『友情』 山中伸弥 平尾誠二 惠子
平尾誠二さんが亡くなったのが2016年の10月20日。
私はその5日後に入院し、27日に足の手術を受けたんです。自分のことで一杯一杯で、亡くなられたのを知ったのは、半月ちょっとの入院生活の後に退院し、自分の足で歩いていける嬉しさの中でのことでした。
「えっ、うそ?」
しばらくしてから、平尾誠二さんの残した数々の名言をまとめ、解説を施した一冊が、“緊急出版”という形で出版されました。それを読んで、ブログで紹介したときに、次のように書いています。
《私は、自分よりも年長の松尾雄治に憧れた。衰えを見せ始めた松尾雄治に、引導を渡すかのように現れた年下の怪物に、最初に抱いた感情は嫉妬だった。嫉妬する程度の意地はあったものの、彼の前に進もうとするひたむきさに、いつしか励まされている自分を感じるようになっていた。》
山中伸弥さんは、平尾誠二さんと同学年だそうです。私は学年から言うと3年上です。とても近いんですけど、これが微妙な3年なんですね。
知り合ったのは、すでに50歳を手前にした年齢になってからだそうです。その年齢になってから、・・・言い方は悪いですけど、恥ずかしげもなく“親友”と呼べるような人に巡り合えるとは、あまりないことでしょう。自分に照らし合わせても、自分の狭さが情けなくなるだけですね。それだけ二人が、その年齢になっても、まだまだ前に進もうと、新しいことに、人に、興味や関心を失っていないということでしょう。
心の底からうらやましい、少しでもマネしたいです。


この本は、第2章で、平尾誠二さんの奥様の惠子さんから見た、平尾さんと山中さんの交流の様子が書かれているんです。奥様とはいえ、第三者なわけです。しかも、この二人の交流を知っている人はほとんどいないという状況の中の話ですから、奥様の目から見た二人の交流の様子っていうのは、とっても貴重な話になります。
さらに、奥様の語る平尾誠二という人物に関しても興味深いですね。勝負の世界に生きる平尾誠二にとって、子どものように純粋で、人に対して壁を作らない山中伸弥は、駆け引きのない付き合いのできる無二の存在だったようです。
さらに驚くべきことがあります。
平尾さんは、自分が癌であることを、親しい友人にさえ知らせていなかったようなのですが、山中伸弥さんにだけは、がんが見つかった当初から話していたんです。そして、癌の治療に関して、中山さんはずっと平尾さんにアドバイスしていたそうです。中山さんは、「自分が癌になっても、家族がなっても、僕はそうします」というアドバイスを、平尾さんにしていたそうです。
わらにもすがりたい奥様が、山中さんのアドバイスを受け入れたのは、「絶対にこの病気に勝ってやる、自分の全力をかけて直してあげようと。その僕が言うことを聞いて下さい」という山中さんの強い言葉だったそうです。・・・こんな言葉、私には言えません。
平尾さんの方もすごい。平尾さんの癌を気づいた人から、いろんなアドバイスがあったんだそうです。奥様がその中の一つに気を止めると、平尾さんは、「僕はもう、山中先生を信じるって決めたんや。そういうことをするのは山中先生にすごく失礼なことだよ。僕は山中先生を信じる。だから他のことはしたくない」・・・まいりますね。
今でも山中さんは、心の中で言い続けているそうです。
「助けてあげられなくてごめん」
おそらくですが、二人の物語は、この先も続いていくと思います。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
私はその5日後に入院し、27日に足の手術を受けたんです。自分のことで一杯一杯で、亡くなられたのを知ったのは、半月ちょっとの入院生活の後に退院し、自分の足で歩いていける嬉しさの中でのことでした。
「えっ、うそ?」
しばらくしてから、平尾誠二さんの残した数々の名言をまとめ、解説を施した一冊が、“緊急出版”という形で出版されました。それを読んで、ブログで紹介したときに、次のように書いています。
《私は、自分よりも年長の松尾雄治に憧れた。衰えを見せ始めた松尾雄治に、引導を渡すかのように現れた年下の怪物に、最初に抱いた感情は嫉妬だった。嫉妬する程度の意地はあったものの、彼の前に進もうとするひたむきさに、いつしか励まされている自分を感じるようになっていた。》
山中伸弥さんは、平尾誠二さんと同学年だそうです。私は学年から言うと3年上です。とても近いんですけど、これが微妙な3年なんですね。
知り合ったのは、すでに50歳を手前にした年齢になってからだそうです。その年齢になってから、・・・言い方は悪いですけど、恥ずかしげもなく“親友”と呼べるような人に巡り合えるとは、あまりないことでしょう。自分に照らし合わせても、自分の狭さが情けなくなるだけですね。それだけ二人が、その年齢になっても、まだまだ前に進もうと、新しいことに、人に、興味や関心を失っていないということでしょう。
心の底からうらやましい、少しでもマネしたいです。
『友情』 山中伸弥 平尾誠二 惠子 講談社 ¥ 1,404 最期まで決して諦めなかった平尾氏の闘病生活に、山中教授が全力で併走した |
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この本は、第2章で、平尾誠二さんの奥様の惠子さんから見た、平尾さんと山中さんの交流の様子が書かれているんです。奥様とはいえ、第三者なわけです。しかも、この二人の交流を知っている人はほとんどいないという状況の中の話ですから、奥様の目から見た二人の交流の様子っていうのは、とっても貴重な話になります。
さらに、奥様の語る平尾誠二という人物に関しても興味深いですね。勝負の世界に生きる平尾誠二にとって、子どものように純粋で、人に対して壁を作らない山中伸弥は、駆け引きのない付き合いのできる無二の存在だったようです。
さらに驚くべきことがあります。
平尾さんは、自分が癌であることを、親しい友人にさえ知らせていなかったようなのですが、山中伸弥さんにだけは、がんが見つかった当初から話していたんです。そして、癌の治療に関して、中山さんはずっと平尾さんにアドバイスしていたそうです。中山さんは、「自分が癌になっても、家族がなっても、僕はそうします」というアドバイスを、平尾さんにしていたそうです。
わらにもすがりたい奥様が、山中さんのアドバイスを受け入れたのは、「絶対にこの病気に勝ってやる、自分の全力をかけて直してあげようと。その僕が言うことを聞いて下さい」という山中さんの強い言葉だったそうです。・・・こんな言葉、私には言えません。
平尾さんの方もすごい。平尾さんの癌を気づいた人から、いろんなアドバイスがあったんだそうです。奥様がその中の一つに気を止めると、平尾さんは、「僕はもう、山中先生を信じるって決めたんや。そういうことをするのは山中先生にすごく失礼なことだよ。僕は山中先生を信じる。だから他のことはしたくない」・・・まいりますね。
今でも山中さんは、心の中で言い続けているそうです。
「助けてあげられなくてごめん」
おそらくですが、二人の物語は、この先も続いていくと思います。


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