イラン情勢『大局を読む』 長谷川慶太郎
中東情勢が風雲急を告げる雰囲気になっている。
もちろん、イラクはバグダッドの国際空港で現地時間3日未明に、米軍ヘリの空爆によってイラク革命防衛隊の精鋭コッズ部隊の司令官カセム・ソレイマニが殺害されたことに端を発する。(報道によってはドローンから発射されたロケット弾とも)
トランプ大統領は、ソレイマニが多くのアメリカ人の殺害に関わり、さらに多くの殺害を企てていたと、アメリカ人を守るための防衛的な措置であったと発表した。ソレイマニはたしかにこの時、イラクの民兵組織と接触していたが、やはり事件は唐突に感じられる。敵対する国歌であるとは言え、実際に戦争をしているわけでもない外国の要人を米軍の力でもって殺害したんだから、これは宣戦布告なき戦争と言われても仕方がない。
ソレイマニ司令官というのはイランの英雄だったそうだ。故郷で行われた葬儀は数万人の人々であふれかえり、混雑から将棋倒しが起こり、少なくとも56人が押しつぶされて死んでしまったそうだ。
1980年代のイラン・イラク戦争で名をあげたと言うことなので、ずいぶん年季の入った英雄と言うことになる。彼が司令官を務めたコッズ部隊というのは、対外工作を行い精鋭部隊ということなのだが、シーア派民兵組織をイラクで訓練することも仕事にしていたようだ。
アメリカにとって危険な人物であったことはたしかなようだ。
彼について、面白い記事があった。葬儀の様子を伝えるロイターの記事なんだけど、『過激派組織イスラム国「IS」掃討に尽力してきたソレイマニ司令官は、宗教指導者を支援しない人々の間でも英雄視されていたとされる』というものだ。
https://jp.reuters.com/article/iraq-security-idJPKBN1Z62OC
なにか、ソレイマニとハメネイの間に齟齬があったことを匂わせているように受け取れる。
他では、ハメネイは遺体を前に、涙で声を詰まらせながら祈りをあげた様子が報道されている。ヒズボラやフーシ派を含め、様々な角度からアメリカへの報復、アメリカからの報復への報復が宣言されているんだけど、ハメネイはどうか。


「抵抗のジハード(聖戦)が2倍の意思で続く」とか、たしかに怖いことも言っている。だけど、周辺の連中が言ってることに比べれば、抽象的なんだ。しかも、イラン政府はこの騒ぎの中で、欧米など6カ国と結んだ核合意にとらわれず、無制限にウラン濃縮を進めていく方針を表明してる。一方、IAEA(国際原子力機関)とはこれまで通り協力するほか、アメリカが制裁を解除すれば核合意を履行するなんてことも言っている。
どうも、この司令官殺害も交渉の材料の一つってことが感じられなくもないんだな。
そう言えば去年の6月、安倍首相がイランを訪問し、ハメネイにあっている。安倍首相はアメリカとの対話を促し、ハメネイがそれを受け入れるはずもないんだけど、安倍首相の誠実と善意には感謝を表明した。そのとき、「核兵器に関しては、製造も保有も使用もしない」と明言してる。
長谷川慶太郎さんはこれを大きく評価している。
このとき、もう一つ大きな出来事が起こっていて、ホルムズ海峡近くのオマーン湾で、日本のタンカーが攻撃を受けて炎上した。やったのはイランの革命防衛隊だ。大きな被害ではないし、犠牲者もなかったが、ロウハニ、ハメネイと続けざまに会談を行った安倍首相は顔に泥を塗られたことになる。
長谷川さんのおっしゃるには、イラン軍はイラン政府の統制下にあり、革命防衛隊は最高権力者であるハメネイの統制下にあるんだそうだ。そのハメネイが安倍首相と会談しているときに日本のタンカーが攻撃されたのだから、革命防衛隊に対するハメネイのコントロールが効いていないと言うことになると言うんだ。
そこで引っかかるのが、『宗教指導者を支援しない人々の間でも英雄視されていたとされる』というロイターの報道だ。
日本のタンカーが攻撃されたとき、ヘメネイは思いもよらないことに苦虫をかみつぶしたような気分だったはずだ。その怒りは、誰に向けられたものだっただろうか。
そのあたり考えると、もしかしたら今回の事件、奥が深いかもしれない。
*8日に書いた記事なんだけど、この記事をブログで流すのは、週末か、来週初めにしようと思ってる。8日のニュースで、イランが、イラクの米軍駐留基地にミサイル攻撃をしたそうだ。この記事を流すときには新たな展開が始まっているかも。・・・あんまり悪い方に行きませんように。
*今、大相撲初場所二日目で、遠藤が、恥ずかしげもなく汚い相撲を取る白鳳に勝った。
もちろん、イラクはバグダッドの国際空港で現地時間3日未明に、米軍ヘリの空爆によってイラク革命防衛隊の精鋭コッズ部隊の司令官カセム・ソレイマニが殺害されたことに端を発する。(報道によってはドローンから発射されたロケット弾とも)
