めんどくせぇことばかり 『物語を忘れた外国語』 黒田龍之助
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『物語を忘れた外国語』 黒田龍之助

司馬遼太郎が懐かしいな。

明治維新や戦争の時代の捉え方に異論を呈されることもありますが、時代と人の関わりを書かせたら、とにかくうまくて、多くの人を歴史に惹きつけました。

昔からちょこちょこ読んでたんですが、肺気胸で入院生活を強いられた三五歳の時、連れ合いに図書館の司馬遼太郎全集を第一巻から借りてきてもらって読み始めたら止まらなくなって、五十数巻ある全集を全部読んでしまいました。『胡蝶の夢』はその時に読んだんだと思います。

まあ、幕末青春群像って言えばいいんでしょうか。主人公といえば、医の道に生きる松本良順ということになるでしょうか。ただ、良順を描くのがこの物語の主題じゃなくて、なんて言えばいいんでしょう。本当の主役は、“時代”の方って言えばいいんでしょうか。

この物語の主な登場人物として、良順に並んで書かれているのが、蘭方医の関寛斎、もう一人が語学の天才である島倉伊之助でした。その時は、「はあ、ここまでの語学の天才ってのが、本当にいるんだ」って思ってました。

でも、本当にいたんですね。そして、今も。

この本の著者の黒田龍之助さんという方は、まさにそうでしょう。もともとが、ロシア語の先生みたいですね。大学で教えるだけじゃなく、テレビやラジオをロシア語講座をやってる人だって言うんだから、それだけですごいです。

ところがそれだけじゃなくて、英語の先生としても大学で教えてて、ウクライナ語やベラルーシ語の参考書を出していて、フランス語、イタリア語、ドイツ語に関するエッセイを書いていて、チェコではチェコ語で公園をしたっていうんですよ。ボ・ボヘミアン。

「読むならウクライナ語が楽で、小説に限って言えばフランス語のほうが親しんでいる。旅行会話ならイタリア語、セルビア語、クロアチア語に根拠のない自信を持っている」というのは自慢なのか。

こういう人は、伊之助同様、“天才”ということにしておきましょう。そうでもしないと、最近、日本語すら危うい感じの時分が惨めになります。


『物語を忘れた外国語』    黒田龍之助

新潮社  ¥ 1,728

いつもかたわらに物語を。小説や映画と一緒なら、語学はもっと面白い!
犬神家の英文講読
ボッコちゃんの動詞活用
横道世之介の和仏辞典
細雪のウクライナ語?
砂の器の日本語の器
スウェーデン語の謎
モルバニア国へようこそ!
エストニア語行き星の切符
マイ・フェア・言語学者?
太陽系共通語のルーツ
ほか


外国語ができる人には、できない人間にはない世界の広がりがあって、その分、人生の楽しみっていうのも、自然と豊かになっていくようですね。

自分が日本語で読んで親しんだ本が、外国語に翻訳されて出版されていて、それを読む機会があるなんて、面白そうですよね。いまさら私が面白そうだなんて言ったって、もうどうにもなりませんけどね。

黒田龍之助さんがチェコ語での講演を依頼された際、今ひとつ自信の持てないチェコ語に慣れるために読んだのが、少年の頃から好きだった星新一だったそうです。こういう楽しみがあるなんて、羨ましいですね。

そのうち仕事でも必要になるらしくって、息子なんかはTOEICっていうんですか。いい点数を取るためにいつも勉強をするようにしているようですけど、黒田さんは、そういうのには馴染めないっていうんです。「日本の外国語学習は体育会系だ」って。

「TOEIC対策問題集とか、およそつまらない教科書を使っている。そういうものが推奨される不幸な時代である」ですって。

そういえば、福沢諭吉はアメリカに行って、女をナンパしてましたね。

黒田先生は面白い映画やドラマを見たあとで、その原作を読むんだそうです。映画やドラマをDVDで何回も繰り返してみて、その上で原書を読むんだそうです。分からないところがあったら、どうすると思います。分からないところがあったらね、読み飛ばせばいいんだそうです。

「テストをされるわけでもなければ、邦訳を出版するわけでもない」って。自分が楽しめればそれでいいってことですね。

しかも、先生は、それを仕事としてできるってことを、喜んでおられます。楽しめればそれでいい。・・・確かに体育会系ではないですね。

私、語学はさっぱりですが、面白いエッセイ集でした。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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