秩父『地図で楽しむ すごい埼玉』 都道府県研究会
《特徴がないところが埼玉の特徴》
私は埼玉県秩父の生まれ。だけど、秩父にいたのは高校生までで、三月下旬の誕生日よりも前に家を出たので、一七歳で出てるんですね。仕事は埼玉の高校の教員になったので、同じ埼玉県にはずっといましたが、秩父には戻りませんでした。
出身を聞かれ秩父だと答えると、「えっ、秩父ですか」と、同じ埼玉県民たちから言われました。こういう言い方、おそらく大宮出身の人は言われたことがないと思います。熊谷出身の人も、川越出身の人も、浦和出身の人も、きっと言われたことがないと思います。
今もそうかどうか分からないけど、以前、天気予報を見ていると、「埼玉県北部は**、南部は**、秩父は**」と、埼玉は北部と南部と秩父からなっているような言い方をしていました。北部は埼玉県の北側、南部は埼玉県の南側ですね。でも、秩父は西部と表現されないんです。秩父は秩父なんです。
つまり、同じ埼玉の構成分子であって、存在する方角が違うだけど言う認識ではないんです。単に方角が違うだけでは言い表せない違いが意識の中にあるから、秩父としか表現できないんです。そう、秩父を埼玉県の一部とは思っていないということです。
その秩父を除いた埼玉県民の特徴は、冒頭に上げたように、《特徴がないところが埼玉の特徴》なんて言われています。他にも、《平凡であっさり》であったり、《素朴》であったり、《おっとりしている》であったり、《粘り強さがない》であったり、《押しが弱い》であったり、《ざっくばらん》であったり、《マイペース》であったりするようです。
そんな埼玉県民の仲間の中に、秩父は入れてもらっていません。


つまり、上記のような埼玉県民の特徴の逆を行くのが秩父の人間の特徴と考えればよろしいでしょうか。
だからこそ、出身を聞かれて秩父だと答えると、「えっ、特徴のありすぎる秩父ですか」と、「えっ、極端で粘着質な秩父ですか」と、「えっ、ゴテゴテした秩父ですか」と、「えっ、神経質な秩父ですか」と、「えっ、粘り強すぎる秩父ですか」と、「えっ、押しの強い秩父ですか」と、「えっ、なんか裏のありそうな秩父ですか」と、「えっ、強引な秩父ですか」と、そんなニュアンスをぶつけられてきたわけです。
中でも南東部は、ほとんど東京。当然、秩父と同じ埼玉県なんて意識はありません。電車で数駅の東京への親近感のほうがよほど強くても仕方がないでしょう。
しかも最近は、東京のベッドタウンとしての領域がどんどんに広がってきてるから、その傾向は拡大するばかりです。そう、埼玉都民ですね。
ところが、やはりそれも関東平野まででしょう。関東平野の終わり際の丘陵地帯では、その丘陵を切り崩してニュータウン開発をしたり、ゴルフ場にしたりしていますが、その先は秩父。
奥武蔵の山を超えて秩父に入ると、何が一番違うのかというと、寒さです。冬場の夕暮れ、日が落ちる時間帯になると、キンキンと音を立ててるようにして冷え込んでいくんです。新潟の豪雪地帯から秩父に嫁に来てくれた兄嫁が言ってました。「秩父は新潟よりも遥かに寒い」って。
平地は本当に少なく、食っていくのも大変だったから、生活を守るための地域のしきたりっていうのは厳しいものがあります。そこで弾かれたら一人前として認められないからね。そういうのが嫌で、出ちゃったってこともありますが。
そうして独自の社会を作ってきたから、この本も、いっそ独立国家《秩父県》といったほうが良いかとまで言ってます。
頑固ですよ。だから秩父の人間が近づくと、他の地域の人は構えちゃうんでしょうね。
私はそんなことないんですけどね。
私は埼玉県秩父の生まれ。だけど、秩父にいたのは高校生までで、三月下旬の誕生日よりも前に家を出たので、一七歳で出てるんですね。仕事は埼玉の高校の教員になったので、同じ埼玉県にはずっといましたが、秩父には戻りませんでした。
