めんどくせぇことばかり 自由・平等『管見妄語 知れば知るほど』 藤原正彦
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自由・平等『管見妄語 知れば知るほど』 藤原正彦

新聞の、人生相談の回答者になったことがあるんだそうです。

誰がって、この本の著者の藤原正彦さんがです。意外と好評だったんだそうです。以下のような具合です。

《二一歳の女子大生からの相談》
「大学を中退するかどうかで悩んでいます。三年半の大学生活は無意味に思えてなりません。高校でも中退したかったのに決断できませんでした。親を悲しませると思うととても決断できないのです。専門学校に進学したいのですが、またやめたくなるかもと決断できません。私のような者はこれからも何もできないのでしょうか」
《藤原さんの回答》
「はい、あなたのように優柔不断ではこれからも何もできません。どうせできないのならせめて親孝行に徹しなさい。日本古来の美徳ですから、それに従っている限りこれまでのように思いわずらう必要はありません」

なかなかいいやり取りですね。調子に乗って、もう一つ紹介しちゃいます。

《二十代の女子学生からの相談》
「父の行動があまりにもマイペースで、いろいろ命令するのが嫌でたまりません。私や妹が食事をしている最中に仕事から帰ってきて、いきなり『お茶をくれ』『漬物を出せ』と言ったり、家族で見ていたテレビのチャンネルを変えたりします。妹と母はそれほど気にしていませんが、私はやたらに命令する父をどうしても我慢できません。この横暴な父にどう付き合えばよいのでしょうか」
《藤原さんの回答》
「一日中会社で働き、遅くなって帰ったお父さんが、年頃の二人の娘に次々に手伝いを命令するというのですが、当然のことです。親は子を養い育ててるのですから子より偉く、先生は生徒を教え育てているのですから生徒より偉いのです。だから親に手伝いを頼まれれば子はそれに従い、先生に宿題を出されたら生徒はやらねばなりません。家庭や学校にいて自由や平等は存在しない、と思ったほうが良いのです。実は自由と平等は基本的人権の中に存在するのみで、社会のほとんど至るところで存在しないのです。文面で見るお父さんの命令はどれも正常の範囲内です。不平を持つべきものではありません」

二番目の回答に、地方のある団体からクレームが寄せられて、藤原さんは人生相談の回答者をやめたそうです。



新潮文庫  ¥ 539

国民が知らされる情報には常に偏向がある。私目を凝らして実像を見抜かねばならない
第一章 現代文明にすがって生きる寄生虫
第二章 これからが、これまでを決める
第三章 正義が正しいとは限らない
第四章 教養を積むとは無知を知ること
第五章 紳士にあるまじき行為


今の世の中は、ありもしないキレイ事ばかりを並べ立てて、多数の平均レベルより低い生活水準の人々を奈落の底に突き落とすことに手を貸しているように思えるんです。そりゃ経済的に十分なゆとりと、それを可能にした社会的背景に恵まれている人にならば、キレイ事を並べ立ててもいいですよ。そのキレイ事は、おそらく経済的に十分なゆとりと、それを可能にした社会的背景があれば、まず間違いなく達成されるでしょうから。

そうではない、平均レベルより低い生活水準の人が、そのキレイ事を、当然誰でも達成できるものと思い込んでしまったら、一体どうなると思います。

地域からも、家からも自由になり自律した女性たちが社会に進出して、大きな戦力になっています。そういう言い方をすれば、なんか未来が広がるかのようなのですが、実はそんなキレイ事だけではすみません。今の時代、社会的弱者が一人で世間の荒波の中に放り出されているような状況です。

家族でよく話し合って、若い人たちは安定した人生を送っていけるように、しっかりとした足場を固めておくべきです。幸運に恵まれればいいですが、そうとばかりは限りません。

幼い子供をかかえて働かなければならず、にもかかわらず、保育園で面倒見てもらえない。「保育園落ちた。日本死ね」と多くの人が大事にするものを罵ってみたり、愛し合った人と子を儲けたものの、残念ながら一人でその子を育てることになった女性が、新たなパートナーをえて、そのパートナーがその子に虐待を加えたり。

自由と平等は啓蒙思想家たちの考えた基本的人権の中に存在するものであって、多くの人々の長い長い苦労の積み重ねの果に実現されることがあるに過ぎないものです。しかも、それが実現される場合、遠く離れた地球のどこかで、誰かの犠牲があることを必要としている場合もあります。

多くの人が、できる限り悲しい思いをしないで済むように、人間は様々なシステムを試してきました。それは人間の歴史そのものです。地域や家と言うのも、そういった試みの一つです。まったく機能しなくなったわけではありませんが、以前に比べて多くの力を失いました。

それらの支えを復活させるのか、それとも新たな支えを構築するんでしょうか。支えをなくして生きていけるのは、経済的に十分なゆとりと、それを可能にした社会的背景を持った人だけだと思うんですが。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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