『たべたいの』 壇蜜
「色々思うところはあるけれど、まずは食べてみようじゃないか。そして思うことや過去の記憶を関連付けて毎週俳句とイラストで記していこうじゃないか。そして執筆代をもらおうじゃないか」
週刊新潮からの“連載のお願い”に、食べ物に対する情熱が低い上に、それほど造詣も深くないと自覚する壇蜜さんが、上記のような、どうも執筆代目当てとしか思われない動機で週刊新潮に連載で綴った《だんだん蜜味》というエッセイを一冊にまとめたのがこの本、『たべたいの」ということです。
干し草が 牛を通して 乳变化
納豆や 糸でも藁でも 縛られて
雨送り 代わりに迎える 水羊羹
ずいぶん前のことになりますが、日光白根に登って、その日は奥日光の、冬はスキー場になるそのゲレンデにテントを張りました。翌日は男体山を往復して、さらには日光東照宮に参拝し、歩いて駅へ向かう道の右側にある店で、水羊羹を買いました。
甘いものは、自分から進んで食べるわけじゃありません。連れ合いが、自分が食べたいもんだから、たまたまその場に居合わせた私を無視できずに声をかけてきます。そんなとき、以前は、「いらない」と言って、連れ合いを喜ばせておりました。どうも最近は維持が悪くなってしまったんでしょうか。それとも舌が変わって、甘いものを受け付けるようになったんでしょうか。「うん、食べる」と言うようになってしまいました。おそらく連れ合いは、ひどく落胆しているに違いありません。
その水羊羹は、ずいぶん前のことなので、私は食べておりません。
願えども オクラ星には 届くまい
冷ややかに 君急ぐなら ポークカレー
サプライズ 焼きナスまさかの カレー味
隠し味 萎びた林檎を すりおろす
さばカレー 極めに極めた 無国籍
サバ缶ブームは、少しは下火になったんでしょうか。火付け役が誰だったのか知りませんが、正直申し上げて、こんなにも迷惑な話はありません。若い頃から、このサバ缶は私にとって、とても安くて栄養価の高いおかずでした。それがなんと、このサバ缶ブームで、価格はおそらく倍になりました。たまに安いのが出てるかと思えば“中国”製。海産物に関しては、日本の海から持ち去った海産物を、なんで“中国”にお金を払って買い求めなくては行かないのかという思いが強く、どうしても買うきになれません。
ちなみに壇蜜さんが「試す勇気が出ない」というさばカレー。やはり缶詰で出ておりますが、私がこれを試さないのは、やはり価格の問題です。


壇蜜さんの文章を読むのははじめてです。
とても面白い文章を書くんですね。ものの捉え方が、とても常識的なことに驚いています。今の世の中は、常識的であることがとても珍しいっていう変な時代です。常識的であることは、実は非常識なことになっちゃってるんですね。
《「等身大」「女子力」「エンジンブレーキ」・・・これらは私が「いくら説明を受けても意味が分からないので、理解することを放棄した言葉」の一部である》とおっしゃいます。しかし、同時に、《仮に「女子力高い等身大のエンジンブレーキ」という話題になったら意識を失ってしまいそう》ともおっしゃってるので、その意味はあらかた把握しながらも、そんな世界に身を置きたくないという強い思いが、それらの言葉にアレルギー反応を起こしているんでしょう。
なにしろ、「女子力」に関わる微々たる知識をかき集めると、「はちみつレモン」に直結すると言うんですから、やっぱり分かっていてそういう態度を取るのが、見ていて気持ちいい。
名月の 艶と丸みを トロ見の夜
秋祭り 飴が糸引き 縁結び
半同棲 サンマが好きな ひとだった
女の子とデートをして、必死になってパスタの店に入りました。メニューを見て意外と庶民的な値段であることにホッとしましたが、ホッとした拍子に、そこに書かれていた納豆スパというのが食いたくなってしまったんです。いくらなんでも、まだこれからどうなるかわからないデートで、納豆スパを食べるわけにもいかず、どんな料理かさっぱりわからないスパゲッティを注文した記憶があります。・・・それが何だったかは覚えていませんが。
サンマが好きですが、やはり女の前で塩焼きにされたサンマを箸でさばいて、はらわたの部分を取り出して、そこに大根おろしを乗せ、醤油をちょっとたらして食べるっていうのは、少しスリリングにすぎるように感じます。同棲状態ならまだしも、半同棲という状態であっても、これは勝負どころってことになるでしょう。
そう言えば今年、いったんは一尾150円くらいまでなりましたが、また値段が上がってしまいました。連れ合いと私、二人とも、毎年秋ににサンマを食べるのを楽しみにしているのですが、今年はまだ二度しか食べておりません。目安は一尾150円です。
面白かったです。他にも壇蜜さんが書いたもの、機会があれば読んでみたいです。
