『ランチ酒 おかわり日和』 原田ひ香
自治会の用事で、あるお宅を訪ねた。
たまたまだが、我が家の目の前のお宅で、このお宅はなぜかずい分前に自治会をやめたようだ。自治会の用事なんて敬遠されることばかりだから、それなりに気が重い。呼び鈴を押すが、反応がない。お留守のような。車はあるが・・・。もう一度呼び鈴を押すが、やはり反応はない。
私の顔が怖いのかも知れないと、連れ合いが失礼なことを言う。一緒に行こうかって。なら一緒に行ってもらおう。これで出てきたら、本当にそれが原因ということか。呼び鈴を押す。反応はない。それ見ろ。私の顔のせいじゃない。
ちょっと表に出た連れ合いが帰ってきた。玄関を閉める音、廊下を歩く音が、なんだか慌ただしい。宅配便が先程のお宅に来たらしい。そのお宅の人はすぐに出てきたそうだ。
ああ、嫌だ、嫌だ。
私は基本的に、午後5時以前に酒は飲まない。・・・いや、仕事をやめた今、4時くらいから飲むこともある。昼、もしくは朝から飲んだら、私の場合、止まらない。そのうち、その場で倒れるように寝て、目が覚めたら、また飲む。正月は、三が日の間、それを繰り返す。だけどそれは、許せても、正月三が日くらいなもの。・・・そう戒めておかないと、私は本当にダメな人間だ。そんなこと、連れ合いに言われるまでもなく分かっている。
ですから、この本の主人公、犬森祥子のように、たとえそれが仕事を終えたあとの晩酌ならぬ“ランチ酒”とは言え、昼から一杯というわけにはいかないんだ。
この本を手にしたのは、それこそ晩酌の一杯に合うおつまみを紹介する料理の本のように、昼間の一杯に合わせるおつまみの本だと思ってました。もしくは昼飯でも食いながら一杯飲んだ、あちらこちらの店の話、ランチの話をまとめたエッセイ集くらいまでは想像の範囲内。だけど、一貫した物語を持った短編集だとは、実のところ、まったく思っていなかった。
しかも、この『ランチ酒 おかわり日和』は、第二シリーズだった。第二シリーズが出るということは、結構売れてる本だってことか。


《短大卒業後上京し、OLだった時に紹介された相手との間に子どもができたことで結婚した祥子は、二世代住宅で同居していた義父母との折り合いが悪く離婚した。その後、仕事も行き場もなかった祥子を、同郷の友人、亀山太一が雇ってくれた。彼は祖父が大臣経験者、父は手広く事業をしている。表向きは、何でも請け負う「便利屋」だけど、実際には深夜、依頼人の家に赴いて一緒に過ごす「見守り屋」が主な業務内容だった。》祥子は一人娘を夫のところに残している。その夫はすでに再婚して、新しい母親に、娘もなついているらしい。
仕事が仕事だけに、客は一癖も二癖もある人たちばかり。見守り対象も、老婦人や子ども、さらにはここまで性格の悪いやつがいるのかという金持ち。依頼の理由も千差万別。
だけど、そんな訳ありの見守り対象と浅く、深く祥子が関わっていく。関わるうち、見守り対象の方にも、祥子の方にもいろいろな変化がある。そりゃそうだ。人は、変わっていくもんだ。
面白い作りの物語だと思った。最初に浮かんだのは《孤独のグルメ》。最初は、《孤独のグルメ》の女版だと思った。孤独のグルメの井之頭五郎は下戸。酒が飲めない。それを飲める口にして、昼飯に散財を惜しまない五郎とは違って、だいたい1000円程度のランチに限定って感じだな。
私は、“ランチ酒”の部分はとても興味深く読めた。見守り対象との交流にも心温まるものを感じ、面白かった。ただ、犬森祥子という女の生き方に関して、残念ながら心を動かされるところがなかった。私が男で、しかもおじいさんと呼んだほうがいいような歳だからか?
