『ヤマンタカ 大菩薩峠血風録』 夢枕獏
この間、古本屋さんで買ってきた。

戦いの書き方が、夢枕獏さんはうまいね。
ずいぶん前、まだ脚の手術をする前だな。『東天の獅子 天の巻』(全4巻)っていうのを読んだ。面白かったなー。明治維新後、柔術が柔道に生まれ変わっていく過程とそこに居合わせた武人たち、講道館四天王の葛藤と成長を中心に綴った物語。
明治時代という、生まれ変わった若さに満ちた時代。武道の世界も生まれ変わらなければならなかった。この時代の葛藤っていうのは、本当、エネルギーを生み出すマグマだまりっていうか、溶鉱炉というか、そういう力を感じる。ある意味では、とてもうらやましい時代でもある。
夢枕さんを追いかけて読んでるわけじゃないので、それ以外の格闘者は読んでないんだけど、『東天の獅子』の格闘シーンっていうのは、やっぱり『ヤマンタカ』の格闘シーンに通じるものがある。
『ヤマンタカ』の中の格闘シーン、・・・格闘シーンというか、机竜之介によって人が命を奪われていく様子の書き方がすごいんだ。
それを読むと、まるで、机竜之介の振るった剣が、自分の体に入ってきて、知らず知らず意識が遠のき、自分が生を放棄していくかのような感覚になるんだ。



中でも、《巻の一 大菩薩峠》で、なんの落ち度もない老巡礼が、たまたまであった机竜之介に、大菩薩峠で切られる。巡礼の死はあまりにも唐突で、無意味で、それだけに絶望的だ。
ところが、・・・だ。
意味もなく切られる老巡礼が、ある意味ではそれを受け入れているのだ。その描写は強烈でさえある。そのシーンは23ページに出てくる。
私は、そこで持って行かれた。後は一気読みだ。
実は、私は『大菩薩峠』という本を読んでない。ずいぶん長い話だそうだ。夢枕さんも冒頭部分くらいで全部は読んでないそうだ。
この小説の題名は『ヤマンタカ』だが、これは『宮本武蔵』が『バガボンド』に再構成されたように、『大菩薩峠』が『ヤマンタカ』二再構成されたもののようだ。“ヤマンタカ”とは、大威徳明王、「閻魔を殺すもの」という恐ろしい意味を持つ密教界最強の尊神だそうだ。
昨年の9月、大菩薩峠に行った。
昨年9月、大菩薩峠から取った富士山。青梅街道を小菅に抜けて、大菩薩峠を目指した。おそらく、この本の中で机竜之介や土方歳三が通った路と同じ。
途中、急斜面の細い巻き道を進むようなところもある。これが甲州裏街道といわれる道だったんだな。秋、また歩いてみたいな。・・・机竜之介が歩いた道だと承知の上で。
いや、もともとは2016年に出た本なんだけど、文庫本は出たばっかり。私が古本屋で買ってきたのは右の、2016年の本。556ページの分厚い本だから、少しずつゆっくり読もうと思ってたんだけど、あんまり面白くって、結局一気に読んでしまった。 |
戦いの書き方が、夢枕獏さんはうまいね。
ずいぶん前、まだ脚の手術をする前だな。『東天の獅子 天の巻』(全4巻)っていうのを読んだ。面白かったなー。明治維新後、柔術が柔道に生まれ変わっていく過程とそこに居合わせた武人たち、講道館四天王の葛藤と成長を中心に綴った物語。
明治時代という、生まれ変わった若さに満ちた時代。武道の世界も生まれ変わらなければならなかった。この時代の葛藤っていうのは、本当、エネルギーを生み出すマグマだまりっていうか、溶鉱炉というか、そういう力を感じる。ある意味では、とてもうらやましい時代でもある。
夢枕さんを追いかけて読んでるわけじゃないので、それ以外の格闘者は読んでないんだけど、『東天の獅子』の格闘シーンっていうのは、やっぱり『ヤマンタカ』の格闘シーンに通じるものがある。
『ヤマンタカ』の中の格闘シーン、・・・格闘シーンというか、机竜之介によって人が命を奪われていく様子の書き方がすごいんだ。
それを読むと、まるで、机竜之介の振るった剣が、自分の体に入ってきて、知らず知らず意識が遠のき、自分が生を放棄していくかのような感覚になるんだ。
『ヤマンタカ 大菩薩峠血風録』 夢枕獏 角川文庫 上下巻共 ¥ 968 人間の欲望や本能を突き付けられる、熱き剣豪小説。 |
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中でも、《巻の一 大菩薩峠》で、なんの落ち度もない老巡礼が、たまたまであった机竜之介に、大菩薩峠で切られる。巡礼の死はあまりにも唐突で、無意味で、それだけに絶望的だ。
ところが、・・・だ。
意味もなく切られる老巡礼が、ある意味ではそれを受け入れているのだ。その描写は強烈でさえある。そのシーンは23ページに出てくる。
私は、そこで持って行かれた。後は一気読みだ。
実は、私は『大菩薩峠』という本を読んでない。ずいぶん長い話だそうだ。夢枕さんも冒頭部分くらいで全部は読んでないそうだ。
この小説の題名は『ヤマンタカ』だが、これは『宮本武蔵』が『バガボンド』に再構成されたように、『大菩薩峠』が『ヤマンタカ』二再構成されたもののようだ。“ヤマンタカ”とは、大威徳明王、「閻魔を殺すもの」という恐ろしい意味を持つ密教界最強の尊神だそうだ。
昨年の9月、大菩薩峠に行った。

昨年9月、大菩薩峠から取った富士山。青梅街道を小菅に抜けて、大菩薩峠を目指した。おそらく、この本の中で机竜之介や土方歳三が通った路と同じ。
途中、急斜面の細い巻き道を進むようなところもある。これが甲州裏街道といわれる道だったんだな。秋、また歩いてみたいな。・・・机竜之介が歩いた道だと承知の上で。

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