『このゴミは収集できません』 マシンガンズ滝川秀一
朝、走ってるんです。
暗いうちから走り始めて、・・・その時は懐中電灯を使ってます。東の空から段々と明るくなって、それでも歩道のないところでは、時々走ってくる対向車に存在を伝えるために懐中電灯をつけます。その心配もなくなったあたりで懐中電灯をしまいます。
懐中電灯を消してしばらく走った頃、都幾川にかかる橋に差し掛かりました。橋の袂で周辺に何らかの変化を感じました。顔を上げて前方を見ると、最初はその変化がなにか、ピンとこなかったのですが、ようやく分かりました。明るくなって、夜の間、明るく橋上を照らし続けていたはずの街灯が、その役割を終えて消えたのです。朝が来たんですね。時計を見ると五時五分。家に帰って今日の日の出を調べると、五時二〇分でした。日の出時間の一五分前に、センサーは朝を感じたんですね。
朝、暗い時間に街に出ると、暗い街で、すでに働き始めている人がいます。新聞配達の人のカブが、路地から路地を走り回っています。東京に向かうトラックが、関越道に列をなして走っていきます。
知らないところで世の中を支えている人が、たくさんいるんですね。
朝に限らず、世の中はいろいろな人に支えられています。と言うよりも、本当は、みんな誰かに支えられ、みんな誰かを支えているんですよね。今の世の中、そういうことに無頓着すぎるように思います。自分が誰かに支えられていることにも思いを馳せられず、誰かを支えられることなど思いも寄らないような人が少なくないことは、日々のニュースに明らかです。
ゴミ清掃員という仕事は、まさに世の中を支える仕事です。しかも、一般的には、できれば避けたい仕事です。そんな仕事を経験できた著者のマシンガンズ滝沢秀一さんは、きっと幸運だったんだろうと思います。
この本の著者、マシンガンズ滝沢秀一さんは、お笑い芸人でありながら、ひょんな事からゴミ清掃員の世界に飛び込みます。“ヒョんな事”なんて言っちゃあ悪いですね。奥様の妊娠です。三六歳の売れないお笑い芸人にとって、出産費用の四〇万円は、あまりにも絶望的な金額だったようです。
お笑い芸人以外になんのスキルもなかった滝沢秀一さんは、なんのスキルも必要としない、かつ常に人手不足状態にあるゴミ清掃人の世界に飛び込んでいくことになったようです。



やはり、大変な仕事ではありますね。
春から初夏は、毛虫が大変なんだそうです。毛虫にやられたことは、私もあります。毛だけでやられますからね。この時期の山は、新緑がとてもきれいで、山を歩いているだけで心が高揚します。だけど、木々から糸で垂れ下がった毛虫をしっかり避けて通るのは、けっこう至難の業だったりします。腰掛けたベンチに影を提供してくれる葉裏が毛虫でいっぱいだったりもします。ゴミ清掃員はこの時期、そんな毛虫との格闘なんだそうです。
夏は言わずもがな。暑さとの死闘ですね。
秋の大敵はネズミとスズメバチだそうです。それから、ゴミ袋に詰め込まれた栗のいが。これは恐ろしい武器ですね。まるで地雷のようです。
冬は寒さはもちろん、雪が降ると大変だそうです。
ゴミからゴミ汁が飛び出ることもあるそうです。それが顔にかかることも・・・。
大変な仕事ですね。でも何より大変なのは、やはり、人々の無理解のようですね。普通、そんな事を言ったり、そんな事をやったりしてはいけないんだけど、ゴミ清掃人にならば言ってもいい、やってもいい。そういう意識があるみたいですね。さらにはゴミ清掃人を低くみて、そういう対応をする人もいるそうです。
通学路を通ると、「くせーから早くいけー」って悪態をつく小学生がいるそうです。私は子供の頃、バキュームカーの隣を通過するとき、鼻をつまんだりしちゃあ悪いから、少し前から息を止めて、通り過ぎるまでそのまま歩いて通ったですね。
うちの自治会には三つのゴミステーションがありますが、その一つに、ちょくちょく指定とは違うゴミが出されていることがあります。清掃車は持っていきませんから、次の指定の日までうちで預かりることもあります。それが生ゴミだったりすると・・・。
暗いうちから走り始めて、・・・その時は懐中電灯を使ってます。東の空から段々と明るくなって、それでも歩道のないところでは、時々走ってくる対向車に存在を伝えるために懐中電灯をつけます。その心配もなくなったあたりで懐中電灯をしまいます。
