めんどくせぇことばかり 『鉄の楽園』 楡周平
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『鉄の楽園』 楡周平

閉塞感という言葉がある。

今の日本社会に閉塞感を感じている人は、ずいぶんたくさんいるだろう。逆は開放感という言葉になるか。いや、閉じ込められているわけではない。閉じ込められているなら、閉じ込めている何者かを標的にすればいい。閉じ込められているわけではないのに、気持ちが晴れ晴れとせず、心が塞がりがちなのだ。

少子高齢化。経済成長を続ける“中国”はじめアジア諸国の活気から取り残されて、消費が伸びず低迷する経済。東京一極集中はますます進み、空洞化する地方。そのいずれもが、現実に、まさに私の目に見えていることだ。

たかだか50軒足らずの自治会で、この1年で3軒が空き家になった。いずれも高齢の方のお宅だが、亡くなるか、子どもに引き取られて去って行った。最近はやりの商法は、住宅にしろ、車にしろ、いいものを得るためにお金を使わせるのではなく、お金を使わない方法を模索したものばかりだ。山から下りてくる途中、最初に目にするのは、人の住まなくなった寂しい集落だ。

抜け出す道もない。これで閉塞感を持たないのはまれに見る成功者か、よっぽどの変わり者か。どちらにしても、ろくなもんじゃない。

でも、意外と簡単に、この閉塞感から解放される道もある。ないようである。

歳を取ることを由とする。よく働いた手を由とする。顔や手のしわに刻まれた年月を由とする。なんとか食べていけるだけのものがあることを由とする。次の世代に受け継がれていくことを由とする。テレビから流れてくるコマーシャルとは逆のことを由とする。

今の世が気にくわないといっても無駄だから、せめてこれから死ぬまでの間の生き様で表現しようと決意する。意外と簡単なことなんだけど、配偶者には、きっと反対される。

さて、楡周平さんの『鉄の楽園』という本。楡周平さんを追いかけているわけじゃないんだけど、ちょっと前にも一冊読んでる。『和僑』という本。その前にも『プラチナタウン』って本を読んでる。


『鉄の楽園』    楡周平


新潮社  ¥ 1,980

R国の高速鉄道受注に向け、中国の莫大な資金力に劣勢を強いられる日本企業
再生の鍵は「ソフトパワー×専門職大学」日本流観光列車で中国から覇権を奪還せよ! 東南アジアのR国の高速鉄道建設に向け、中国と熾烈な受注競争を繰り広げる四葉商事。一方、経営破綻寸前の海東学園に突如、中国企業への身売り話が舞い込む。打倒中国――。四葉と海東の想いは合致し、経産省を巻き込んだ世界初・鉄道専門大学の実現に向け奔走するのだが……。鉄道産業を予見する、痛快経済エンタメ小説。



これはたまたまなんだけど、『プラチナタウン』と『和僑』はいずれも閉塞感の中にある地方都市の再生をテーマにしたもの。『和僑』は『プラチナタウン』の続編というような立場の本だからテーマが重なるのは当然なんだけど、『鉄の楽園』もまた、地方都市の再生というテーマに日本経済の再生をつけ加えれば、同じ枠の中に当てはまる。

鉄は鉄道の鉄。一つの舞台は北海道、太平洋を臨む町にある鉄道専門学校。かつては多くの人材を輩出した学校も、地方経済の不振によるローカル線の廃線や少子化による定員割れで、経営難にあえいでいた。そんな中、リゾート開発をもくろむ“中国”企業による学校買収の話が持ち上がる。メインバンクである北海銀行は、経営者の相川隆明に即時売却を進める。隆明は、相川家長女千里の夫であった。

もう一つの舞台は、商社の中でも日本最大手の一つ四葉商事。折しも、東南アジアはR国の高速鉄道建設にかかわる“中国”と受注競争が行なわれていた。それに関わる若手社員の一人に相川翔平がいた。彼は学校経営を受け継ぐことを強く求める父に反発し家を出た。そのまま勘当の身となっていた。

“中国”の金満攻勢に劣勢が続く受注競争に、一筋の光明が差し込んだ。R国の王族の血を引き、国の将来を憂え、教育に力を注いで多くの尊敬を集めるキャサリン・チャンが次期首相選に意欲を見せているという。

先ほど、『和僑』のときに書いたブログを見直したら、《「都合のよすぎる話の展開」というなかれ。実際の人生も、けっこう都合よくできていることもある。》とある。

同じことを、もう一度言おう。ただし、その都合の良さというのは、求めなければ見つからないものだ。見つけたければ、求めることが必要だ。

最後に、《経済再生》と言われるが、一帯どの時点に再生しようとするのだろう。その時が良くて、今が悪いという根拠はなんだ。

一昨年の3月下旬、すでに桜が咲き始めていた頃、孫を連れて埼玉県の熊谷から長瀞まで、汽車に乗っていった。車窓から、鉄道沿いの様々なところに鉄男や鉄子が群がっていた。春の日差しの中で、彼らは喜びに輝いて見えた。





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ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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