『辰巳芳子 スープの手ほどき』
今年の6月に『鬼平先生流 粋な酒飯術』っていう本を読みました。自称 “池波正太郎の書生”という佐藤隆介さんという方が書かれた、“飲むこと食うこと”い関わるエッセイ集なんです。その中で、佐藤隆介さんが辰巳芳子さんのお宅を訪れて、インタビューされた話が出ていたような記憶があります。
お母さまの辰巳浜子さんの料理の本、たしか『娘につたえる私の味』だったと思いますが、その話も書かれていたと思います。ちょっと、興味があります。辰巳浜子さんは、1977年にはお亡くなりになってる方ですから、それこそ“娘につたえる味”も、レンジでチンの料理ではないでしょう。
“安近短”でしかもおいしい料理が私の目指すところですから、とてもとてもマネできるモノでないのは分かってますが、「たとえばもしも私が女だったら、私の母は、私にどんな料理を伝えようとしただろう」なんて考えてみたんです。
そりゃ、私の母は田舎の、それも山里の女ですが、その時代の女たちは、やっぱり母親から仕込まれたんだと思うんです。“手間暇かけて事を”、・・・です。
それがどんなものなのか、知ってみたい気がしたんです。さすがに名著なんですね。いまでも時価にならずに販売されてます。浜子さんと芳子さんの共著となった新版も出されているようですね。ただ、けっこう手ごわそうな様子で、正直気後れしてしまいました。
そういうことで、今回は辰巳芳子さんの出された『スープの手ほどき』を紹介します。これなら、なんとか喰いついていけそうな気もしたんですが、・・・ところがどっこい。


《海苔を焼くときは、中表に合わせ、海苔のふちからふちへ、網の上をぞるように焼いていくと、真ん中は自然に焼けていく》
一言一句同じというわけじゃないけど、ほぼ同じことを、母からやらされた。子どものころ、一年に二度、もちをついていました。ついてすぐ食べるのもうまかったけど、やっぱり私は、切り餅を焼いて、しょうゆをつけて海苔で巻いて食うのが好きでした。正月の朝、火鉢の前で、母から言いつけられて餅を焼きました。一緒に海苔も焼きました。その時、母から同じようなことを言われたような気がします。
芳子さんのお母さまの浜子さんは、娘の芳子さんに海苔なら海苔、かき餅ならかき餅、金柑なら金柑、豆なら豆、それぞれの素材に合わせた炭の使い方、火力の作り方、つまり「火」に対するわきまえ事を見せ、聞かせたんだそうです。
わきまえ事を、芳子さんは、“道理、ものことの法則”とおっしゃいますが、“わきまえ”となると、それは人の生き方になってきます。
フランス料理の師匠は、宮内庁大膳寮で秋山徳三さんと一緒に仕事をされた加藤正之さんという方だそうです。師匠からは“細心”の心得を伝授されたそうです。
お母さまから伝授された“わきまえ”と、お師匠さまから伝授された“細心”は、お二方を亡くされても、一時はみなし児になるかと思われたものの、ふたたび芳子さんと教え子さんたちによって蘇ったということです。「いのちをかけて養われたものはめぶくものである」と辰巳芳子さんはおっしゃっています。
きびしいですね。私はそこまでスープに向き合えない。
素材を選び、素材を生かすためにわきまえて火を使い、細心の注意を払う。・・・ちょっと無理ですね。
でも、ポトフとは? ポタージュとは?
