日本人と霊『神霊の国日本』 井沢元彦
「ある言葉を口にすると、その言葉の持つ霊力が刺激されて、その言葉通りのことが現実化する」
これが言霊信仰の、基本的な理念です。起源は計り知れないようです。万葉の宮廷詩人、柿本人麻呂は、日本は「言挙げせぬ国」、つまり、みだりに言葉を使ってはいけない国という意味ですね。軽々しく口にした言葉は、良かれ悪しかれ現実化してしまうからです。“良かれ”であるならばいいのですが。
この本では、大東亜戦争においても、この言霊信仰が大きく影響をしていると書いています。日本が戦争に負けるという言葉を口に出すと、それはどんな動機からの言葉であっても非国民の敗戦主義者にされてしまうということです。
連合艦隊司令長官の山本五十六が、「アメリカとの長期戦は絶対ダメだからやめろ」と言ったのは愛国心からであったが、それでも彼は、非国民だと命まで付け狙われる始末でした。山本五十六の主導した真珠湾攻撃とその後の戦争指導は、それこそ日本を敗戦に追い込んだと思いますが、「長期戦になればアメリカに負ける」という判断は、言霊に囚われない冷静なものだったと思います。それでは当然、最悪の事態を想定することはできませんね。
さらに日本人は穢を嫌います。古代においては、天皇でさえも武器を持って戦ったものの、支配が安定すると皇族は、さらに貴族たちも武器を捨ててしまいます。戦わなければならない時はどうするかと言うと、自分たちが蔑んでいる武士にそれを任せてしまうのも、“死の穢”、“血の穢”を遠ざけるためですね。・・・なんだか穢ってのは、現代人にとっての放射能みたい。
日本史上未曾有の危機と言われる元寇を撃退することができたのは、ひとえに鎌倉武士の健闘のおかげです。ところが朝廷はそれを認めず、亀山天皇が筥崎宮に奉納した《敵国降伏》の御宸筆にかけた願いに神が応え、風を吹かせたことで日本は守られたと、これを公式の見解としました。「大丈夫、現代の日本人には憲法9条があるから」ってところでしょうか。
明治以来、欧米列強の圧力に力をつけて対抗するしかないと、現実的な対応をした日本でしたが、アメリカとの戦争に苦しんで《神風特攻隊》なんてものを編成してしまいます。「お前ら、死んでこい」では、武士を卑下した貴族たち以下です。


「テクマクマヤコンテクマクマヤコン看護婦さんになーれー」と言って看護婦さんになっちゃうのはひみつのアッコちゃん。アッコちゃんが「ラミパスラミパス ルルルルル」と唱えると、もとに戻ります。「テクマクマヤコン」は「テクニカル・マジック・マイ・コンパクト」を略したものだとか。「ラミパス」は「スーパーミラー」の逆さ言葉。だけど大事なのは、「看護婦さんになーれー」なんですね。言葉にしたことが現実化するんです。
言ったことが現実化するってのは、ひみつのアッコちゃんにも反映されていたんでしょうか。こういうのを呪文っていいますが、日本人にとっては、日頃使っている言葉自体が呪文ってことになるでしょうか。
同じ時期に魔法を使っていたのが、魔法使いサリー。サリーの呪文はマハリクマハリタヤンバラヤンヤンヤン。実はこれ、魔法使いサリーのテーマ曲を作曲した小林亜星さんが生みの親なんだそうです。
もともとがスキャットの好きな方で、テーマ曲の作曲の最中に、導かれるように降ってきた魔法のフレーズなんだそうです。こりゃすごい。さらにすごいことに亜生さん、《暮らし安心クラシアン》とか、《あなたとコンビにファミリーマート》なんて呪文を生み出して、言葉にしたことを現実化させているんだそうです。
呪文の中の呪文と言えば、アブラカタブラ。2世紀のローマ皇帝カラカラ時代の医師にサンモニクスの残した書物が、このアブラカタブラが現れる最古の資料だそうです。サンモニクスは、この言葉が三角形に書かれた御札を、病気から身を守るお守りのように使っていたそうです。由緒の正しい呪文ですね。ただその先の由来はいまいちはっきりしないそうです。
一説には、これはアラム語で、その意味は「私は言葉のごとく物事を為せる」とするものがあります。また一説には、これはヘブライ語で、その意味は「私が話すように物事が創造する」とするものがあります。どちらも、《言葉にしたことは現実化する》に通じないでしょうか。
言霊信仰という、まさに地域限定のガラパゴス的信仰形態でありますが、古代においては人類普遍のグローバルなものの考え方だったのかも。・・・あるいは、言葉を現実化する強さを、もしかしたら古代人たちは持っていたのかも。
