めんどくせぇことばかり 時政『覇王の国日本』 井沢元彦
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時政『覇王の国日本』 井沢元彦

平清盛は、何が何でも頼朝を殺すべきでしたよね。

殺そうとは思っていた。だけど、結果として殺さなかった。これが清盛の弱さでしたね。敵を打ち倒した時、打ち倒した敵の子弟は必ず皆殺しにするというのが、古今東西を問わず歴史の鉄則です。それを曲げてしまったんですから、弱さとしか言いようがありません。

原因は清盛の継母である池禅尼の命乞い。池禅尼は、「いくさで亡くなった我が子家盛に生き写し」と言って、頼朝を処刑しないように清盛に泣きつきました。これは不自然ですね。

実際には、清盛への当てこすり、あるいは嫌がらせでしょう。池禅尼の生んだ清盛の弟に当たる家盛は、極めて優秀な人物だったようです。家盛は清盛の指揮するいくさで、勇猛果敢に戦って亡くなっています。

池禅尼は知っていたのでしょう。清盛が心のどこかで、家盛の死を望んでいたことを。そして、その池禅尼に泣きつかれてそれをい受け入れてしまった清盛は、やはり池禅尼に引け目を感じていたんでしょう。清盛が、家盛を死に追いやったということです。

さらにもう一人、源義朝の女だった常盤御前の色香に迷って、義朝の子である今若、乙若、牛若を殺しませんでした。三番目の牛若こそ、平家を滅亡に追い込んだ源義経ですね。

すでにこの時、清盛は平家滅亡への道を開いていたわけです。

しかし、このあと、「平家にあらずんば人にあらず」と、ついつい口に出したくなるほどの栄華を手にした平家です。日本のほぼ半分を直轄領とする平家です。その平家を滅ぼして幕府を開くなど、伊豆に流刑された身の頼朝が考えていたはずもない。

頼朝は、あまりにも迷惑な“以仁王の令旨”、平家追討の令旨が出されたことで、殺されるべき運命となりました。彼はただ、その運命に抗おうとしただけです。

この時、頼朝のそばに、一人の天才がいたんですね。妻である政子の父親、北条時政です。


『覇王の国日本』    井沢元彦

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学校では教えない日本史の法則によれば、信長は死すべき運命にあった
第1章 誤解された日出づる処の天子
第2章 歴史の神が導いた鎌倉という時代
第3章 連綿と続く戦国の思想
第4章 覇王信長が歴史に投げかけた波紋
第5章 ビジョンを持たなかった秀吉の不幸
第6章 悪玉にされた平和希求者・家康
第7章 江戸の泰平を揺るがす二つの変革


平家の天下には、大きな構造的矛盾がありました。平安時代は律令制のもとにありました。律令制は、公地公民制に支えられます。しかし、権力を独占する藤原氏が率先して公地制に風穴を開け、税金を払う必要もない、役人の立ち入りもない私有地である荘園を拡大していきました。

地方を開拓した開拓地主は、地方官に任命された役人の横暴から逃れるために、自分の所有地に《藤原農園》の名前を出しました。藤原氏に名義上の所有者になってもらうわけです。寄進ですね。もちろん、《藤原農園》の看板代は安くはありません。

自分の土地は自分で守ろうとする開拓地主こそが武士の起こりです。でも彼らは、自分で開拓した土地の正当な所有者にはなれないんですね。武士が政権を握る背景には、そんな武士たちの悲哀がありました。

平家が大きな力を持ったってことは、そんな武士たちの期待を背負ったものだったわけです。ところが、藤原氏を追いやって天下を取った平家は、藤原氏と同じような立場で政治を行いました。

時政は、そんな平家の政権の危うさを感じていたんでしょう。娘の政子が頼朝とできてしまった段階で、いずれ頼朝が大きな役割を担うことになる可能性を見出していたんでしょう。

平家のように、朝廷の中で大権を握って政治を動かすのではなく、蔑視されてきた武士のために立ち上がり、武士による武士のための政権、つまり鎌倉幕府を開かせることになります。

その幕府の構想には、大江広元や三善康信といった公家の出の知恵が生きているでしょう。しかし、あくまでも京都には進出せず、東国にとどまって、そこに武士の立場を守る政治勢力を作り上げようというのは、やはり時政の直感だったでしょう。

結局、頼朝は鎌倉中心に、東国だけで通用する武士の権益を確立し、それを全国に拡大していくという道をたどることになります。さらに、その幕府という組織が確立すれば、その核になるのは、なにも頼朝やその子孫でなくても成り立つだろうというのも、時政の感じたところだろう。

頼朝は謎の死を遂げ、その子である頼家は時政に殺されます。





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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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