めんどくせぇことばかり 田沼意次『学校では教えてくれない 江戸・幕末史の授業』 井沢元彦
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田沼意次『学校では教えてくれない 江戸・幕末史の授業』 井沢元彦

田沼意次の政治をどう考えるかってところが、江戸時代がどんな時代だったかを知る、かなり重大なポイントのようですね。

私が田沼意次を知った最初の機会は、山口崇さんが平賀源内を演じる《天下御免》というドラマを通じてでした。一九七一年の秋から毎週金曜日に放映された、一年間ほど続いた時代劇ドラマです。

恥ずかしながら、題名さえ忘れていたのですが、山口崇・平賀源内で検索しました。田沼意次役はなんと仲谷昇さんでした。あ~、なつかしー。

音楽は山本直純で、語りが水前寺清子。それだけで、心がウキウキと浮き立ってくるじゃありませんか。

だから、私の田沼意次観にも、暗さはありません。一一歳から一二歳の頃にみてたんですね。幼い時期にいいドラマを見ておいて本当に良かったです。

江戸時代の三大改革のことは、中学校の歴史の授業で勉強しました。享保の改革、寛政の改革、天保の改革ですね。この三つの改革は、基本的に同じです。いずれも財政改革ですが、単純に《入るを増やし、出るを減らす》ことを狙った改革です。そのあまりの単純さをすんなり受け入れてしまった私ですが、その単純さの背景に、実は私たち日本人自身が、日本の歴史を理解すること困難にしている、あるものの考え方があったわけですね。

それが朱子学です。「貴穀賤金」は、江戸時代に、朱子学の普及に伴って作られたことばだそうです。“中国”においては、“商”に従事するものを蔑む傾向があったようです。おそらくこれは世界的な傾向で、旅を伴うもののやり取りは、武装集団の為せる生業であるケースが一般的だったでしょう。朱子学はその考え方をさらに磨き上げ、士農工商と人の生業の最下位に“商”を置きました。

戦国時代までの日本には、“商”は力を得るための重大な手段と考えられていましたが、朱子学を官学とした江戸時代、日本でもいよいよ“商”を卑しい生業とする考えが広まってしまったんですね。

そんな中で《入るを増やし》とは、米の増産を意味します。しかし、米が増産され、それが商人に売られるとなると、少しでも高い値段で売ろうとすることは、朱子学から見れば卑しい行為です。だから増産された米は、高値を待つことなく、一時に売りさばかれます。増産されれば増産されるほど、米は安くなります。石高八千石の旗本の収入は、米が増産されるほど下がるわけです。

幕府が倹約をして《出るを減らす》のはいいかもしれませんが、そのたびに、庶民にもそれを共用する倹約令が出されるんですね。井沢さんの言う通り、これは経済政策としては逆効果でしかありません。職人たちの仕事を奪い、購買力を低下させ、経済を縮小させてしまっています。

ですから、中学生の私も、《入るを増やし、出るを減らす》で納得してはいけなかったんです。

その三大改革の狭間に、実は、江戸幕府の命運をかけた本物の改革がありました。それこそが、日本の歴史教育の中では“改革”の部類にさえ収められていない、“田沼意次の政治”だったわけです。



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常識がひっくり返る目からウロコの講義。教科書ではわからない「徳川300年の闇」を暴く
序章 本能寺の変が家康を変えた
 ―なぜ徳川家康は朱子学を導入したのか?
第1章 江戸時代の始まりはまだ「戦国時代」だった!
 ―徳川家康の天下泰平の秘策とは?
第2章 貿易国家への失敗、キリスト教の脅威
 ―なぜ幕府は「鎖国」政策をとったのか?
第3章 戦国の後始末、平穏な江戸へ
 ―それぞも戦国の世の中はなかなかおさまらなかった
第4章 綱吉・赤穂事件・三大改革のウソと真実
 ―江戸中期には朱子学の毒が蔓延していた!
第5章 なぜ薩長は幕末の雄藩になれたのか
 ―運命の分かれ道は「関ヶ原」にあり
第6章 朱子学が幕府を滅ぼした
 ―幕府崩壊の原因は家康の「誤算」にあった!


田沼意次は、米中心からお金中心の世の中に移行させようとしていました。規制緩和によって商売を活性化させ、そこからの税収入をあげていきます。

ヨーロッパなんかでは、絶対王政を支える経済政策として重商主義というのがありますが、田沼意次の経済政策はまさに重商政策ですね。ヨーロッパみたいに、奴隷貿易が盛んだったり、商業上の利益を上げるために軍隊も積極的に活用するような、“悪い”重商主義よりも、よっぽどましな重商主義です。

田沼意次が実験を握った時代は、江戸の町は活気に満ち溢れ、町人文化が栄えました。浮世絵にしろ、歌舞伎にしろ、大いに花開いたのは田沼意次の時代だそうです。

平賀源内も関わったみたいですよ。後に世界を驚かせた浮世絵に関してです。何しろ世界に例のない多色カラー印刷です。それがかけ蕎麦一杯と同じ値段で変えたっていうんですから、文化レベルの高さに驚かされます。何枚もの版木に色々な色を載せて印刷を重ねていく時に、絵柄がずれないようにすることが肝心で、ずれないための工夫が《見当》と呼ばれる目印ですね。どうやら、この《見当》を考案したのが源内さんらしいと。井沢さんは間違いないと言っています。

ただ、朱子学に毒された武士社会においては、商業を重視して経済政策を推し進めていこうという姿勢を、「下衆な人間のやること」と考えたわけです。田沼意次を引きずり下ろすことに成功し、後に寛政の改革を進めていく松平定信は、田沼意次について、「いつかぶっ殺してやる」と日記に書いているんだそうです。怖いですね。

私も好きで、BSで繰り返し放映される、池波正太郎の『剣客商売』を、いまだに見ています。井沢さんもそれを取り上げているんですが、作者の池波正太郎を、他にはない経済的なセンスと称賛しています。『剣客商売』では、平幹二朗が田沼意次役をやっています。田沼意次は市井や人情に通じ、決断を下すことができる優れた政治家として描かれています。

おそらく、実際、そういう人物だったんじゃないでしょうか。





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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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