出身を聞かれ秩父だと答えると、「えっ、秩父ですか」と、同じ埼玉県民たちから言われました。こういう言い方、おそらく大宮出身の人は言われたことがないと思います。熊谷出身の人も、川越出身の人も、浦和出身の人も、きっと言われたことがないと思います。
今もそうかどうか分からないけど、以前、天気予報を見ていると、「埼玉県北部は**、南部は**、秩父は**」と、埼玉は北部と南部と秩父からなっているような言い方をしていました。北部は埼玉県の北側、南部は埼玉県の南側ですね。でも、秩父は西部と表現されないんです。秩父は秩父なんです。
つまり、同じ埼玉の構成分子であって、存在する方角が違うだけど言う認識ではないんです。単に方角が違うだけでは言い表せない違いが意識の中にあるから、秩父としか表現できないんです。そう、秩父を埼玉県の一部とは思っていないということです。
その秩父を除いた埼玉県民の特徴は、冒頭に上げたように、《特徴がないところが埼玉の特徴》なんて言われています。他にも、《平凡であっさり》であったり、《素朴》であったり、《おっとりしている》であったり、《粘り強さがない》であったり、《押しが弱い》であったり、《ざっくばらん》であったり、《マイペース》であったりするようです。
そんな埼玉県民の仲間の中に、秩父は入れてもらっていません。
『地図で楽しむ すごい埼玉』 都道府県研究会 洋泉社 ¥ 1,620 そうは言っても、もはや武蔵を名乗れるのは埼玉くらいのものじゃないかな |
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つまり、上記のような埼玉県民の特徴の逆を行くのが秩父の人間の特徴と考えればよろしいでしょうか。
だからこそ、出身を聞かれて秩父だと答えると、「えっ、特徴のありすぎる秩父ですか」と、「えっ、極端で粘着質な秩父ですか」と、「えっ、ゴテゴテした秩父ですか」と、「えっ、神経質な秩父ですか」と、「えっ、粘り強すぎる秩父ですか」と、「えっ、押しの強い秩父ですか」と、「えっ、なんか裏のありそうな秩父ですか」と、「えっ、強引な秩父ですか」と、そんなニュアンスをぶつけられてきたわけです。
中でも南東部は、ほとんど東京。当然、秩父と同じ埼玉県なんて意識はありません。電車で数駅の東京への親近感のほうがよほど強くても仕方がないでしょう。
しかも最近は、東京のベッドタウンとしての領域がどんどんに広がってきてるから、その傾向は拡大するばかりです。そう、埼玉都民ですね。
ところが、やはりそれも関東平野まででしょう。関東平野の終わり際の丘陵地帯では、その丘陵を切り崩してニュータウン開発をしたり、ゴルフ場にしたりしていますが、その先は秩父。
奥武蔵の山を超えて秩父に入ると、何が一番違うのかというと、寒さです。冬場の夕暮れ、日が落ちる時間帯になると、キンキンと音を立ててるようにして冷え込んでいくんです。新潟の豪雪地帯から秩父に嫁に来てくれた兄嫁が言ってました。「秩父は新潟よりも遥かに寒い」って。
平地は本当に少なく、食っていくのも大変だったから、生活を守るための地域のしきたりっていうのは厳しいものがあります。そこで弾かれたら一人前として認められないからね。そういうのが嫌で、出ちゃったってこともありますが。
そうして独自の社会を作ってきたから、この本も、いっそ独立国家《秩父県》といったほうが良いかとまで言ってます。
頑固ですよ。だから秩父の人間が近づくと、他の地域の人は構えちゃうんでしょうね。
私はそんなことないんですけどね。

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