『おにぎりの本』 Onigiri Japan
子どものころは、「むすび」と呼んでた。休みの日に遠出して遊びに行くときなんか、「むすび作って」と母親に頼んでた。そうすると、ずいぶん早い時間に出かけようと起きだしても、「むすび作っといたで」と、もっと早起きな母から渡された。
そのころは、“お”をつけて「おむすび」ということさえ、どっか面はゆい感じがした。それが「おにぎり」になった日には、とても私なんぞが食っていいもんじゃないように感じてた。
「おむすび」と「おにぎり」
地域性であるとか、形であるとか、由来であるとか、もしかしたら、もともとはそういった違いがあるのかもしれない。例えば地域性ということで言えば、日本の多くがおにぎりで、関東地方から東海道にかけてがおむすびだとか。
自分が関東地方の人間でむすびと呼んでいたことには符合するが、すでに私が幼いころであっても、なんだか思い出しただけで切なくなってしまう同級生の由美ちゃんは、それをおにぎりと呼んでいた。
結局、今は、おむすびと呼ぼうが、おにぎりと呼ぼうが、どっちでも構わないというのが、唯一の正解であるようだ。
母の作るむすびは、塩で握ったむすびに梅を入れて海苔で巻いたもの。本当jに、むすびというと私の頭にはそれしか出てこない。周りの人間におにぎりと呼ぶ者が多いために、・・・たとえば、自分の連れ合いのようにね。そう呼ぶ人間が多いので、私もついついおにぎりと、顔を赤らめながら呼んだりしている。
だけど、塩で握ったむすびに梅干しを入れて海苔で巻いたやつは、やっぱりむすびだな。
もちろん、梅干しはしょっぱいやつね。最近、スーパーで売ってるのは調味梅干しばっかりで、あれじゃあだめ。だから、梅干しは越生の梅まつりに行って買うの。
そういや、もうすぐ梅まつりが始まるな。
そうそう、最近、越生梅林の近くにあるオクムサ・マルシェってカフェがあったんだ。この間、大築山から下りてきた時に見た。そこで売り出した奥武蔵ロールケーキっていうのが、最近話題になってるらしいぞ。


そんなロールケーキの話はどうでもいい。この本は、『おにぎりの本』。
まずは、“おいしいご飯の炊き方”から始まっちゃうんだから、そりゃ間違いなく本気の本。しかもそのあとに来るのが何かというと、「ちゃんと手をきれいに洗いましょう」って言うんだから。
三角型、丸型、円盤型、俵型と形状が紹介されてるけど、母のは円盤だったな。
“塩へのこだわり”、“海苔へのこだわり”、“米へのこだわり”と続いていくんだけど、言ってることは間違いなんだけどね。何よりも大事なことが抜けている。思いっきり遊んでから食べるとか、一生懸命仕事をしてから食べるってこと。
むすびは、料理か?
料理に分類されるものではあるだろうけど、なんか違うんだな。なかでも、私がむすびと呼ぶ食い物は、料理じゃない。あれは、母の愛情だ。「今日も頑張ってよく遊んで来いよ」って言うね。
次に紹介されてるご当地おにぎりの中では北海道の“鮭山漬けおにぎり”、愛媛の“鯛めしおにぎり”が、いかにもご当地っぽくっていい。さらに具財別おにぎりはいずれも興味深い。梅干しのおにぎりだって、梅干しを中に入れるだけじゃなくて、梅肉と刻んだ大葉を混ぜてみたりね。塩昆布と野沢菜、これもうまそう。私は、塩昆布とセロリを合わせたのをご飯に混ぜ込んだりする。これもうまいよ。
そこからは各種の工夫おにぎり。まあ、どれもうまそうなこと。
まったく、おにぎりも、もっともっと自由であっていいんだな。
どんなにしたって、日本人のソウルフード。そこには握った人の愛情が一緒に詰まってる。だから、今でも山に行くときは、自分で塩で握ったむすびに梅干しを入れて海苔で巻いたのを作っていく。そして、景色のいいところに座って、それを取り出すんだ。
