めんどくせぇことばかり 『そばですよ』 平松洋子
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『そばですよ』 平松洋子

なんてたって表紙ですよ、表紙。

ライオンが立ち食いそば屋でそばを食ってる。それも、ただのかけそばじゃない。えび天そばを食ってる。それも直立して二本の後ろ足で立っている。左前足でどんぶりを持ち、右前足で上手に箸を使ってる。おそらく猫舌なのだろう。わずかに開いた口元をすぼめて、フーフーしているようだ。

「なんじゃ、こりゃー!」って手にとってしまう。そして、裏表紙を見て腰を抜かす

今度はその立ち食いそば屋を入口の外から見たところ。そばと書かれたのれん越しに、のれんで後頭部を隠されているものの、どうやらライオンの右隣には熊が、同じく後ろの二足で立っている。肘のあたりで曲げている前の二足の感じでは、ライオンと並んで蕎麦をすすっているのかもしれない。

更にライオンの左隣には、そばの置かれた卓には背が足りないのか、台に乗った鳥がいる。鳥のそばはまだ来ていないと見えて、鳥は羽を閉じている。そばが来たらどうなんだ?どうするんだ?その羽根を広げて、左の羽根でどんぶりを持ち、右の羽根で橋を使うのか?そうなのか?そうなのか?

副題は“立ちそばの世界”。今は立ち食いそばではなく、立ちそばというのか。学生の頃は、よく朝めし代わりに利用したな。もう四〇年も前のことだけどね。三鷹の駅の立ち食いそばだ。たいがいがかけそば。ねぎたっぷり乗せさせてもらってね。仕送りもらったあとは、月見そば、コロッケそばだな。天ぷらそばまではいっても、天玉そばは、・・・畏れ多い。

おそらく、学生のときは食ってない。働くようになってから、仕事途中、サービスエリアの立ちそば屋で天玉そばを食って、感涙にむせんだ記憶がある。


『そばですよ』    平松洋子

本の雑誌社  ¥ 1,836

東京の東西南北二十六軒の立ち食いそば店を訪ね、つゆの香りをかぎ、そばを味わう
いか天そばに動揺する「川一」秋葉原
お江戸日本橋の名作そば「そばよし 日本橋本店」日本橋
夏の極楽。冷やしそば「ひさご」浅草橋
どこにもないコロッケ「大和屋」中延
一日に二度食べるツワモノに聞く「はるな」本郷三丁目
土地の記憶を食べる「白河そば」牛込柳町
吹き晒しでゆく「田舎そば かさい」中野
家族げんかも味のうち「峠そば」虎ノ門
?カラー口絵「峠そば」
夜明け前の応援歌「そば千」東神田
優しいつゆが染みる「稲浪」飯田橋
きしめん、五十余年「寿々屋」人形町
山口良一さんと池袋「君塚」「乱切りそば あずみ」池袋
立ちそば界のやんちゃ坊主「よもだそば」日本橋、銀座
そばバル仕様で攻める「? la麓屋」田町
夜を攻める「四谷政吉」四ツ谷
ふじこさんは千歳烏山の太陽だ「ファミリー」千歳烏山
?カラー口絵「ファミリー」
坪内祐三さんと早稲田界隈「はせ川」早稲田
肉そばと肉じゃがの関係「南天」椎名町
銀座六丁目、路地裏の華「陶そば」銀座
築地の歴史を見はるかす「深大寺そば まるよ」築地
ダイヤモンドとバジル「そばうさ」麹町
だからテレサ・テン「港屋」虎ノ門
新潟にトリップ「がんぎ 新川一丁目店」茅場町
うさ、うさ、うさの三拍子「うさぎや」新橋
みんなの福の神「福そば」人形町


立ち食いそば、・・・あっ、立ちそばね。立ちそば屋ってのは、なにしろ入りやすい。

そう、学生の時の、三鷹駅の立ちそば屋は、何度も、・・・どれだけ食ったかわからないくらい食ったけど、店に入った記憶が無いんだ。私は食べ物屋さんに入るのが苦手で、緊張しちゃう方なんだけど、立ちそば屋ってのは別だね。敷居が低いっていうか、敷居なんかないに等しいな。

“緊張しい”の私のような人間の、心強い味方が立ちそばやだな。

だけど、“立ちそば屋”をめぐって、一冊の本になるってのは、やっぱり東京ならでは、ということなんだろう。だって、私の生活圏には立ちそば屋がないもん。気軽に立ちよろうにも、店がなきゃしょうがない。

この本は、著者の平松洋子さんが、雑誌『本の雑誌』に連載中の《そばですよ》というコラムの第一回から三十四回までを一冊にまとめたもの。選ばれている店も雑多。雑多ではあるけれども、著者は自分の味を地道に守る店を選んだという。本を読んでるだけじゃ、それはわからない。「食いに行ってみたいな」って思うけど、それがために東京まで出ていくほど酔狂じゃない。東京に用があって出た時に、ついでに、ここに出てる店に寄ってみるってのはあるだろうけど、きっとそのときにはこの本のことを忘れている。

そういうもんなんだ。・・・で、腹が減る時間になると、この本のことを思い出すんだ。店の名前や場所までは、もちろん覚えてない。だけど、それでいいや。もう一つ、ここに紹介されている立ちそば屋に、いや、紹介されていない立ちそば屋も含めて共通していることがある。立ちそば屋ってのは、おしなべて敷居が低い。その時も私は、きっと立ちそば屋に入る。

その時、隣の客がライオンだったら、とても嬉しい。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本












































































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