そんな素朴な形への回帰なら、私にもできるかもしれない。そんな素朴さの中に、力強いスープを作ることなら、なんとか私にも・・・。
なんてね。とりあえず、肩の力を抜いておきましょう。仕方がありませんよ。なにしろ私、いつも昼にはスープを一緒にいただいてはいます。たとえば今日は、おむすび三つとスープです。スープは職場で作ります。キャベツとにんじんとわかめに溶き卵のスープ。味は、ずいぶん前に食べたインスタントワンタンのスープの残ってたやつです。
ハハハ、こんな私ですが、・・・目指しているところは大きく変わるわけではないんですけどね。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
お母さまの辰巳浜子さんの料理の本、たしか『娘につたえる私の味』だったと思いますが、その話も書かれていたと思います。ちょっと、興味があります。辰巳浜子さんは、1977年にはお亡くなりになってる方ですから、それこそ“娘につたえる味”も、レンジでチンの料理ではないでしょう。
“安近短”でしかもおいしい料理が私の目指すところですから、とてもとてもマネできるモノでないのは分かってますが、「たとえばもしも私が女だったら、私の母は、私にどんな料理を伝えようとしただろう」なんて考えてみたんです。
そりゃ、私の母は田舎の、それも山里の女ですが、その時代の女たちは、やっぱり母親から仕込まれたんだと思うんです。“手間暇かけて事を”、・・・です。
それがどんなものなのか、知ってみたい気がしたんです。さすがに名著なんですね。いまでも時価にならずに販売されてます。浜子さんと芳子さんの共著となった新版も出されているようですね。ただ、けっこう手ごわそうな様子で、正直気後れしてしまいました。
そういうことで、今回は辰巳芳子さんの出された『スープの手ほどき』を紹介します。これなら、なんとか喰いついていけそうな気もしたんですが、・・・ところがどっこい。
文春新書 ¥ 1,296 基本のポトフから始まる、洋風スープを極める奥義 |
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《海苔を焼くときは、中表に合わせ、海苔のふちからふちへ、網の上をぞるように焼いていくと、真ん中は自然に焼けていく》
一言一句同じというわけじゃないけど、ほぼ同じことを、母からやらされた。子どものころ、一年に二度、もちをついていました。ついてすぐ食べるのもうまかったけど、やっぱり私は、切り餅を焼いて、しょうゆをつけて海苔で巻いて食うのが好きでした。正月の朝、火鉢の前で、母から言いつけられて餅を焼きました。一緒に海苔も焼きました。その時、母から同じようなことを言われたような気がします。
芳子さんのお母さまの浜子さんは、娘の芳子さんに海苔なら海苔、かき餅ならかき餅、金柑なら金柑、豆なら豆、それぞれの素材に合わせた炭の使い方、火力の作り方、つまり「火」に対するわきまえ事を見せ、聞かせたんだそうです。
わきまえ事を、芳子さんは、“道理、ものことの法則”とおっしゃいますが、“わきまえ”となると、それは人の生き方になってきます。
フランス料理の師匠は、宮内庁大膳寮で秋山徳三さんと一緒に仕事をされた加藤正之さんという方だそうです。師匠からは“細心”の心得を伝授されたそうです。
お母さまから伝授された“わきまえ”と、お師匠さまから伝授された“細心”は、お二方を亡くされても、一時はみなし児になるかと思われたものの、ふたたび芳子さんと教え子さんたちによって蘇ったということです。「いのちをかけて養われたものはめぶくものである」と辰巳芳子さんはおっしゃっています。
きびしいですね。私はそこまでスープに向き合えない。
素材を選び、素材を生かすためにわきまえて火を使い、細心の注意を払う。・・・ちょっと無理ですね。
でも、ポトフとは? ポタージュとは?
そんな素朴な形への回帰なら、私にもできるかもしれない。そんな素朴さの中に、力強いスープを作ることなら、なんとか私にも・・・。
なんてね。とりあえず、肩の力を抜いておきましょう。仕方がありませんよ。なにしろ私、いつも昼にはスープを一緒にいただいてはいます。たとえば今日は、おむすび三つとスープです。スープは職場で作ります。キャベツとにんじんとわかめに溶き卵のスープ。味は、ずいぶん前に食べたインスタントワンタンのスープの残ってたやつです。
ハハハ、こんな私ですが、・・・目指しているところは大きく変わるわけではないんですけどね。


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