『コミンテルンの陰謀と日本の敗戦』 江崎道朗
現在でも「反戦平和」を訴える活動家たちが、自分の主張を通すために暴力に訴えることも厭わないのは、コミンテルンの遺伝子を引き継いでいるんですね。
コミンテルンは、平和のためには、戦争を引き起こす資本主義国家を滅ぼすしかないというのが、まあ前提です。そのためには共産党の手で国家権力を資本家から奪取しなければならないと訴えました。コミンテルンにすれば、資本家がいる限り戦争が起こるのだから、戦争を抑止するためにも、武器を手にして共産党独裁を実現する革命を行わなければならないということになるんです。
レーニンは、1920・7・28に《民族・植民地問題についてのテーゼ》を発表しました。その中で彼は、植民地開放を徹底して応援することによって、イギリスやフランス、オランダと言った資本主義国に対する反乱を煽っていけば、「資本主義に対する勝利を保証」できると主張しました。見事な作戦です。
アジア・アフリカの植民地開放闘争を利用して、世界の共産化を進めようとしたんです。そして実際、欧米列強の植民地支配に苦しんでいたアジア・アフリカの独立運動の指導者たちは、コミンテルンの呼びかけに積極的に呼応したわけです。
利用されたわけですから、幾分、差し引くべきかもしれませんが、まあ、彼らもリトル・レーニン、リトル・スターリンになって偉そうにするわけですから、その必要はないでしょうか。
『コミンテルンの陰謀と日本の敗戦』 江崎道朗 PHP研究所 ¥ 1,058 コミンテルン。それは恐るべき思想と悪魔的手法に裏打ちされた組織であった |
さらに、「封建的諸関係、あるいは家父長制的=農民的諸関係が優勢を占めている遅れた国家や民族については、共産党は民族解放運動を行為によって援助するとともに、地主に反対し、大土地所有に反対し、農民運動に出来るだけ革命的な性格を与えることに務めよ」と命じています。
世の中にはこういう人もいるんですね。
自分たちが、敵である資本家と、その社会を倒すことを最優先して、そのためには常に手段を選ばず行動してきた経験を持っていますからね。違う社会構造を持った国家に対してであっても、どこをどう突かせれば、自分たちが成し遂げたと同じ効果を、その社会に及ぼすことができるか、分かるんですね。
天才というよりも、レーニンは悪魔的です。コミンテルンに対しては、無条件の忠誠を求めるわけですが、それは常に、手段を選ばない行動を求めることでもあったわけです。つまり、その人にも悪魔になることを強いるわけです。
なにしろこれは、家族を基礎とした社会的・道徳的基盤を支える地主と資本家を殺し、その財産を奪うことで植民地的支配から開放し、宗主国たるイギリスやフランスを追い詰めようとするものであるわけですから。
そのようにして植民地支配から開放された地域も実際にあります。だけど、だいたいボロボロになりましたね。
また、ソ連が植民地開放闘争を支援して、その国が独立したとします。当然ですが、その国を独立に導いた独立運動家が権力を握ることになるでしょう。レーニンは、それを容認する気がないわけじゃないんです。ただし、その旧独立の英雄にして、新たな国家指導者は共産党員であるべきだと言うんです。いや、共産党員でなければならない。それを受け入れないならば、容赦なく粛清の対象とすべきだとしているんです。
やっぱり、悪魔的ですね。


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