トランプ大統領は、ソレイマニが多くのアメリカ人の殺害に関わり、さらに多くの殺害を企てていたと、アメリカ人を守るための防衛的な措置であったと発表した。ソレイマニはたしかにこの時、イラクの民兵組織と接触していたが、やはり事件は唐突に感じられる。敵対する国歌であるとは言え、実際に戦争をしているわけでもない外国の要人を米軍の力でもって殺害したんだから、これは宣戦布告なき戦争と言われても仕方がない。
ソレイマニ司令官というのはイランの英雄だったそうだ。故郷で行われた葬儀は数万人の人々であふれかえり、混雑から将棋倒しが起こり、少なくとも56人が押しつぶされて死んでしまったそうだ。
1980年代のイラン・イラク戦争で名をあげたと言うことなので、ずいぶん年季の入った英雄と言うことになる。彼が司令官を務めたコッズ部隊というのは、対外工作を行い精鋭部隊ということなのだが、シーア派民兵組織をイラクで訓練することも仕事にしていたようだ。
アメリカにとって危険な人物であったことはたしかなようだ。
彼について、面白い記事があった。葬儀の様子を伝えるロイターの記事なんだけど、『過激派組織イスラム国「IS」掃討に尽力してきたソレイマニ司令官は、宗教指導者を支援しない人々の間でも英雄視されていたとされる』というものだ。
https://jp.reuters.com/article/iraq-security-idJPKBN1Z62OC
なにか、ソレイマニとハメネイの間に齟齬があったことを匂わせているように受け取れる。
他では、ハメネイは遺体を前に、涙で声を詰まらせながら祈りをあげた様子が報道されている。ヒズボラやフーシ派を含め、様々な角度からアメリカへの報復、アメリカからの報復への報復が宣言されているんだけど、ハメネイはどうか。
『大局を読む』 長谷川慶太郎 徳間書店 ¥ 1,760 ソ連邦の崩壊や日本はデフレからは脱却できないとすでに20年前に喝破 |
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「抵抗のジハード(聖戦)が2倍の意思で続く」とか、たしかに怖いことも言っている。だけど、周辺の連中が言ってることに比べれば、抽象的なんだ。しかも、イラン政府はこの騒ぎの中で、欧米など6カ国と結んだ核合意にとらわれず、無制限にウラン濃縮を進めていく方針を表明してる。一方、IAEA(国際原子力機関)とはこれまで通り協力するほか、アメリカが制裁を解除すれば核合意を履行するなんてことも言っている。
どうも、この司令官殺害も交渉の材料の一つってことが感じられなくもないんだな。
そう言えば去年の6月、安倍首相がイランを訪問し、ハメネイにあっている。安倍首相はアメリカとの対話を促し、ハメネイがそれを受け入れるはずもないんだけど、安倍首相の誠実と善意には感謝を表明した。そのとき、「核兵器に関しては、製造も保有も使用もしない」と明言してる。
長谷川慶太郎さんはこれを大きく評価している。
このとき、もう一つ大きな出来事が起こっていて、ホルムズ海峡近くのオマーン湾で、日本のタンカーが攻撃を受けて炎上した。やったのはイランの革命防衛隊だ。大きな被害ではないし、犠牲者もなかったが、ロウハニ、ハメネイと続けざまに会談を行った安倍首相は顔に泥を塗られたことになる。
長谷川さんのおっしゃるには、イラン軍はイラン政府の統制下にあり、革命防衛隊は最高権力者であるハメネイの統制下にあるんだそうだ。そのハメネイが安倍首相と会談しているときに日本のタンカーが攻撃されたのだから、革命防衛隊に対するハメネイのコントロールが効いていないと言うことになると言うんだ。
そこで引っかかるのが、『宗教指導者を支援しない人々の間でも英雄視されていたとされる』というロイターの報道だ。
日本のタンカーが攻撃されたとき、ヘメネイは思いもよらないことに苦虫をかみつぶしたような気分だったはずだ。その怒りは、誰に向けられたものだっただろうか。
そのあたり考えると、もしかしたら今回の事件、奥が深いかもしれない。
*8日に書いた記事なんだけど、この記事をブログで流すのは、週末か、来週初めにしようと思ってる。8日のニュースで、イランが、イラクの米軍駐留基地にミサイル攻撃をしたそうだ。この記事を流すときには新たな展開が始まっているかも。・・・あんまり悪い方に行きませんように。
*今、大相撲初場所二日目で、遠藤が、恥ずかしげもなく汚い相撲を取る白鳳に勝った。

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