めんどくせぇことばかり 『中国人のこころ』 小野秀樹
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『中国人のこころ』 小野秀樹

中国人とのやり取りは初めてで、かつちょっと内気な性格のコンビニエンスストア店長の尾野さん(五三歳、仮名)と、中国人で新人アルバイトの王利鴻さん(二一歳、仮名)とのやり取り
尾野:「あ、王くん、王くんは今週の金曜日もシフトに入っているよね?」
王利鴻:「(ぼそっと)うん↘」
尾野:「・・・え~と、(少し小声の早口で)その日はね。特発のお彼岸のおはぎが入って来るんだけど」
王利鴻:「ア~↗?¡」
尾野:「え、いや、あの、おはぎ・・・。ま、いいよ、それは」

これから仕事の指示を出そうというときに、「(ぼそっと)うん↘」はないですよね。少なくとも、そんなの、目上に仕える言葉じゃないんだから、二一歳のアルバイトが五三歳の店長に返す言葉としては、まあ、言語道断ってところです。

それだ慌てた店長は、ついつい自信を失ったビクついた状態のまま、小さな声で、しかも少々早口で、次の指示を出そうとしてしまいました。それを王利鴻くんが聞き取れなかったのも、たしかに無理はありません。


だからと言って、だからと言ってですよ。「ア~↗?¡」はないじゃありませんか。「ア~↗?¡」ですよ。

コンビニの出入り口付近でウンコ座りで輪になってペットボトルのなんかを飲んでる四人の不良に、「そこ、邪魔だよ」って注意したときに、後ろ向きだった奴が、振り向きざま、私を斜めに見上げるように発した言葉が、・・・「ア~↗?!」ですよ。

「ア~↗?!」に続く言葉と言ったら、「よく聞こえね~よ。もう一回言ってくれよおっさん」ってことでしょう。

それを、中国人で新人アルバイトの王利鴻さん(二一歳、仮名)が、コンビニエンスストア店長の尾野さん(五三歳、仮名)に対して、「ア~↗?!」は、そりゃいくら何でもおかしいでしょう。王利鴻くんも、尾野さんに対して、「よく聞こえね~よ。もう一回言ってくれよおっさん」と言いたかったわけでしょうか。

『中国人のこころ』    小野秀樹

集英社社新書  ¥ 929

グローバル化が進み、中国人との日々の接点が増えている現代日本人にとって、必読の一冊
序章  「ことば」は人を造り、人を現す
第1章 対話における反応
第2章 人間関係とコミュニケーション
第3章 中国語の伝達機能と受信感覚
第4章 中国人の価値観
第5章 言語システムに侵食する思考と感覚


そうではないんですね。王利鴻くんは、実際、本当に店長の指示が聞き取れなかったので、困ってしまっていたのです。

まず、最初の尾野さんの呼びかけに対する王利鴻くんの「うん↘」です。日本人の常識ってのを考えれば、たしかにここは、「はい」、あるいは「ええ」と応じるところです。

これは日本語の「うん」ではなくて、中国語にも似たようなニュアンスで、「ん↘」ってのがあるんだそうです。意味は肯定や応諾。しかも、“中国”の場合、目上に使ってもさしっ使えないっていうんです。だからこのケースでも、“中国”であれば、当たり前に使える言葉なんだそうです。

こうなると難しいですね。

だとしても、「ア~↗?!」はないですよね。いくらなんでもこれはまずい。だって、いかにも後ろに、「よく聞こえね~よ。もう一回言ってくれよおっさん」って、続きそうじゃないですか。尾野さんは、それを察知して、この仕事の指示を出すことをあきらめてしまったようです。

でも、これも、じつは誤解のようなんです。

たしかに“中国”の人は、私が、先ほど例としてお出しした私のコンビニ入り口での体験のような、「ア~↗?!」というものの効き方をします。いや、するそうです。

それは聞き返し、もしくは相手の発話の再現を促す意味を持っているという意味では、日本における、「え?」に近い言葉ですね。もちろん、「え?」であれば、日本人でもそこに攻撃的な、あるいは敵対的なにおいをかぎ取ったりいたしません。

でも、“中国”においては、「ア~↗?!」であっても、そこに攻撃的な、あるいは敵対的な意味はないんだそうです。

難しいもんですね。

「人は、言葉によって造られる」とは、この本の教えてくれるところでありますが、私もそう思います。日本語は、この島国の気候風土に合わせて語られる言葉で、その言葉によって、私たち日本人は造られています。日本語は、日本語を勉強している他所の国の人からすると、ずいぶん難しい言葉なんだそうですね。

それはこの島国の気候風土が、他の国からすると特別で、この気候風土に合わせて語られる言葉も、同じく特別なものになってしまったんでしょう。

もちろんそれは、どこだって大なり小なりそうなんでしょうけどね。そして、ことさらにそれを感じてしまうのが、同じような行動原理や、同じようなものの考え方をするのではないかという幻想を、ついつい抱いてしまう近隣に国家なんですよね。近いからこそ、よけいに“違う”ということが大きな問題に感じられるんですね。

まだ、読み始めたばかりなんですが、“中国”の言葉は、どんな中国人を作り上げているんでしょうか。





一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本












































































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