張りました。

まだ、各所に、子どものころの山火事の跡が残っていて、小さいころの記憶と結びつきました。

この山、オオカミの山だったんですね。
神奈川県川崎市にお生まれの著者が、ご自宅の古い土蔵に張られた「一枚の護符」に出合いました。そして、それをきっかけに、私たちの心の深いところに眠る祈りの世界への共感を呼び覚ますたびに出かけることになります。

「一枚の護符」には、オイヌさまの姿が描かれていました。それはまさに、オオカミを現していました。日本オオカミが最後に確認されたのは、1905年、奈良県の猟師が捕獲したものだそうです。

絶滅には様々な理由があるようですが、縄文以来、私たちの文化の中には、オオカミが深く根付いていたようですね。武蔵国から関東一円には、武蔵御嶽神社や三峰神社を中心に広くオオカミ信仰が人々の心の支えになっていたようです。


『オオカミの護符』    小倉美惠子

新潮文庫  ¥ 529

都会に今もひっそりと息づく山岳信仰の神秘の世界に触れる名著
第1章 三つ子の魂百まで
第2章 武蔵の國へ
第3章 オイヌさまの源流
第4章 山奥の秘儀
第5章 「黒い獣」の正体
第6章 関東一円をめぐる
第7章 オオカミ信仰
第8章 神々の山へ
第9章 神々の居場所


山は、私たち日本人にとって、畏敬の対象そのものだったんでしょうね。山そのものから恵みを受けることもしばしばありますが、それだけじゃありません。里の恵みも、川を通して、山からもたらされるものでしょう。さらに、川は海に流れ、海を豊かにするわけです。だからこそ山は、海の人々にとっても祈りの対象であったわけです。

私たちのご先祖様は、そういうことをよく分かっていらっしゃったんですね。小さい頃、ちょっと神がかっていた祖母から、「死んだら山に行く」っていうことを言われた記憶があります。言われた私は、「いやだなぁ」って思っただけでしたけど・・・。ご先祖の霊も、山に行って、山から子孫を見ていたんでしょうか。

現実のその山で、まさに山を守っているのが、オオカミだったわけでしょう。オオカミはその活動を通して山の生態系を調整し、適当に保つ役割を担っていたわけでしょう。その山からの恵みで、山の、里の、海の人々が生きていたんですから、祈りの対象となるのは、ある意味で当たり前ですね。

だから、著者のお生まれの川崎くんだりにまで御嶽講が組まれていて、代参のものが武蔵御嶽神社にお参りに行くわけです。電車も車もないころからやってるわけですから、たいへんだったでしょう。三峰山と言うことになれば、さらにそこから一山、二山、三山と越えていかなければなりません。

そしてオイヌさまのお札をもらって帰って、それが各戸に配られるわけです。人々は、多摩川の源流の山々のオオカミが、自分たちの生活を支えていたことを、おそらく肌で感じていたことでしょう。もちろん、オイヌさまは山の生態系を調節する現実の存在であると同時に、大きな自然の巡り合わせの中でこそ、自分たちが生かされているという、そんな祈りの対象だったんでしょう。

私も、思うんです。かつて、私たちの生活領域にあった、さまざまな祈りの対象は、その多くがすでに失われています。だけど、何にも知らないにもかかわらず、そんなことを伝える石碑であったり、何か象徴的な風景、滝であったり、山そのものであったり、そういうものに接したとき、心の奥でうずくものがあるんです。

そういうものに目を向けることの大事なことを教えてくれる本でした。

山で熊に出合ったことはありません。だけど、大学一年のころだったと思いますが、三匹の野犬に前を塞がれたことがあったんです。里から1時間も歩かない山の中でした。目をそれさないように石を拾って、身構えて、どれくらい対峙したでしょう。犬は、藪に消えていきました。

あれは明らかに、捨てられたかなんかの犬が、野犬化したものでした。とてつもなく怖かった。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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