『一宮の秘密』 戸矢学
山を崩して団地にしたり、ゴルフ場にしたり、最近は山の木を切り払って太陽光パネルを並べるという東京電機大学なんて大学まである。
私の住む埼玉県東松山市は台風19号で被災した。早俣、川辺など、おそらく古くから水害と闘ってきたであろうと思われる地名を持つ場所が、残念ながらこの台風で被災地になった。そこはハザードマップにおいても、危険が明示されていた。
古くから人が住んでいる場所でもそういうことがある。だけど、それらの地域に隣接して、新たに街が作られた。それらの中にも被災した家がある。古くからの住宅に並んで、まるで昨日今日作られたような、真新しい家も被災していた。
小さな子どもを抱えた若夫婦の家だ。その家を手に入れるために、どれだけのお金を払っただろう。ハザードマップで危険が明示され、地元の人間が手を出さない土地に家を建てるのに、業者はいくらの金を払ったんだろう。
この本を読んで思った。
古代日本の信仰は、そのほとんどが神奈備に発している。山岳、森林、巨岩を神の依り代として信仰するのが、神社信仰の原型なんだ。明治になって、政令によって、ほぼすべての神社に鏡をご神体として祀るように強制されたけど、それは《記紀神道》だと著者の戸矢さんは書いている。そして《記紀神道》は、山岳、森林、巨岩を神の依り代として信仰する《古神道》とは違う。たしかに《記紀神道》の成立は8世紀初頭だろうからね。



それでは、その起こりは縄文にまで遡るという《古神道》において、人々が祈念したものとは一体何だろう。
日本列島は、大陸プレートと海洋プレートがぶつかる場所にあり、なんと地球を覆う10枚のプレートのうちの4枚までがひしめく場所にある。今朝もラジオが緊急地震速報を流していたが、それが常態で、定期的に大地震に見舞われるという宿命を背負っている。
それはどの程度の規模で、いつ起こるのか、分からない。分からないことにおいては現代人も縄文人も同じだが、縄文人はそのメカニズムも知らない。祈るしかなかったのだ。
延喜式神名帳に記されているような古社、すでに1100年以上前からそこに鎮座しているわけだが、その場所は地震とはほとんど無縁だったという。地震で倒壊したことがないんだそうだ。かつて、この列島に住むものは、そのような“聖地”を見つけ出すことが出来たようだ。
日本列島はフォッサマグナという巨大断層で東西に真っ二つに分かれている。さらにこのフォッサマグナと交差するように東西の列島を縦断しているのが中央構造線である。フォッサマグナと中央構造線が交差している場所に出来た断層湖が諏訪湖である。人々は大地の怒りを静める役割を諏訪大社に託した。
中央構造線は茨城県と千葉県の境目から熊本県と鹿児島県の境目まで続くという。そのライン上に、常陸国一宮鹿島神宮、信濃国一宮諏訪大社、三河国一宮砥鹿神社、伊勢神宮、紀伊国一宮丹生都比売神社、紀伊国一宮伊太祁曽神社、紀伊国一宮日前宮、阿波国一宮大麻比古神社、肥後国一宮阿蘇神社、薩摩国一宮新田神社が並んでいるんだそうだ。
遙か昔からそこに鎮座しているこれらの神社は、「荒ぶる神を鎮めるために建っている」と戸矢さんは言うが、古代の日本人は、一体何を知っていたのだろう。
それを知ろうとすることは、平然と山を崩し、森を切り開らき、危ない土地を他人に売りさばく今の日本人には、無理な話か。
私の住む埼玉県東松山市は台風19号で被災した。早俣、川辺など、おそらく古くから水害と闘ってきたであろうと思われる地名を持つ場所が、残念ながらこの台風で被災地になった。そこはハザードマップにおいても、危険が明示されていた。
古くから人が住んでいる場所でもそういうことがある。だけど、それらの地域に隣接して、新たに街が作られた。それらの中にも被災した家がある。古くからの住宅に並んで、まるで昨日今日作られたような、真新しい家も被災していた。
小さな子どもを抱えた若夫婦の家だ。その家を手に入れるために、どれだけのお金を払っただろう。ハザードマップで危険が明示され、地元の人間が手を出さない土地に家を建てるのに、業者はいくらの金を払ったんだろう。
この本を読んで思った。
古代日本の信仰は、そのほとんどが神奈備に発している。山岳、森林、巨岩を神の依り代として信仰するのが、神社信仰の原型なんだ。明治になって、政令によって、ほぼすべての神社に鏡をご神体として祀るように強制されたけど、それは《記紀神道》だと著者の戸矢さんは書いている。そして《記紀神道》は、山岳、森林、巨岩を神の依り代として信仰する《古神道》とは違う。たしかに《記紀神道》の成立は8世紀初頭だろうからね。
『一宮の秘密』 戸矢学 方丈社 ¥ 2,035 最も古き神々の痕跡を残す「一宮」を訪ね、縄文から続く日本人の精神文化を探る |
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それでは、その起こりは縄文にまで遡るという《古神道》において、人々が祈念したものとは一体何だろう。
日本列島は、大陸プレートと海洋プレートがぶつかる場所にあり、なんと地球を覆う10枚のプレートのうちの4枚までがひしめく場所にある。今朝もラジオが緊急地震速報を流していたが、それが常態で、定期的に大地震に見舞われるという宿命を背負っている。
それはどの程度の規模で、いつ起こるのか、分からない。分からないことにおいては現代人も縄文人も同じだが、縄文人はそのメカニズムも知らない。祈るしかなかったのだ。
延喜式神名帳に記されているような古社、すでに1100年以上前からそこに鎮座しているわけだが、その場所は地震とはほとんど無縁だったという。地震で倒壊したことがないんだそうだ。かつて、この列島に住むものは、そのような“聖地”を見つけ出すことが出来たようだ。
日本列島はフォッサマグナという巨大断層で東西に真っ二つに分かれている。さらにこのフォッサマグナと交差するように東西の列島を縦断しているのが中央構造線である。フォッサマグナと中央構造線が交差している場所に出来た断層湖が諏訪湖である。人々は大地の怒りを静める役割を諏訪大社に託した。
中央構造線は茨城県と千葉県の境目から熊本県と鹿児島県の境目まで続くという。そのライン上に、常陸国一宮鹿島神宮、信濃国一宮諏訪大社、三河国一宮砥鹿神社、伊勢神宮、紀伊国一宮丹生都比売神社、紀伊国一宮伊太祁曽神社、紀伊国一宮日前宮、阿波国一宮大麻比古神社、肥後国一宮阿蘇神社、薩摩国一宮新田神社が並んでいるんだそうだ。
遙か昔からそこに鎮座しているこれらの神社は、「荒ぶる神を鎮めるために建っている」と戸矢さんは言うが、古代の日本人は、一体何を知っていたのだろう。
それを知ろうとすることは、平然と山を崩し、森を切り開らき、危ない土地を他人に売りさばく今の日本人には、無理な話か。

《覚え書き》
磐座(いわくら)
磐座(いわくら)
祭祀の時に神霊が降臨する岩石。
磐境(いわさか)
石の集合によってもうけられた場所。
神籬(ひもろぎ)
神は常緑樹の森に降臨するとされるところから、その森をかたどったものを言う。家を建てる際に行い地鎮祭のとき、更地の四方に竹を立てて注連縄を巡らし、中央に盛り土をして榊を立てる。これが神籬である。つまり神籬は仮設の神社と言うことだ。
神奈備(かんなび)
際だった存在感を示す山岳そのものを示す場合もあるが、磐座、磐境、神籬を含めて、神の降臨地、依り代を意味する。
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