めんどくせぇことばかり 『昭和からの遺言』 倉本聰
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『昭和からの遺言』 倉本聰

生産手段を共有する社会を実現すると言って成立したソ連が崩壊し、同様の国々が次々に計画経済を放棄して、苦労して資本主義経済体制に移行してきました。“中国”なんかは、経済だけ“資本主義的”に移行して、政治的には自由主義を採用せず、共産党の一党独裁体制は維持するというわけのわからない体制変換をすることで、もともとの共産主義社会なるものが、単なる党独裁でしかなかったことを暴露しました。

第二次世界大戦前から世界中にばらまかれた共産分子は、戦後世界においてより厚顔に振る舞うようになり、一時は世界の半分を手に入れました。

日本のような自由主義陣営に属する国家にしても、生産手段を共有する社会を実現することを目指す政党が躍進し、それこそマスコミや教育機関はそれらの下部組織に牛耳られました。そんな体制が戦後四五年も続けば、だいぶ深くまで根っこは浸透し、共産主義の敗北が明らかになって地表に現れた部分は取り除かれたにもかかわらず、彼らは死に絶えることはありませんでした。

《昭和》には、前の時代から引き継いだものがたくさん残ってました。戦争で負けたと言っても、あれがどういう戦争であったか、口には出せないけどちゃんと分かってる人が、まだ世間の一線にいました。その間にもいろいろな変化があったんでしょうが、目に見えて変わったのは、それらの人たちが一線を退いてからですね。一九七〇年末あたりからでしょうか。

それも共産主義の敗退で、一時は鳴りを潜めたかに思えました。それでも、彼らは共産主義の背広を脱いで、弱者の側に立って基地を攻め、学校を攻め、協会を攻め、会社を攻めました。マスコミと教育を抑える彼らには、さほど難しいことではなかったでしょう。

《平成》って、鳴りを潜めた彼らが、再び巻き返して、新たな攻勢を仕掛けてくる時代だったように思えます。《昭和》は駆逐され、今も駆逐されつつあります。



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「令和」新時代を迎える今 忘れてはいけない日本人の原風景がある
足の裏の倖せ
神の眼
解禁

感動の共有
兄弟のいる風景
怒りについて
布団の記憶
あとがきに代えて―ないこととあること


子どもの頃は、どこもかしこも汚くて、家の中にも虫がいて、年に一度はしっかり消毒をしなければならなかったみたいで、五月の天気の良さそうな日を選んで、家の消毒が行われた。

ポンポンポンポンって音を立てて、消毒のポンプが集落の各家を回ります。

朝ごはんを早めに済ませて、家具を庭に出し、畳もあげて庭に並べます。お勝手の道具もしっかり戸棚にしまって、お昼の準備だけは外に出します。畳を叩くとむせる程のすごいホコリ。ガタピシいう窓をしっかり締めて、雨戸も閉めて、消毒のポンプを待ちます。

母が私を手招きしています。兄たちに分からないようにそっと行ってみると、畳の下から出てきたと、十円玉を私にくれました。

ポンポンポンポンって音がお地蔵さまの曲がり角の向こうの家まで来ました。ブオー!っと、岩田さんの家に消毒を吹き込んでいる音が聞こえます。次はうちの番です。・・・なんか楽しかった、消毒の日の思い出です。

昭和に守られて、私は子供時代を過ごしました。大人になる過程で、一時は昭和を嫌悪しました。しかし、そのうち昭和の意味を理解するとともに、自分自身の中にさまざまな昭和を発見し、昭和を受け入れました。

昭和で十分です。

その昭和が駆逐されていきます。本当に、最後の最後まで駆逐されてしまうのなら、仕方がありません。口をつぐんで、駆逐されましょう。でもその後に残される社会は、どんな社会でしょう。

そこにはスマホがあるでしょう。ITがあるでしょう。コンビニがあるでしょう。電源があって充電が可能でしょう。インターネットで情報が得られるでしょう。でも、昭和は、もう求めることができなくなるでしょう。

とても考えさせられる、貴重な本でした。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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