めんどくせぇことばかり 『本当の知性を身につけるための中国古典』 守屋淳
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『本当の知性を身につけるための中国古典』 守屋淳

“中国”の古典なんていうと、あまりにも茫洋としすぎていて、掴みどころがない。

今の中華人民共和国は、中国共産党という政党による一党独裁体制で、強引に一つにまとめている国。力によって強引に一つにまとめているっていううことにおいては、清王朝までの王朝時代とまったく同じ。力で強引にまとめないと、まとまらないのが、この“中国”っていう場所なんだな。

まとまらない、ばらばらになった状態を“分裂”というけど分裂した個々っていうのが、“中国”っていう場所の、例えば一つの民族であったり、一つの言語集団であったりするわけだ。

かつては利益を集中させるために、それらが互いに争い合って、統一に向かった。

“中国”では統一が達成されてしばらくの安定期は治安も安定し、人口も増加する。やがて人口が増えすぎて無軌道な開発が行われ、土地が力を失い生産が落ちる。自然のリズムが崩壊して災害が発生し、時には蝗害が人々を襲う。腹を減らした者が流れ始め、治安が崩れ、闘いが始まり、王朝は衰弱していく。大きな戦いが起こり、多くの人々が巻き込まれて人口が減少する。王朝が滅び、“中国”は分裂期に入る。

統一期が“中国”っていう場所の常態なのか、分裂期が“中国”っていう場所の常態なのか。これってけっこう微妙な問題なんだな。ともあれ、最初にこれを統一しちゃったのが秦王政こと、始皇帝ということ。

秦王朝だとか、漢王朝だとか、初期の統一王朝はすべてが最初の体験で、しかも匈奴という大敵に虎視眈々と狙われている状況。武帝の頃までは死に物狂い。その後、せっかくの統一王朝が潰れちゃって、その後の混乱っていうのも初体験。だけど、“中国”ってのが何かを創造したのはそのあたりまでで、勉強していても、やはりワクワクするのはそのあたりまで。その後の“中国”っていう場所の歴史は、惰性で勉強した。

この本に登場するいろいろな言葉やエピソードも、そのあたりまでのものが大半なんだよね。

“中国”っていうのはその場所を現していて、これが一つの領域と捉えてしまえば、それは茫洋とした掴みどころのない対象になってしまう。分裂した個々の地域の切磋琢磨の中に、大きなエネルギーがあったんじゃないかな。


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「東アジア的な知性」を、楽しみながら深められるような言葉やエピソードを紹介
はじめに 高い視座から「原理原則」を語る
第一章  孔子、孟子、老子ー思想家や文人
第二章  舜、劉邦、武帝ー王や皇帝、支配者まで
第三章  孫武、呉起、王安石ー宰相、将軍から盗賊まで
第四章  曹操、鄭芝、司馬仲達ー『三国志』の群雄たち


漢が滅んで三国時代からは、延々と続く分裂期。数百年後に隋という王朝が“中国”を統一するが、漢までとは人も文化もまったく別物。ちょうど日本という国家が誕生する時代の話になるけど、“中国”は同じパターンの繰り返しに入っていく。惰性で勉強したところだね。

隋が登場するよりもずっと前、分裂期の真っ只中、北方から様々な異民族が侵入し、漢時代の系統を引き継ぐ人々は南部に押しやられていた。南に押しやられた始まりが東晋で、そのあとに宋斉梁陳と続く。最後の陳が、北方から入ってきた鮮卑族の作った隋に滅ぼされて、漢時代の系統を引き継ぐ人々の歴史は終わる。

その東晋から宋の時代にかけて生きた文人に陶淵明がいる。隠遁の詩人というイメージが強いけど、役人として仕えたこともある。《帰去来の辞》くらいしか知らないけど、「歳月人を待たず」っていうのも、陶淵明の詩の中に出てくる言葉なんだそうだ。

その詩というのは《雑詩》。以下のようなもの。
人生は根蒂無く
飄として陌上の塵の如し
分散し風を追って転じ
此れ已に常の身に非ず
地に落ちて兄弟と為る
何ぞ必ずしも骨肉の親のみならん
歓を得ては当に楽しみを作すべし
斗酒 比隣を聚む
盛年 重ねて来たらず
一日 再び晨なり難し
時に及んで当に勉励すべし
歳月 人を待たず
人生なんて拠り所のないもので、風に吹かれて身を保つのもおぼつかない。そんな人生なんだからみんな兄弟みたいなもので、何も血の繋がりばかりを頼りにするには及ばない。嬉しいときは大いに楽しむために、酒を沢山準備して近くの者たちを集めよう。若い時期が長く続くわけでもない。今日の日は二度とこない。それだけに、そういう時は思いっきり楽しもう。歳月な人を待ってはくれないのだから。

そう、《少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず》みたいに、「勉強しろよ!」ってことじゃないんだな。そこがいい。《勉励すべし》は「思いっきり楽しめよ!」なんだからね。

まあ、陶淵明の人生への向き合い方といい、この詩といい、どっか、北方異民族に頭を押さえつけられた漢族の、厭世観みたいなものが背景にあるように思う。でも、今の私には、これでいいな。《一日 再び晨なり難し 時に及んで当に勉励すべし 歳月 人を待たず》なんて、まさにそのとおりだ。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本












































































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