私のような考えの人ばかりじゃなく、物語の中の犬森祥子に共感できる人なら、この本は面白いだろう。
たまたまだが、我が家の目の前のお宅で、このお宅はなぜかずい分前に自治会をやめたようだ。自治会の用事なんて敬遠されることばかりだから、それなりに気が重い。呼び鈴を押すが、反応がない。お留守のような。車はあるが・・・。もう一度呼び鈴を押すが、やはり反応はない。
私の顔が怖いのかも知れないと、連れ合いが失礼なことを言う。一緒に行こうかって。なら一緒に行ってもらおう。これで出てきたら、本当にそれが原因ということか。呼び鈴を押す。反応はない。それ見ろ。私の顔のせいじゃない。
ちょっと表に出た連れ合いが帰ってきた。玄関を閉める音、廊下を歩く音が、なんだか慌ただしい。宅配便が先程のお宅に来たらしい。そのお宅の人はすぐに出てきたそうだ。
ああ、嫌だ、嫌だ。
私は基本的に、午後5時以前に酒は飲まない。・・・いや、仕事をやめた今、4時くらいから飲むこともある。昼、もしくは朝から飲んだら、私の場合、止まらない。そのうち、その場で倒れるように寝て、目が覚めたら、また飲む。正月は、三が日の間、それを繰り返す。だけどそれは、許せても、正月三が日くらいなもの。・・・そう戒めておかないと、私は本当にダメな人間だ。そんなこと、連れ合いに言われるまでもなく分かっている。
ですから、この本の主人公、犬森祥子のように、たとえそれが仕事を終えたあとの晩酌ならぬ“ランチ酒”とは言え、昼から一杯というわけにはいかないんだ。
この本を手にしたのは、それこそ晩酌の一杯に合うおつまみを紹介する料理の本のように、昼間の一杯に合わせるおつまみの本だと思ってました。もしくは昼飯でも食いながら一杯飲んだ、あちらこちらの店の話、ランチの話をまとめたエッセイ集くらいまでは想像の範囲内。だけど、一貫した物語を持った短編集だとは、実のところ、まったく思っていなかった。
しかも、この『ランチ酒 おかわり日和』は、第二シリーズだった。第二シリーズが出るということは、結構売れてる本だってことか。
『ランチ酒 おかわり日和』 原田ひ香 祥伝社 ¥ 1,540 疲れた心にじーんと沁みる、珠玉の人間ドラマ×絶品グルメの五つ星小説! |
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《短大卒業後上京し、OLだった時に紹介された相手との間に子どもができたことで結婚した祥子は、二世代住宅で同居していた義父母との折り合いが悪く離婚した。その後、仕事も行き場もなかった祥子を、同郷の友人、亀山太一が雇ってくれた。彼は祖父が大臣経験者、父は手広く事業をしている。表向きは、何でも請け負う「便利屋」だけど、実際には深夜、依頼人の家に赴いて一緒に過ごす「見守り屋」が主な業務内容だった。》祥子は一人娘を夫のところに残している。その夫はすでに再婚して、新しい母親に、娘もなついているらしい。
仕事が仕事だけに、客は一癖も二癖もある人たちばかり。見守り対象も、老婦人や子ども、さらにはここまで性格の悪いやつがいるのかという金持ち。依頼の理由も千差万別。
だけど、そんな訳ありの見守り対象と浅く、深く祥子が関わっていく。関わるうち、見守り対象の方にも、祥子の方にもいろいろな変化がある。そりゃそうだ。人は、変わっていくもんだ。
面白い作りの物語だと思った。最初に浮かんだのは《孤独のグルメ》。最初は、《孤独のグルメ》の女版だと思った。孤独のグルメの井之頭五郎は下戸。酒が飲めない。それを飲める口にして、昼飯に散財を惜しまない五郎とは違って、だいたい1000円程度のランチに限定って感じだな。
私は、“ランチ酒”の部分はとても興味深く読めた。見守り対象との交流にも心温まるものを感じ、面白かった。ただ、犬森祥子という女の生き方に関して、残念ながら心を動かされるところがなかった。私が男で、しかもおじいさんと呼んだほうがいいような歳だからか?
私のような考えの人ばかりじゃなく、物語の中の犬森祥子に共感できる人なら、この本は面白いだろう。

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