めんどくせぇことばかり 『国家と教養』 藤原正彦
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『国家と教養』 藤原正彦

明治中期生まれの知識人は、大正デモクラシーの時代の主役です。芥川龍之介、武者小路実篤、志賀直哉、有島武郎、里見弴などなど。

やはり彼らは、欧米列強の圧力に抗して、だからこそ西洋文明の吸収に奔走した明治主役の知識人とは違います。直接海を渡り、そうでないとしても洪水のように流れ込む圧倒的な西洋文明に接し、自らの内に日本の伝統を濃厚に抱えながらも、ある意味でそれを否定せざるをえなかった明治主役の知識人と違い、大正デモクラシーの主役たちは伝統を否定するという葛藤を知知りません。

葛藤もなく近代を受容する新しい世代を、例えば夏目漱石は痛烈に批判します。

「日本の開化は西洋からの圧力に対抗するためにやらざるを得なかった、外発的で無理を重ねたものだ。軽薄で虚偽で上滑りしたものであり、それは子どもがタバコを咥え、さもうまそうな格好をしているもの」「上滑りは悪いからおよしなさいというのではない。事実やむを得ない、涙をのんで上滑りに滑って行かなければならないというのです」

漱石にしてみれば、大正デモクラシーの時代の知識人は、葛藤もなく無邪気に舶来の教養を身に付けた世代で、日本という根を持たない。自分たちの獲得したものが西洋崇拝に発した借り物の思想であることに気づかず、その危うさも自覚しない者たちということです。

大正デモクラシーを謳歌しているうちにロシア革命が起こると、彼らはあっさりマルクス主義にかぶれ、昭和に入ってはナチズム、そして軍国主義に流されて、さらに戦後はGHQを礼賛し、思惑通り左翼思想にかぶれ、昨今では新自由主義やグローバリズム。

危ないですね、日本の教養人。


 『国家と教養』    藤原正彦

新潮新書  ¥ 799

教養なき国民が国を滅ぼす 教養こそが大局観を磨く 大衆文学も教養である
第一章 教養はなぜ必要なのか
第二章 教養はどうやって守られてきたか
第三章 教養はなぜ衰退したのか
第四章 教養とヨーロッパ
第五章 教養と日本
第六章 国家と教養


義理、人情、忠義、名誉、勇気、正義、惻隠、涙。心にすとんと落ちてくるこれらの言葉。かつては講談本を通して自分に流れる血の中に、それらの日本的情緒を確信したようです。一九六〇年生まれの私は、活字に合わせて漫画がそれを教えてくれました。今の若い人たちには、漫画の影響力が圧倒的なんでしょうね。

葛藤なく、無邪気な西洋崇拝を基に構築された教養は、身体感覚を持たないがゆえに、新たなブームに流されやすい。これは違うと、私の中の惻隠の情がストップをかけるとか、卑怯なことはするなと私の中の義理人情が涙を流すってことが起こらないんです。

だから、本当に信用すべきは、漫画はじめ、日本ならではの文化に触れて、自分の中の日本的情緒を育てた庶民の感覚なんでしょう。

じゃあ、日本ならではの文化ってどうやって形成されてきたもんなんでしょう。やっぱり、自然環境、気候風土だと思うんです。もちろん自然災害の危険が大きい場所だったことも含めてね。

小さい頃から川や海で遊んで、山を歩き、風に吹かれるってことが、とても大事なんでしょうね。春の新緑の季節、秋の紅葉の季節は山がいいなあ。この季節に山を歩くと、頭で気持ちがいいって考える前に、身体が喜んでいるのが分かります。夏は川や海がいい。日本の夏は暑い。だけどきれいな川があります。海もあります。冬は雪で大変だけど、冬には冬の良さがあります。

その自然を切り崩して、自然からは切り離された快適さ、人工の快適さを手に入れてきたけど、もしも身体感覚に裏打ちされた日本人らしい教養ってものがあるならば、このへんでやめておこうって私の中の“朝日に匂ふ 山さくら花”が囁いてくれるでしょう。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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