めんどくせぇことばかり 『旅の作法、人生の極意』 山本一力
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『旅の作法、人生の極意』 山本一力

一歩、歩けば間違いを犯し、いい事をしたつもりが人から非難され、呆然とたたずめば邪魔だと邪険にされる。いっそ消えてしまおうかと思う。しかし、引きこもっても腹がへる。腹がへることまで人のせいには出来ないので、なんとかして満たそうとする。人に迷惑をかけることの自責の念を極力小さくし、腹の減りを満たしつつ、かつできるだけ一人になろうと旅に出る。

旅の目的は、人に交わるためではない。そんなもの、目的にするまでもなく、人と交わらずには生きていけない。人と交われば、邪魔にされることもある。そりゃ嫌なこと、避けたいことだけど、私のような未熟な人間には難しい。あきらめるでもないが、そういうものと覚悟して、この恥ずかしきことの多い世を渡るしかない。

できるだけ、一人になりたいんだ。

・・・私がそう思うのは、やはり何らかの間違いを犯し、人から誤解され、邪魔だと邪険にされたとき。実はそうなんだ。そういうことがあったんだ。・・・旅に出たい。

作家さんは、よく旅に出るんだという。それは次なる作品のための取材旅行、それを作家さんは業務出張と言うんだそうだ。つまり、旅が仕事でもあると言うことか。

高倉健、最後の主演映画「あなたへ」で、主人公の高倉健は死んだ妻の思いを捜して旅をしていた。その途中で様々な旅人に出会うんだけど、その中に、実演販売の旅を続ける田宮という男がいた。草薙剛が演じていた。明るく調子の良い男に見えた田宮が、酔って語るのは、田宮が留守の自宅で妻が浮気を繰り返していると言うこと。それをはっきりさせるのが怖くて実演販売の出張を続けていると言うことだった。彼の旅は、とても悲しかった。




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様々な職業を経て直木賞作家になった山本一力氏が、旅を通して学んだ人生論
第一部 もの想う旅人
日本にて
日本とアメリカー比べてみれば
アメリカにて
台湾・中国・香港にて
第二部 ドライブ道すがら


山本一力さんの本は、実はあまり呼んだことがない。もともと、それほどたくさんの本を読む方ではないし、幅も狭い。そんな私でも、山本さんの『ジョン・マン』は読んだ。あそこに描き出されていたアメリカは、この本に出てくる取材旅行、作家さんにとっての業務出張の成果だったわけだ。

作家さんは自分の作品の中に、旅を再現できるんだな。創造的な仕事だ。

本書の中に、《深き香》と名付けたエッセイがある。著者が、アメリカで創業された世界最古の一つとされる紳士服販売店を訪れるものである。店の重厚な雰囲気に、“気後れせぬよう、腹筋を硬くして入店した”とあるが、その時点ですでに気後れは隠せない。

年配の店員が、やはりアメリカらしくというべきか、一見客のアジア人にもフランクに接してくるそうだ。客の体形を見て店員が持ってきた数着を持って先に進むと、仕立て職人が待っている。仕立て職人は一週間後の仕上がりを約束して仕事に入る。

店員も仕立て職人も、年季の入ったプロは、相手にかかわらず決して客を粗雑に扱わない。

そんな店が、おそらく『ジョン・マン』の時代からあったんだろう。・・・もしかしたら、この紳士服屋、『ジョン・マン』の中にも登場しているのか。いい加減な読み方をしている私が、それを記憶にとどめることが出来なかっただけかもしれない。

著者はこのエッセイを、「いかに速きことを求められても、ひとが成熟するには相応の時間が必要だ」とまとめる。“成熟には時間が必要”とはいうものの、私はすでに十分な時間が与えられた者。

その十分な時間のなれの果てが今の私。

結局、私は、いくつかの後悔を抱えて旅に出ようとしている。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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