めんどくせぇことばかり 『ゆるカワ 日本美術史』 矢島新
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『ゆるカワ 日本美術史』 矢島新

ゆるカワ?

なんだか、とらえづらい概念ですね。娘が張り子の職人になりたいといい出したころ、その道の方を訪ねて、あっちこっちに出かけたことがあるんです。そんな中、娘が千葉県の佐原を訪ねました。そこで出会った方の張り子は、いや、それが佐原の張り子の特徴のようなんですが、なんとも輪郭が不明瞭なんです。
右がその時の張り子です。その時、娘が買ってきたものです。娘は、嫁に行ってしまいましたが、この張り子は、家に残されました。

おそらくイノシシだと思いますが、その輪郭は、イノシシ以外でもまったく問題ありません。というか、その輪郭は、イノシシではありません。あえて言うなら、“岩”がふさわしいでしょうか。
夜明け

このような傾向を、“ゆるい”と受け取ればいいんでしょうか。輪郭が明瞭でシャープな造形の正反対で、輪郭が不明瞭で曲線的な造形といえばいいでしょうか。

だとすれば、“ゆるい”造形には、人を和ませる効果がありそうですね。

だってそうでしょう。見てくださいよ。このおそらくイノシシだと思われるこの張り子。「いいじゃん、いいじゃん、そんなのなんだっていいじゃん」って言ってるようじゃないですか。・・・ああ、力抜ける。



祥伝社  ¥ 1,296

日本がアニメ・マンガ大国やキャラクター天国になったのには理由がある
序章 日本美術のオリジナリティ
1章 ゆるカワのはじまり
2章 庶民が育てたゆるカワ 室町時代~桃山時代
3章 庶民が育てたゆるカワ 江戸時代
4章 素朴な工芸、かわいい工芸
5章 江戸のかわいい動物たち
6章 知識人のゆるカワ
7章 近代のゆるカワ
終章 グローバルの波を超えて


漫画、アニメ、キャラクターといった方面では、日本は他の追隨を許さない独創状態にあります。他が追随しようとしているかどうか分かりませんが。

そこで発揮されている日本的オリジナリティの中に、“かわいさ”や“ゆるさ”が含まれています。じつはこの本、開き直ってしまったんです。何を開き直ったかといえば、日本美術の日本的に洗練されたセンスに関しては、これまで十分すぎるほどの著作が刊行されているから、この本はそういうことは無視するっていうんです。そしてこの本では、近年主張され始めた、日本美術における《ゆるカワ》という価値観だけに焦点を当てて考察をするということなんです。

そう、この本は、題名にもある通り、《日本美術史》の本なんです。しかも、目次に現れているとおり、縄文時代から近代へと時間を追って、その時代時代に現れる日本美術の“ゆるカワ”的特徴を考察することで、背景にある日本文化及び、日本人的心象の特殊性まで探っていこうとする、極めて画期的な本なんです。

「恵まれた周辺」というのは、日本の文化環境を形容する言葉だそうです。たしかに、ふさわしい言葉ですね。激しい攻防の歴史がない日本においては、古代と現代が連続しています。大陸に隣接する島国ですから、大陸の文化を選択的に取り入れることができました。民族の入れ替わりもありませんから、文化は穏やかに蓄積し、時間をかけてじっくり熟成されたと著者は言います。

たしかにそうですね。それは世界的に見ても特殊な歴史的環境で、リアリスティックな大陸文化を受け入れて、同じ方向性で高度化していきながらも、同時に時間をかけて尖った部分を削ぎ落とし、曲線的な、独自の和める造形を目指したのかもしれませんね。それがはっきりした形で現れるのは室町時代だそうです。まさに今の日本人に直接つながる文化の生まれた時代ですね。

色々な“ゆるカワ”文化の写真がふんだんで、見てるだけでも楽しい本でした。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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人生に必要なもの、一人の女性、一人の親友、一つの思い出、一冊の本。
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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


















































































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