これが言霊信仰の、基本的な理念です。起源は計り知れないようです。万葉の宮廷詩人、柿本人麻呂は、日本は「言挙げせぬ国」、つまり、みだりに言葉を使ってはいけない国という意味ですね。軽々しく口にした言葉は、良かれ悪しかれ現実化してしまうからです。“良かれ”であるならばいいのですが。
この本では、大東亜戦争においても、この言霊信仰が大きく影響をしていると書いています。日本が戦争に負けるという言葉を口に出すと、それはどんな動機からの言葉であっても非国民の敗戦主義者にされてしまうということです。
連合艦隊司令長官の山本五十六が、「アメリカとの長期戦は絶対ダメだからやめろ」と言ったのは愛国心からであったが、それでも彼は、非国民だと命まで付け狙われる始末でした。山本五十六の主導した真珠湾攻撃とその後の戦争指導は、それこそ日本を敗戦に追い込んだと思いますが、「長期戦になればアメリカに負ける」という判断は、言霊に囚われない冷静なものだったと思います。それでは当然、最悪の事態を想定することはできませんね。
さらに日本人は穢を嫌います。古代においては、天皇でさえも武器を持って戦ったものの、支配が安定すると皇族は、さらに貴族たちも武器を捨ててしまいます。戦わなければならない時はどうするかと言うと、自分たちが蔑んでいる武士にそれを任せてしまうのも、“死の穢”、“血の穢”を遠ざけるためですね。・・・なんだか穢ってのは、現代人にとっての放射能みたい。
日本史上未曾有の危機と言われる元寇を撃退することができたのは、ひとえに鎌倉武士の健闘のおかげです。ところが朝廷はそれを認めず、亀山天皇が筥崎宮に奉納した《敵国降伏》の御宸筆にかけた願いに神が応え、風を吹かせたことで日本は守られたと、これを公式の見解としました。「大丈夫、現代の日本人には憲法9条があるから」ってところでしょうか。
明治以来、欧米列強の圧力に力をつけて対抗するしかないと、現実的な対応をした日本でしたが、アメリカとの戦争に苦しんで《神風特攻隊》なんてものを編成してしまいます。「お前ら、死んでこい」では、武士を卑下した貴族たち以下です。
『神霊の国日本』 井沢元彦 秀和システム ¥ 1,540 令和の時代にあらためて読みたい。日本人の行動原理を歴史に学ぶ |
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「テクマクマヤコンテクマクマヤコン看護婦さんになーれー」と言って看護婦さんになっちゃうのはひみつのアッコちゃん。アッコちゃんが「ラミパスラミパス ルルルルル」と唱えると、もとに戻ります。「テクマクマヤコン」は「テクニカル・マジック・マイ・コンパクト」を略したものだとか。「ラミパス」は「スーパーミラー」の逆さ言葉。だけど大事なのは、「看護婦さんになーれー」なんですね。言葉にしたことが現実化するんです。
言ったことが現実化するってのは、ひみつのアッコちゃんにも反映されていたんでしょうか。こういうのを呪文っていいますが、日本人にとっては、日頃使っている言葉自体が呪文ってことになるでしょうか。
同じ時期に魔法を使っていたのが、魔法使いサリー。サリーの呪文はマハリクマハリタヤンバラヤンヤンヤン。実はこれ、魔法使いサリーのテーマ曲を作曲した小林亜星さんが生みの親なんだそうです。
もともとがスキャットの好きな方で、テーマ曲の作曲の最中に、導かれるように降ってきた魔法のフレーズなんだそうです。こりゃすごい。さらにすごいことに亜生さん、《暮らし安心クラシアン》とか、《あなたとコンビにファミリーマート》なんて呪文を生み出して、言葉にしたことを現実化させているんだそうです。
呪文の中の呪文と言えば、アブラカタブラ。2世紀のローマ皇帝カラカラ時代の医師にサンモニクスの残した書物が、このアブラカタブラが現れる最古の資料だそうです。サンモニクスは、この言葉が三角形に書かれた御札を、病気から身を守るお守りのように使っていたそうです。由緒の正しい呪文ですね。ただその先の由来はいまいちはっきりしないそうです。
一説には、これはアラム語で、その意味は「私は言葉のごとく物事を為せる」とするものがあります。また一説には、これはヘブライ語で、その意味は「私が話すように物事が創造する」とするものがあります。どちらも、《言葉にしたことは現実化する》に通じないでしょうか。
言霊信仰という、まさに地域限定のガラパゴス的信仰形態でありますが、古代においては人類普遍のグローバルなものの考え方だったのかも。・・・あるいは、言葉を現実化する強さを、もしかしたら古代人たちは持っていたのかも。

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