懐中電灯を消してしばらく走った頃、都幾川にかかる橋に差し掛かりました。橋の袂で周辺に何らかの変化を感じました。顔を上げて前方を見ると、最初はその変化がなにか、ピンとこなかったのですが、ようやく分かりました。明るくなって、夜の間、明るく橋上を照らし続けていたはずの街灯が、その役割を終えて消えたのです。朝が来たんですね。時計を見ると五時五分。家に帰って今日の日の出を調べると、五時二〇分でした。日の出時間の一五分前に、センサーは朝を感じたんですね。
朝、暗い時間に街に出ると、暗い街で、すでに働き始めている人がいます。新聞配達の人のカブが、路地から路地を走り回っています。東京に向かうトラックが、関越道に列をなして走っていきます。
知らないところで世の中を支えている人が、たくさんいるんですね。
朝に限らず、世の中はいろいろな人に支えられています。と言うよりも、本当は、みんな誰かに支えられ、みんな誰かを支えているんですよね。今の世の中、そういうことに無頓着すぎるように思います。自分が誰かに支えられていることにも思いを馳せられず、誰かを支えられることなど思いも寄らないような人が少なくないことは、日々のニュースに明らかです。
ゴミ清掃員という仕事は、まさに世の中を支える仕事です。しかも、一般的には、できれば避けたい仕事です。そんな仕事を経験できた著者のマシンガンズ滝沢秀一さんは、きっと幸運だったんだろうと思います。
この本の著者、マシンガンズ滝沢秀一さんは、お笑い芸人でありながら、ひょんな事からゴミ清掃員の世界に飛び込みます。“ヒョんな事”なんて言っちゃあ悪いですね。奥様の妊娠です。三六歳の売れないお笑い芸人にとって、出産費用の四〇万円は、あまりにも絶望的な金額だったようです。
お笑い芸人以外になんのスキルもなかった滝沢秀一さんは、なんのスキルも必要としない、かつ常に人手不足状態にあるゴミ清掃人の世界に飛び込んでいくことになったようです。
『このゴミは収集できません』 マシンガンズ滝川秀一 白夜書房 ¥ 1,404 ゴミ清掃員が見たあり得ない光景。お笑い芸人がゴミ清掃で発掘したゴミ学 |
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やはり、大変な仕事ではありますね。
春から初夏は、毛虫が大変なんだそうです。毛虫にやられたことは、私もあります。毛だけでやられますからね。この時期の山は、新緑がとてもきれいで、山を歩いているだけで心が高揚します。だけど、木々から糸で垂れ下がった毛虫をしっかり避けて通るのは、けっこう至難の業だったりします。腰掛けたベンチに影を提供してくれる葉裏が毛虫でいっぱいだったりもします。ゴミ清掃員はこの時期、そんな毛虫との格闘なんだそうです。
夏は言わずもがな。暑さとの死闘ですね。
秋の大敵はネズミとスズメバチだそうです。それから、ゴミ袋に詰め込まれた栗のいが。これは恐ろしい武器ですね。まるで地雷のようです。
冬は寒さはもちろん、雪が降ると大変だそうです。
ゴミからゴミ汁が飛び出ることもあるそうです。それが顔にかかることも・・・。
大変な仕事ですね。でも何より大変なのは、やはり、人々の無理解のようですね。普通、そんな事を言ったり、そんな事をやったりしてはいけないんだけど、ゴミ清掃人にならば言ってもいい、やってもいい。そういう意識があるみたいですね。さらにはゴミ清掃人を低くみて、そういう対応をする人もいるそうです。
通学路を通ると、「くせーから早くいけー」って悪態をつく小学生がいるそうです。私は子供の頃、バキュームカーの隣を通過するとき、鼻をつまんだりしちゃあ悪いから、少し前から息を止めて、通り過ぎるまでそのまま歩いて通ったですね。
うちの自治会には三つのゴミステーションがありますが、その一つに、ちょくちょく指定とは違うゴミが出されていることがあります。清掃車は持っていきませんから、次の指定の日までうちで預かりることもあります。それが生ゴミだったりすると・・・。

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