めんどくせぇことばかり 『ぼくたちのP』 にしがきようこ
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『ぼくたちのP』 にしがきようこ

“P”とはなんだ。

“パンツ”・・・『ぼくたちのパンツ』では話にならない。“ボケモン”・・・『ぼくたちのポケモン』なんて本当にありそうだけど、私はまもなく還暦だ。“パプリカ”・・・この間、孫が音楽に合わせて踊っていた。『ぼくたちのパプリカ』はすでに現実のものとなっているようだ。何度も言うようだけど、私はまもなく還暦だ。

“パラダイス”・・・『ぼくたちのパラダイス』、これが正解。パラダイスという向こうの言葉、キリスト教世界の言葉だな。辞書によれば天国であるとかエデンの園であるとかが出てくるが、日本人のイメージからすれば“楽園”何ていう言葉がふさわしいか。

かつて、挨拶で使ったことがある。

私は定時制高校に勤務した時期があった。とある全日制高校での勤務が10年を超え転勤を考えなければならない頃、諸般の事情から迷った挙げ句に定時制高校を希望した。おそらく今でもそうだが、定時制高校を希望すれば、ほぼ間違いなくその希望は叶う。希望する者はいないのだ。

希望する者がいないにはそれなりの理由がある。それなりの理由っていうのに馴染むまでの間は苦労もあるが、基本的に定時制高校っていうのは、私にとって水があった。まだ定年までに10年を超える年数があったが、定時制で終わりでいいと思っていた。ところがその定時制のほうが無くなってしまうことになり、私は県内でも学力が中程の全日制高校に転勤することになる。

転勤したのは定時制がなくなる2年前で、まだ二つの学年を残したまま転勤した。4月の下旬に離任式に呼ばれ、残る二つの学年、四年生と三年生を前に離任の挨拶をした。

「全日制高校の仕事になれるのは大変だけど、いつか必ず今の仕事場を自分にとってのパラダイスに変えてみせる。みんなもあきらめるな」

県内でも学力が中程の全日制高校っていうのは、私の教員人生の中では一番楽なところのはずなんだけど、私にとっては厳しかった。定時制高校っていうのは、教育ってものの本来持ってる姿に近いものがあって、それが肌にあっていた。でも、新しい学校は、それとはだいぶ違った。「パラダイスに変えてみせる」と言いながら、結局私の方から逃げ出した。

今、学校が求められているものって、どんどん、本来の教育から遠ざかっているような気がしてならない。
『ぼくたちのP』というこの本。くくりで言うと、児童文学ということになる。

私がこの本を手にした理由は、言わずと知れた、この装丁にあある。登山靴があしらわれているからね。“P”が何を表すか分からなくても、山に関わる話であることは間違いないだろうからね。


『ぼくたちのP』    にしがきようこ

小学館  ¥ 1,540

ユウタは人には言えない弱点があった。そのせいで人が苦手で、あまり友だちがいない
プロローグ
一日目 別荘への道、光る池塘、山の男たち
二日目 道普請、ぼくの秘密
三日目 ヒメさん登場
四日目 山を守る
五日目 山の生きものたち、避難小屋で、夜の嵐
六日目 下山
エピローグ


9月1日に自殺する子供が多いそうだ。なんて世の中なんだろう。

樹木希林さんの娘さん、内田也哉子さんが『9月1日 母からのバトン』という本をお出しになった。樹木希林さんとの共著という形になっているようだ。9月1日に自らの命をたってしまう子どもたちが後をたたないことを知った樹木希林さんの憤りを、娘の内田也哉子さんが引き継いで綴った本だそうだ。

命を断つことにつながるのかどうか分からないが、中学二年生のこの物語の主人公も、すでに自分と自分を囲む周囲に対するどうにもならない無力感にとらわれてしまっている。

そんな状態で彼は、山に関わった。大学教授のかたわら、山の保全活動に勤しむ叔父を持っていたことは、彼にとって幸運だった。小学生の頃、雷に敏感で、極度な怖がりを笑われたことがトラウマとなっていたが、それは山では特技だった。これも幸運だった。

弱点だと思っていたその力で、彼は山において、それまでの自分を乗り越えた。彼が学校に戻ってどんな行動を取れるのか。もう、そんなことは関係ない。何も変わらないかも知れない。でも、彼は自分が無力であるとは、もはや思っていない。自分の周囲が無力でないということも、おそらく受け入れられるだろう。

羨ましいような幸運が私にないのは悔しいが、そこまでの幸運に恵まれなくても、きっと山には、そんな少年に、自分を乗り越える機会を与えてくれるだろう。

高校生になると、もう少し情緒が安定してくる。しかし、そこまでの段階で、通常、いくつもの淘汰が行われている。ほとんど全員が、傍目に、あるいは真っ向から、そういった状況を経験してきている。だから、他人に足を引っ張れれるような言行を取らないよう慎重で、他人の足を引っ張れるチャンスにはきわめて敏感である。それを利用するかどうかはともかく。あとは程度の差ってところかな。

数は多くないと信じたいが、時には教員の足でも平然と引っ張るやつまでいる。必要ならば涙を流しても見せる。男でも女でも、関係ない。そこまでいくと、怪物だ。

定時制では、小学校や中学校段階で淘汰されちゃったやつ、高校に上がってからいろいろな事情で退学したやつ、グレて高校を卒業してないやつ、若い頃に高校進学の機会がなかった年配者、日本に働きに来た外国人の子弟、中卒で相撲部屋に入ったが続けられなくなったやつ、いろいろな段階の学習障害・知能障害を抱えたやつ、とにかくいろいろな生徒がいた。

いろいろな事情と向き合わなければならない彼らを指導する能力は私はあったが、怪物を指導しようとして足をすくわれかかった。・・・危なかった。





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ジャンル : 本・雑誌

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非公開コメント

こんにちは

拍手コメントありがとうございました。
しょーもない本の紹介をしてまってすみませんでした。

> 数は多くないと信じたいが、時には教員の足でも平然と引っ張るやつまでいる。
> 必要ならば涙を流しても見せる。男でも女でも、関係ない。そこまでいくと、怪物だ。

↑ いつか、詳しいお話を読ませていただけるとうれしいです。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

つかりこ さま

辞める前は、仕事のことは、できるだけ書かないようにしていたんですが、辞めちゃえばね。まあ、守秘義務は守った範囲内でね。
・・・それでも、若い頃にやって来たことを明らかにすると、おそらく間違いなく呆れられてしまいます。・・・どうしたもんだか。

とりあえず、そのうちに・・・、ということで。

コメントありがとうございます。

ありがとうございました



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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