めんどくせぇことばかり 狼『森の教え、海の教え』 芦原伸
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狼『森の教え、海の教え』 芦原伸

紀行作家であり旅行ジャーナリストかぁ。楽しそうですね。

この本は、そんなあっちにふらふら、こっちにふらふらの著者が、北は北海道・オホーツク海沿岸から南は沖縄・久高島、
さらにカナダ、北太平洋北東部のハイダグワイ島までを、まさにふらふらめぐって記した、“17の辺境の旅”のまとめです。

そのなかに、私の故郷、埼玉県の秩父が含まれている。

おいおい、秩父は辺境じゃないよー!

叫んでみても仕方がない。見方によっては、秩父は確かに辺境といえないこともない。明治時代の議事のまとめには、たしかに秩父の人間は“土人”として登場するくらいですから。

《東京から近くて遠い秩父。埼玉県の西方にあり、都心から一〇〇キロ余りという地理にありながら、三方の険しい山に囲まれているため、隔絶の地の観がある》って、真っ向から著者のそう言われたんじゃ仕方ない。

秩父はオオカミ信仰の地として本書に登場します。秩父の山に奥武蔵、奥多摩を含めて、そのへんの一塊の山には、きっと、ちょっと前まで狼がいたんでしょう。

しかも、この一塊の山、谷が深いんですよね。奥秩父の主稜線に行ってようやく2000m級で、そうそう高いわけでもないのに、この一塊の山は、どこに行っても上り下りが、かなり厳しい。今でも時々修験道の業者に合うことがあります。またどこからか、法螺貝の音が聞こえることも。

修験道の行者を山伏といいますが、山伏の伏は、人に犬と書きます。彼らは森の王者、狼の敏捷性、跳躍力、強靭さに畏敬の念を抱いていたに違いない。そして狼に近付こうと滝に打たれ、断食し、山野に起居して、山の持つ霊力を己のものにしようとした。

そうか、里の農民たちは、魔物を払う行者たちに、狼を重ねてみたのかもしれないですね。狼が猪や鹿、野ネズミを捕食することで、里の農民たちの作物が守られます。行者と同様、農民のために事をなしてくれる存在なんですね。



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各地で見聞きした、それぞれの土地土地に生きる人々の知恵と“教え”
<第一部 森の教え 編>
第一章 オオカミが教えてくれたこと1 大台ケ原(奈良県)
第二章 オオカミが教えてくれたこと2 秩父(埼玉県)
第三章 マタギが教えてくれたこと 阿仁(秋田県)
第四章 森林鉄道が教えてくれたこと 木曽谷(長野県)
第五章 仮面が教えてくれたこと 高千穂・椎葉(宮崎県)
第六章 南方熊楠が教えてくれたこと 田辺(和歌山県)
第七章 里人が教えてくれたこと 遠山郷(長野県)
第八章 山伏が教えてくれたこと 出羽三山(山形県)
第九章 鬼が教えてくれたこと 国東半島(大分県)

<第二部 海の教え 編>
第一章 鯨が教えてくれたこと 五島列島(長崎県)
第二章 “渡り漁師”が教えてくれたこと 鵜来島(高知県)
第三章 アイヌが教えてくれたこと オホーツク海(北海道)
第四章 天女が教えてくれたこと 丹後半島(京都府)
第五章 ブラキストンが教えてくれたこと 津軽海峡(北海道)
第六章 島猫が教えてくれたこと 田代島(宮城県)
第七章 神女が教えてくれたこと 久高島(沖縄県)
第八章 ワタリガラスが教えてくれたこと ハイダ・グアイ(カナダ)
  
ヨーロッパの方では、オオカミは家畜を襲う害獣だったんだそうです。そうか、羊を始め、家畜を買うところでは、狼は害獣なんですね。日本は農耕国家だからこそ、狼信仰があるんですね。

この本にも書かれているけど、《ダンス・ウィズ・ウルブズ》っていう映画、あれは良かった。米で作られた映画で、唯一、インディアンをしっかり描いた映画でした。主人公は白人でしたけど。その白人の主人公に、狼が慣れ親しんで、じゃれついてくるような中になるんですよね。その姿を見て、彼は、「狼と踊る男」とスー族の男たちから呼ばれるようになるわけです。

日本では、山と里は、明確に区別されるものの、山は里の隣りにあります。狼は、人の生活のすぐ近くにいたんですね。

秩父にはヤマトタケルが東征の折、狼が一行を火難から救ったという逸話があります。この本にも書いてあるところなんですが、三峯神社の狼の御札が、火除のために使われているなんてのは、このあたりから来ているんでしょうか。

ニホンオオカミは、明治38年に奈良県で捕獲された記録が最後なんだそうですね。明治38年といえば、1905年です。日露戦争の年ですね。

それで狼は絶滅してしまったんでしょう。自然を人間の利益のために改変して構わないという傲慢が、狼を滅ぼしたんでしょう。秩父には、一山全部が石灰岩でできている武甲山という山があります。この山も、人間の利益のために、日々、その姿を変えています。その武甲山の登山口に御嶽神社一の鳥居があり、そこには二対四体の狼像があります。

この山の、傷だらけの姿が、絶滅した狼に重なります。




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ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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