めんどくせぇことばかり 『三体』 劉慈欣
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『三体』 劉慈欣

自治会の仕事に、高齢の会員の方々に声をかけて、月に一度は集まって、体操したり、お茶会をしたり、なにがしかのレクリエーションを楽しんでもらえるように準備することがある。

自治会長になってから、隣近所の人たちに関心を向けることを、ようやく大事なことだと思えるようになってきた。・・・なんて言いながら、この高齢者向けの準備は、ほぼ全面的に連れ合いに任せてしまってるんだけど。

そんな取組の一環として、連れ合いが地元のボランティア団体に大正琴の演奏の鑑賞会を企画した。そんな話を聞いた時、最初に頭にあったのは、お琴の演奏にあるように、自治会館の座敷、上の方に斜に置かれたお琴の向こうに着物の女性が座り、演奏している姿だった。下座には隣近所の高齢者が座ってうっとり鑑賞するというイメージだ。夫婦というのは頭の構造や程度も似てきてしまうもののようで、連れ合いの頭の中にもほぼ同様の様子が描かれていたようだ。

そんなイメージのままボランティアを依頼したところ、先方は快く引き受けてくださり、当日は演者10人で来ていただけることになった。・・・10人で。

その10人の方々に、本日の午前中に来ていただいた。会は10時に始まり、前半1時間が体操の時間、後半1時間が大正琴の時間。私は体操の途中でおいで頂く方々をお迎えする役割だった。いらして頂いたグループの方々は、今日集まっている自治会の方々同様のご高齢の方ばかり。

座卓に大正琴をおいて、プラグでアンプにつなげて演奏するもののようだ。しかも、事前に歌詞カードが配られて、私たち聞く側も一緒に歌を歌う。大正琴の演奏会っていうのはこういうものだった。もちろん大きな声で歌った。

私にとって異次元とも言える、この日の出来事だった。
この、『三体』という本は、次元がどうのこうのという話が出てくるんだが、そういう話が出てくる部分は、どうしても私には退屈で仕方がなかった。コンピューターのプログラミングがどうのこうのという話も同様で、それがために、この『三体』という本の面白みを、おそらく私は半分くらいしか味わえていないだろう。・・・おそらく。


『三体』    劉慈欣

早川書房  ¥ 2,090

三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?
第一部  沈黙の春
第二部  三体
第三部  人類の落日


とっても壮大な話で、構想自体はきわめて興味深い。だから、かなり頻繁に現れる退屈な時間を我慢しながら、全体としての筋立ては楽しむことができた。

地球外知的生命体からのメッセージが送られてくる。かなり、忌々しいメッセージである。このメッセージに最初に接触したのは、葉文潔という女性科学者であった。葉文潔は、文化大革命の激しい内ゲバと壮絶な糾弾集会で、自らの尊敬する父親をなぶり殺されていた。

物語は、いきなり、その糾弾集会の場から始まる。その糾弾集会の忌々しさは、著者劉慈欣の小説家としての力を感じさせる。教え子が恩師を、子が親を糾弾集会の場に追い込むこの文化大革命と呼ばれる時代。物語の中では妻が夫を糾弾した。まさに狂気の時代であるが、1960年代後半から70年代前半を生きた中国人であれば、多かれ少なかれ、この狂気の時代をくぐり抜けた。

毛沢東が死んだからといって、容易にもとに戻れるものでもない。その後遺症は、まだまだこれから“中国”を苦しめることになるだろう。それが物語にも、色濃く反映されている。父をなぶり殺しにされた葉文潔は、人間の世の中に対して復讐を思いとどまることはなかった。それが、地球外知的生命体から送られてきた忌々しいメッセージと、忌々しく絡み合っていく。

文革が一段落ついた後、葉文潔は父に直接手を下した紅衛兵たちを呼び出した。当時、15歳ほどの小娘でしかなかった紅衛兵たちは、葉文潔が思っていたような、自分が過去にしでかした罪の重さに打ちひしがれた加害者たちではなかった。ここにもやはり、忌々しさがつきまとう。

この忌々しさこそが、重奏低音のように、物語全体をまとめ上げている。この『三体』は三部作の第一作で、重奏低音は最後まで鳴り止むことはないだろう。だから、この三部作の結末は、当然忌々しいものになる。

その結末に、文革の忌々しさにはとても耐えられない私は、耐えることができるだろうか。

ずい分前から、最新の科学知識が理解できないなんてことはもちろんのことながら、日常生活で目の前に登場する様々な機器さえ使いこなすことができないようになっている。

これまでのSF小説では、ここまで深刻に感じたことはなかったんだけど、この『三体』を読んで、危機感を新たにしている。今後は、SF小説を読むことが、退屈な長い時間になってしまうんだろうか。





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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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