千億の夜『敗者の生命史38億年』 稲垣栄洋
「ここからここまで」と区切りをつけられても、私の知っている世界には、その向こうがある。たとえ、決して打ち破れないほどの高くて分厚い壁を作られようとも、間違いなくその向こうはある。
でも、宇宙というところは、違うんだそうだ。“はじまり”には、その向こうがないんだそうだ。なんにもないところに、一が生まれた。零だったところに、一が生まれた。なんにもないところに何かが生まれるっていうのは、どういうことなんだろう。わけがわからない。
生まれたときのことなんか覚えてないけど、母から生まれた時が私の始まりであることは、もちろん受け入れる。始まりがある異常終りがある。終わってしまうのは嫌だけど、みんなが終わっていくのを見て、受け入れざるを得ないものだと分かってきた。終わってしまったその向こうは、何があるんだろう。
おそらく、なにもないんだろう。何もないってなんなんだろう。宇宙の始まりのその向こうには、何もなかったという。宇宙の始まりのその向こうの何もないって、私の終わりのその向こうのなにもないと同じなんだろうか。
だったら、宇宙って、生きるってことなんだろうか。


いつ頃のことだったろう。『百億の昼と千億の夜』という本を読んだ。中学生だったかな。高校生だったかな。すごい怖い話で、あまり宇宙のことは考えないようにしようと思った。
考えないようにしようと思ってたら、そのお話が漫画になって現れた。私がいつも、友人から借りて呼んでいた少年チャンピオンに、《がきデカ》のこまわり君に並んで連載されたいた。萩尾望都さんの絵で、阿修羅がかっこよかった。
宇宙の起源であるとかを扱った物語の中で、私に一番大きな影響を与えたのはこの本かな。あるいは、半村良の『妖星伝』かな。いずれにせよ、宇宙に意味を考えるってことで共通しているように思う。でも、どうだろう。意味って、本当にあるのかな。“ある”と思うことにすると、それは宗教になっちゃうな。たしかに、ここまで面白いと、“ある”ことにしてもいいかなって思っちゃうけどね。
実際、私に連なる命の起源は三十八億年前にあるわけで、この三十八億年間、途切れることなく累々と遺伝子を受け渡しつつ、命は私にまで繋がってきた。それじゃあ、三十八億年前の零から生まれた一は、一体何者が、どんな状況で、どんなふうに、・・・。
「それ考えてると、一晩中眠れなくなっちゃうの」(春日三球さん風に)
何もない世界にそれは生まれた。 そこには前も後ろもない。縦も横もない。そこには空間が存在しないのである。 そして、そこには昔も今もない。長いも短いもない。そこには、時間さえ存在しないのだ。 そんななにもない世界に宇宙が誕生した。百三十七億年も昔のことである。 p003 |
でも、宇宙というところは、違うんだそうだ。“はじまり”には、その向こうがないんだそうだ。なんにもないところに、一が生まれた。零だったところに、一が生まれた。なんにもないところに何かが生まれるっていうのは、どういうことなんだろう。わけがわからない。
生まれたときのことなんか覚えてないけど、母から生まれた時が私の始まりであることは、もちろん受け入れる。始まりがある異常終りがある。終わってしまうのは嫌だけど、みんなが終わっていくのを見て、受け入れざるを得ないものだと分かってきた。終わってしまったその向こうは、何があるんだろう。
おそらく、なにもないんだろう。何もないってなんなんだろう。宇宙の始まりのその向こうには、何もなかったという。宇宙の始まりのその向こうの何もないって、私の終わりのその向こうのなにもないと同じなんだろうか。
だったら、宇宙って、生きるってことなんだろうか。
『敗者の生命史38億年』 稲垣栄洋 PHP研究所 ¥ 1,728 悠久の生命の歴史の中では、最終的に生き残ったのは常に敗者の方であった |
いつ頃のことだったろう。『百億の昼と千億の夜』という本を読んだ。中学生だったかな。高校生だったかな。すごい怖い話で、あまり宇宙のことは考えないようにしようと思った。
考えないようにしようと思ってたら、そのお話が漫画になって現れた。私がいつも、友人から借りて呼んでいた少年チャンピオンに、《がきデカ》のこまわり君に並んで連載されたいた。萩尾望都さんの絵で、阿修羅がかっこよかった。
宇宙の起源であるとかを扱った物語の中で、私に一番大きな影響を与えたのはこの本かな。あるいは、半村良の『妖星伝』かな。いずれにせよ、宇宙に意味を考えるってことで共通しているように思う。でも、どうだろう。意味って、本当にあるのかな。“ある”と思うことにすると、それは宗教になっちゃうな。たしかに、ここまで面白いと、“ある”ことにしてもいいかなって思っちゃうけどね。
実際、私に連なる命の起源は三十八億年前にあるわけで、この三十八億年間、途切れることなく累々と遺伝子を受け渡しつつ、命は私にまで繋がってきた。それじゃあ、三十八億年前の零から生まれた一は、一体何者が、どんな状況で、どんなふうに、・・・。
「それ考えてると、一晩中眠れなくなっちゃうの」(春日三球さん風に)

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