めんどくせぇことばかり 『すらすら読める徒然草』 中野孝次
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『すらすら読める徒然草』 中野孝次

2月2日の日曜日にこれを書いている。山に行く予定だったんだけど、起きてみたら、その気持ちが消えていた。

夕べのこと。

全ての準備を終えて、テレビで夜のニュースでも見て、そろそろ寝ようかと思ったときに、アナウンサーさんに言われて気がついた。昨日は土曜日、今日は日曜日。

基本的に山に行くとは平日と考えていて、土日は家で静かにしている。場合によっては孫が来るかもしれないし。何より山にはたくさん人がいる。かたくなに人を避けようというわけでもないんだけど、平日にも行けるんだから、何も土日に行かなくったっていい。

だけど準備も整え、おむすび用に、ご飯も一合多めに炊いてもらうことになってる。それを今さら、・・・就寝・・・

朝起きたら、山に行こうという意欲が消えていた。

《つれづれなるままに、日ぐらし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ》

高校の国語でやったんだろうな。そうか、“古典”という授業があったか。古典の授業で出てきたんだな、きっと。当時の私は、好きな授業とそうでない授業を極端に分けて考えているところがあってね。好きなのは体育と世界史。この二つの教科が5で、ぼーっとしててもなんとか3をつけてもらえる教科と、ぼーっとしていると赤点つけられるから間合いだけ見きって2を取ってた教科。間合いを読み間違えて赤点に落ちた教科も、実はあった。

古典は、“それ以外”の授業。おそらくぼーっとしていても3をつけてもらえる授業。にもかかわらず、徒然草の冒頭は、まあ常識といえば常識かもしれないけど、簡単にすらすら出てくる。

《花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかわ。雨に向かいてつきを恋い、垂れこめて春のゆくへ知らぬも、なほあはれに情深し。咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ》

どうやら教科書に載っていたのは、この第百三十七段だったようで、古典を得意としていたわけでもないのに、すらすら言葉が出てきた。この言葉の「トトトトトトト トトトトトトトト トトトトトト」っていうリズムが、体のどこかに残っていたかのよう。

少しずつ朝が早く、暮れるのが遅くなりつつあるのを、最近感じるようになっていた。立春を過ぎ、その感はさらに顕著になっていくだろう。そう思うだけで、心が浮き立つ。見るまでもなく、心には花が浮かぶ。ものの感じ方は、今の日本人と同じ。700年という歳月を隔てているなんてまるで感じさせない。そういうところにも、「日本人っていうのは、途切れていないんだな」ってことを感じてしまう。





講談社文庫  ¥ 671

古典の文言なのか、わが言葉なのか、区別がつかないくらいになり、わが生を導く
1 世俗譚
2 しばらく楽しぶ
3 なんとなくいい話
4 生死
5 名人
6 シンプル・ライフ
7 一事に専念せよ
8 心のふしぎ
9 よき趣味、悪しき趣味
10 美とは何か
11 ありがたい話
12 実践的教訓


《いまだまことの道を知らずとも、縁を離れて身を閑かにし、事にあづからずして心を安くせんこそ、しばらく楽しぶとも言ひつべけれ。「生活・伎能・学問等の諸縁を止めよ」と摩訶止観にも侍れ(第七十五段)》なんていうのは、まさに今の自分のことを言い表しているかのよう。

吉田兼好の時代ほどには、今の時代、仏教は人生の通奏低音になっているわけじゃない。“まことの道”というのは、もちろん仏の道のことなんだろうけど、言葉通りの“まことの道”と捉えても、徒然草が基調としているという《死の来ることの迅速さという認識》には変わりはない。

その認識というのがすごいんだ。

《生・老・病・死の移り来ること、また、これに過ぎたり。四季はなほ定まれる序あり。死期は序を待たず。死は前よりしも来たらず。かねてうしろに迫れり。人みな死あることを知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来る。沖の干潟はるかなれども、磯より潮満つるがごとし》

「死は春夏秋冬のように順番に来るわけじゃない。順番なんかかまわずに急に来る」って言うのはまだいい。「前からやってくるとは限らない。知らないうちに後ろから忍び寄る」ってなると、もう怖い。「死ぬのは分かってるけどまだだろうと思ってると急に来る」となると、ほとんど嫌がらせ。「沖の干潟は変わらないのに足下から潮が満ちてくるように来る」となると闇討ちに近い。

そんな死を前にして、いつまでも世間との縁につながって、「70歳までは働けよ」という働き方改革は、なんて非道な話だろう。

私は早々やめちゃったけどね。

第一段から順番に読んでいくっていうっていうんじゃない。中野孝次さんの解説付きで、目次のテーマに沿って編集されている。とても読みやすかった。

徒然草を一冊買っといて、手近において、一段ずつ、気が向いたときに読んでみるのもいいかもしれない。




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ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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