めんどくせぇことばかり 『敗者の生命史38億年』 稲垣栄洋
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『敗者の生命史38億年』 稲垣栄洋

息子が理工学部、しかも物理学科を選んだときは、私は本当に驚いた。

なにしろ私は根っからの理科音痴。面の皮を何枚めくってみても、理系の取っ掛かりさえ出てこない。「なんで?」って聞いたら、彼が中学生の頃、私が買ってきて読んだ本が面白かったって。そこから理科に興味が湧いたってことらしい。
う~ん、なんだろう。私が理系の本なんか読むはずがない。内容を聞いてみたところ、「どうも、この本のようだ」ってのが思い当たった。『空想科学読本』・・・私は決して理系の本として読んだわけではなかったんだけど。
この本に触発されて科学に興味を持った息子は、今は自動車部品メーカーの技術屋として働いている。きっとそのうち、夢も希望もある自動車が世の中を席巻することになるだろう。

さて、この本。『敗者の生命史』と、歴史の“史”がついているものの、著者の稲垣栄洋さんは農学部の先生で植物学が専門みたい。つまり、理系の先生。[近現代日本]、[近現代東アジア]、[近現代世界]、[日本 思想]、[世界 思想]とかって、いろいろと本の分類を作ってあるんだけど、この手の本にふさわしいものはない。仕方がないので、[本 その他]に分類。[理系]とか作ってみたところで、この本が最初で最後になる可能性もある。

とは言うものの、面白かったな~。もちろん、理系音痴を悩ませる言葉が並ぶところは読み飛ばしてしまったけどね。読み飛ばしておいてこういう言い方もなんだけど、読み飛ばしても、ちゃんと面白く読めるんだからすごいね。

原始的な生命体が、植物と動物に分かれていくところなんかすごかった。共生っていうの、本当にすごいね。もとは独立した生命体だったものが、他の生命体の細胞に取り込まれて、その中で生きるってね。葉緑体を取り込んだのが植物として進化していって、ミトコンドリアを取り込んだのが動物になっていく。植物は自分で栄養を作り出せるから、動物みたいにチョロチョロ動き回る必要はなかったって、そういう物の考え方、したことがなかった。



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悠久の生命の歴史の中では、最終的に生き残ったのは常に敗者の方であった
プロローグ 敗者が紡いだ物語‒‒‒‒‒38億年前
競争から共生へ‒‒‒‒‒22億年前
単細胞のチーム・ビルディング‒‒‒‒‒10億~6億年前
動く必要がなければ動かない‒‒‒‒‒22億年前
破壊者か創造者か‒‒‒‒‒27億年前
死の発明‒‒‒‒‒10億年前
逆境の後の飛躍‒‒‒‒‒7億年前
捲土重来の大爆発‒‒‒‒‒5億5000年前
敗者たちの楽園‒‒‒‒‒4億年前
フロンティアへの進出‒‒‒‒‒5億年前
乾いた大地への挑戦‒‒‒‒‒5億年前
そして、恐竜は滅んだ‒‒‒‒‒1億4000万年前
恐竜を滅ぼした花‒‒‒‒‒2億年前
花と虫との共生関係の出現‒‒‒‒‒2億年前
古いタイプの生きる道‒‒‒‒‒1億年前
哺乳類のニッチ戦略‒‒‒‒‒1億年前
大空というニッチ‒‒‒‒‒2億年前
サルのはじまり‒‒‒‒‒2600万年前
逆境で進化した草‒‒‒‒‒600万年前
ホモ・サピエンスは弱かった‒‒‒‒‒400万年前
進化が導き出した答え
あとがき 結局、敗者が生き残る


だいたい、題名、この『敗者の生命史』っていうのが、けっこう理系音痴の心をそそる。見事なもんだ。敗者こそが旅に出るんだね。負けたからさ、そこでは生きていかれないわけだ。だから旅に出る。

鮫みたいな強いのは、旅には出ないのさ。ただ、君臨していればいいからね。負けた魚は強い奴らが行かない場所に旅に出る。そこが川の河口、汽水域だったんだそうだ。浸透圧で体の中が薄まっちゃうから、ウロコを持ったんだって。ウロコで水が入ってくるのを防いだんだって。さらに腎臓を発達させて体内の塩分濃度を適性に保って真水の中でも生きられるようになったいったんだそうだ。つまり川魚になっていくんだ。

そして次の大きな変化は骨。ミネラル豊富な海から川に登るには、カルシウムなどのミネラル分を体内に蓄積しなければならない。それを蓄積する機関が骨なんだそうだ。この骨が魚たちに敏捷性を与えた。

川に行けば行ったで、そこにも戦いはあって、負けたやつはまた上流へ登る。なかには、どこに行っても食われるなら、いっそ海に戻って食われてやるとばかりに海に戻ったやつもいる。でも、川の、それも上流で生存競争を戦った彼らは、海のライバルにはない俊敏性を身に着けていた。

面白い。

さらには、その上流に追い詰められていった奴らの中から、陸上に上がるやつまで出てくることになる。

ううっ!ご先祖さま!

もはや、ここまで来ると、涙なしには語れない。だってさ。人間はアフリカで生まれて、旅に出たわけでしょう。旅に出たのは、生き残るためでしょう。生存をかけて敗れたものは、生き残るために旅を続ける。遠く離れた、この日本列島に生きるものとしてはさ、やっぱり涙なしには語れない進化の歴史だな。


面白かった。こういう本は読み慣れていなかったけど、自分には無理って敬遠するのはやめにしよう。自分の中の新しい興味が引き出されるかもしれない。うちの息子みたいなパターンもあるしね。とんびが鷹、瓢箪から駒、塞翁が丙午。なにがどんなことに繋がるかは、それこそ私なんかの想像の外のこと。



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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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