めんどくせぇことばかり 『出身成分』 松岡圭祐
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『出身成分』 松岡圭祐

本書は脱北者の方々による、多岐にわたる証言に基づいている

マスコミに登場する北朝鮮は、首都平壌に限られている。だがこの物語は、郊外におけるごく普通の殺人事件とその操作を、はじめて描いている。

ここに書かれた顛末に、非常に近い出来事が現実に報告されている。

事実を踏まえているため、地味で複雑な内容であるが、結末に至るまでに、その背景に潜む深層にお気づきになるだろうか。

あなたが北朝鮮に生まれていたら、この物語はあなたの人生である。
この物語が始まる前に、そう書かれているのです。

北朝鮮を憎んでいるもんですから、「あなたが北朝鮮に生まれていたら」と言われて、ちょっと困惑しました。そういう問いかけは、なんだか日本人拉致問題に関わった北朝鮮の人たちの罪を、心理的に相対化させてしまうような気がしたからです。そしてもう一つ、自分が北朝鮮人だったらという仮定など、考えたこともなかったからです。

出身成分というのは、元をたどると金日成時代に遡るそうです。権力闘争のための権力闘争、自分が生き残るためだけの権力闘争で、次々政敵を粛清していった金日成は、全国民に対してその恐怖支配を拡大し、自分への忠誠度に基づいて国民を確信階層、動揺階層、敵対階層の三つに分け、七万人を山間部に強制移住させて、六〇〇〇人を反革命の罪状で処刑したそうだ。

忠誠度は細分化された確認事項があって、それが家系を三代さかのぼって調査されたそうだ。まったく性格の悪い奴は、性格の悪い制度を思いつくもんです。

ちなみに、金正恩の母親の高英姫は在日朝鮮人ですから、少なくとも動揺階層、悪くすれば敵対階層です。ですから、金正恩も動揺階層か、敵対階層です。そういう立場があるから兄貴を殺したんですね。


『出身成分』    松岡圭祐

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史上初、平壌郊外での殺人事件を描くミステリ文芸! 日本人の出てこない異色の傑作
平壌郊外の保安署員クム・アンサノは11年前の殺人・強姦事件の再創査を命じられた。犯人として収容されている男にも会うが、杜撰で強引な捜査を再確認するだけだった。実はアンサノの父も収容中。医師で最上位階級である「核心階層」に属していたが、大物政治家の暗殺容疑で物証も自白もないまま収容されていた。再捜査に父への思いが重なり自国の体制に疑問を抱いたアンサノは、ついに真犯人らしき謎の男にたどり着くが…。鉄壁な国家が作り出す恐怖と個人の尊厳を緻密に描き出す、衝撃の社会派ミステリ長編。


「あなたが北朝鮮に生まれていれば」と問いかけられて、実際、私はおののきました。人民保安省保安署員である主人公のアンサノの立場に置かれたら、一体どんな行動が取れるのか。子供の頃から叩き込まれるという“首領と国家への忠誠を誓う全文”の暗唱を、バカバカしいと拒否できるでしょうか。

拒否はできなかったとしても、それをバカバカしいと思うような連中がいるということ自体、この体制の大きな危機だと言えるでしょう。アンサノのような存在は、困るわけです。

それに対して、ポドンというアンサノの同僚が出てきます。ポドンはアンサノを心配しているように見えて、出身成分を前提とする社会制度に関わる可能性の農耕な部分においては、同僚を売り、密告することに躊躇がありません。この出身成分という制度を支えているのは、このポドンのような、確信階層という自分の立場を守りたい多くの大衆の存在なんですね。

共産主義という体制が、自由と平等につながるもののように見えて、必ずレーニンやスターリン、毛沢東、金日成のような国家を破滅させる独裁者を生み出してしまうことは証明済みです。しかし、どこにもここまでいやらしい制度は存在しません。毛沢東の文革はひどいやり口だったけど、あの“中国”人でさえそれを嫌ったからこそ、その時代は終わりました。

金日成の始めたそれは、なぜか今も、さらに複雑化されたその制度が続いているということです。

私は思うんですが、その制度は、北朝鮮人にとって、ある程度、居心地のいいものになっているんじゃないでしょうか。

“人民共和国”の名にふさわしい国家を、一九四八年の段階で、彼らは作ったことがありません。その前にはソ連時代があり、その前は日本に併合されていました。さらにその前は朝鮮王朝という近代以前が存在していただけです。ですから、朝鮮王朝という近代以前が金日成につながるのです。

朝鮮王朝時代のあの国を思うと、今の北朝鮮のやり方は、あの国の人達にとって居心地のいいものなんじゃないかと思ってしまうのです。・・・韓国はどうかってことなら、最近の韓国を見ていると、やはり動揺なんじゃないかと・・・。
すみません。この本ですが、とても面白かったです。おすすめです。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本












































































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