めんどくせぇことばかり 『いま、幸せかい?』 滝口悠生
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『いま、幸せかい?』 滝口悠生

この季節、すでに高校の教員の人事は決まっている。

それが教員に伝えられるのは、2月の後半だけどね。それぞれの学校のカリキュラム、・・・授業の編成ね。それがあって、学科やコース、選択科目ごとの生徒数は合わせて必要となる教員数が割り出されて、教員だけじゃ埋め切れない部分を常勤講師を振り分けて、それでも足りないところに時間講師を当てていく。

今日、私のところにも、時間講師の依頼が来た。元の上司、校長先生から。今は退職されて、それでも教育に携わる仕事をしているらしい。早期退職をして山をほっつき歩いている私とは、違うタイプの方だ。火曜日の午前中4時間と土曜日に2時間、授業をやってくれないかって。

もちろん、丁重にお断りした。

若い頃は、もう、身につまされちゃって、寅さんを正視できないようなところもあった。そんなときは映画館でも頭を下げちゃってね。音だけ聞いてたりした。だけど、歳を取るってのは良いことだね。どんな寅さんでも、全部受け入れられるよ。

とある本で、つい最近、紹介されているのを読んだんだ。スウェーデンの映画監督イングマール・ベイルマンの言葉。

「老年は山登りに似ている。登れば登るほど息切れするが、視野はますます広くなる」

ああ、もっと高いところまで登りたい。
この本でも紹介されている話を一つ。『寅次郎サラダ記念日』は好きだな。三田佳子がマドンナだった。三田寛子がその姪の役で出ていて、かわいかった。その中で、大学進学に悩む満男が寅さんに聞くんだ。

「なんのために勉強すんのかな?」

それに、寅さんはこう答える。

「ほら、人間長いあいだ生きてりゃいろいろなことにぶつかるだろう、な。そんな時に俺みてえに勉強していないやつは、この振ったサイコロで出た目で決めるとか、その時の気分で決めるよりしょうがない、な。ところが、勉強したやつは、自分の頭でキチンと筋道をたてて、はて、こういう時はどうしたらいいかなと考えることができるんだ。だからみんな大学へ行くんじゃないか。だろう?・・・久し振りにきちんとしたこと考えたら頭痛くなっちゃった」

元上司の校長先生に、丁重ではなく、本心でお断りするとしたら、こう言うだろう。

「俺はね、筋道立てて考えるんじゃなくて、サイコロを振って出た目で生きていきたいんですよ」





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新作「男はつらいよ お帰り 寅さん」に合わせて刊行する読む、名場面集
第1章 家族について
第2章 世ちがらい浮世について
第3章 恋愛について
第4章 女性の生き方について
第5章 旅と渡世のこと
第6章 みんなが語る寅さん
第7章 満男へのメッセージ


シリーズ第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』の封切りに合わせて、それを記念して出された本。読む名場面集だな。

なんといっても、新作手前ですでに49作のシリーズだからね。この中から名場面を選ぶったって大変なのに、文字に起こすにあたっては、結局は名ゼリフ集になるわけだからね。寅さんのセリフを全部再吟味するってなると、これは大変。

それをやったのは滝口悠生さん。主夫として家事一切を担当する若い作家さんのようだ。全作品の完成台本を読み通して、そこから選んでいったんだそうだ。まずは500ほどピックアップして、最終的には150ほどに絞り込んだんだとか。

実はこの本を読むよりも前に、シリーズ第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』を見たんだ。坂戸の映画館で。見終わって最初に思ったのは、もうこれで見終わってしまったという思いだった。しばらく立ち上がれなかったよ。そういうやつが、映画館には何人もいたよ。この新作には、第1作から第49作までの全部が詰まっているような気がした。

文字通り、この本もそうだ。ただ、この本には足りないものがある。“お帰り 寅さん”が、この本には入っていないんだ。

BSテレビ東京が《土曜は寅さん》を二回しくらいしてくれたから、とりあえず全部録画した。だけど、もしテレビ東京が、もう一度《土曜は寅さん》を回してくれれば、頭から全部見直すんだけどな。週に一度っていうのは、寅さんを見るペースにしては、非常に良いと思うんだ。

第29作『男はつらいよ あじさいの花』をどこだったか、場末の映画館で見たいたとき、面白いことが起こった。寅さんの寝床に忍んでいったいしだあゆみに、寝ていた寅さんが気づいてドギマギしているときだ。

「寅、やっちまえ」って声がかかったんだ。そうしたら、もう一声が飛んだ。「馬鹿野郎、寅はやらねえ」

『男はつらいよ』全50作。日本の偉大な財産だな。







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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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