週刊新潮からの“連載のお願い”に、食べ物に対する情熱が低い上に、それほど造詣も深くないと自覚する壇蜜さんが、上記のような、どうも執筆代目当てとしか思われない動機で週刊新潮に連載で綴った《だんだん蜜味》というエッセイを一冊にまとめたのがこの本、『たべたいの」ということです。
干し草が 牛を通して 乳变化
納豆や 糸でも藁でも 縛られて
雨送り 代わりに迎える 水羊羹
ずいぶん前のことになりますが、日光白根に登って、その日は奥日光の、冬はスキー場になるそのゲレンデにテントを張りました。翌日は男体山を往復して、さらには日光東照宮に参拝し、歩いて駅へ向かう道の右側にある店で、水羊羹を買いました。
甘いものは、自分から進んで食べるわけじゃありません。連れ合いが、自分が食べたいもんだから、たまたまその場に居合わせた私を無視できずに声をかけてきます。そんなとき、以前は、「いらない」と言って、連れ合いを喜ばせておりました。どうも最近は維持が悪くなってしまったんでしょうか。それとも舌が変わって、甘いものを受け付けるようになったんでしょうか。「うん、食べる」と言うようになってしまいました。おそらく連れ合いは、ひどく落胆しているに違いありません。
その水羊羹は、ずいぶん前のことなので、私は食べておりません。
願えども オクラ星には 届くまい
冷ややかに 君急ぐなら ポークカレー
サプライズ 焼きナスまさかの カレー味
隠し味 萎びた林檎を すりおろす
さばカレー 極めに極めた 無国籍
サバ缶ブームは、少しは下火になったんでしょうか。火付け役が誰だったのか知りませんが、正直申し上げて、こんなにも迷惑な話はありません。若い頃から、このサバ缶は私にとって、とても安くて栄養価の高いおかずでした。それがなんと、このサバ缶ブームで、価格はおそらく倍になりました。たまに安いのが出てるかと思えば“中国”製。海産物に関しては、日本の海から持ち去った海産物を、なんで“中国”にお金を払って買い求めなくては行かないのかという思いが強く、どうしても買うきになれません。
ちなみに壇蜜さんが「試す勇気が出ない」というさばカレー。やはり缶詰で出ておりますが、私がこれを試さないのは、やはり価格の問題です。
『たべたいの』 壇蜜 新潮社 ¥ 792 男はざわつき、女は頷く魅惑の壇蜜ワールドへようこそ 中毒性大の食エッセイ! |
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壇蜜さんの文章を読むのははじめてです。
とても面白い文章を書くんですね。ものの捉え方が、とても常識的なことに驚いています。今の世の中は、常識的であることがとても珍しいっていう変な時代です。常識的であることは、実は非常識なことになっちゃってるんですね。
《「等身大」「女子力」「エンジンブレーキ」・・・これらは私が「いくら説明を受けても意味が分からないので、理解することを放棄した言葉」の一部である》とおっしゃいます。しかし、同時に、《仮に「女子力高い等身大のエンジンブレーキ」という話題になったら意識を失ってしまいそう》ともおっしゃってるので、その意味はあらかた把握しながらも、そんな世界に身を置きたくないという強い思いが、それらの言葉にアレルギー反応を起こしているんでしょう。
なにしろ、「女子力」に関わる微々たる知識をかき集めると、「はちみつレモン」に直結すると言うんですから、やっぱり分かっていてそういう態度を取るのが、見ていて気持ちいい。
名月の 艶と丸みを トロ見の夜
秋祭り 飴が糸引き 縁結び
半同棲 サンマが好きな ひとだった
女の子とデートをして、必死になってパスタの店に入りました。メニューを見て意外と庶民的な値段であることにホッとしましたが、ホッとした拍子に、そこに書かれていた納豆スパというのが食いたくなってしまったんです。いくらなんでも、まだこれからどうなるかわからないデートで、納豆スパを食べるわけにもいかず、どんな料理かさっぱりわからないスパゲッティを注文した記憶があります。・・・それが何だったかは覚えていませんが。
サンマが好きですが、やはり女の前で塩焼きにされたサンマを箸でさばいて、はらわたの部分を取り出して、そこに大根おろしを乗せ、醤油をちょっとたらして食べるっていうのは、少しスリリングにすぎるように感じます。同棲状態ならまだしも、半同棲という状態であっても、これは勝負どころってことになるでしょう。
そう言えば今年、いったんは一尾150円くらいまでなりましたが、また値段が上がってしまいました。連れ合いと私、二人とも、毎年秋ににサンマを食べるのを楽しみにしているのですが、今年はまだ二度しか食べておりません。目安は一尾150円です。
面白かったです。他にも壇蜜さんが書いたもの、機会があれば読んでみたいです。

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