だけど、まだ食わない。銀紙を広げて、まずは置くな。近くに置いて、一緒に景色を眺めるんだ。腹が減ってるから、早く食いたい。だけど、むすびに景色を見せている間、ほんのちょっと待つ。そうすると、むすびはもっとうまくなる。「なっ、母ちゃん」
さっき、連れ合いに奥武蔵ロールケーキの話をしたんだ。そしたら、早く越生の山に登って来てほしいって。越生の山の帰りにロールケーキを買って来てってさ。
そのころは、“お”をつけて「おむすび」ということさえ、どっか面はゆい感じがした。それが「おにぎり」になった日には、とても私なんぞが食っていいもんじゃないように感じてた。
「おむすび」と「おにぎり」
地域性であるとか、形であるとか、由来であるとか、もしかしたら、もともとはそういった違いがあるのかもしれない。例えば地域性ということで言えば、日本の多くがおにぎりで、関東地方から東海道にかけてがおむすびだとか。
自分が関東地方の人間でむすびと呼んでいたことには符合するが、すでに私が幼いころであっても、なんだか思い出しただけで切なくなってしまう同級生の由美ちゃんは、それをおにぎりと呼んでいた。
結局、今は、おむすびと呼ぼうが、おにぎりと呼ぼうが、どっちでも構わないというのが、唯一の正解であるようだ。
母の作るむすびは、塩で握ったむすびに梅を入れて海苔で巻いたもの。本当jに、むすびというと私の頭にはそれしか出てこない。周りの人間におにぎりと呼ぶ者が多いために、・・・たとえば、自分の連れ合いのようにね。そう呼ぶ人間が多いので、私もついついおにぎりと、顔を赤らめながら呼んだりしている。
だけど、塩で握ったむすびに梅干しを入れて海苔で巻いたやつは、やっぱりむすびだな。
もちろん、梅干しはしょっぱいやつね。最近、スーパーで売ってるのは調味梅干しばっかりで、あれじゃあだめ。だから、梅干しは越生の梅まつりに行って買うの。
そういや、もうすぐ梅まつりが始まるな。
そうそう、最近、越生梅林の近くにあるオクムサ・マルシェってカフェがあったんだ。この間、大築山から下りてきた時に見た。そこで売り出した奥武蔵ロールケーキっていうのが、最近話題になってるらしいぞ。
『おにぎりの本』 Onuguri Japan 辰巳出版 ¥ 1,430 今や世界をも魅了する日本食の原点であるおにぎりの魅力をあますことなく |
|
そんなロールケーキの話はどうでもいい。この本は、『おにぎりの本』。
まずは、“おいしいご飯の炊き方”から始まっちゃうんだから、そりゃ間違いなく本気の本。しかもそのあとに来るのが何かというと、「ちゃんと手をきれいに洗いましょう」って言うんだから。
三角型、丸型、円盤型、俵型と形状が紹介されてるけど、母のは円盤だったな。
“塩へのこだわり”、“海苔へのこだわり”、“米へのこだわり”と続いていくんだけど、言ってることは間違いなんだけどね。何よりも大事なことが抜けている。思いっきり遊んでから食べるとか、一生懸命仕事をしてから食べるってこと。
むすびは、料理か?
料理に分類されるものではあるだろうけど、なんか違うんだな。なかでも、私がむすびと呼ぶ食い物は、料理じゃない。あれは、母の愛情だ。「今日も頑張ってよく遊んで来いよ」って言うね。
次に紹介されてるご当地おにぎりの中では北海道の“鮭山漬けおにぎり”、愛媛の“鯛めしおにぎり”が、いかにもご当地っぽくっていい。さらに具財別おにぎりはいずれも興味深い。梅干しのおにぎりだって、梅干しを中に入れるだけじゃなくて、梅肉と刻んだ大葉を混ぜてみたりね。塩昆布と野沢菜、これもうまそう。私は、塩昆布とセロリを合わせたのをご飯に混ぜ込んだりする。これもうまいよ。
そこからは各種の工夫おにぎり。まあ、どれもうまそうなこと。
まったく、おにぎりも、もっともっと自由であっていいんだな。
どんなにしたって、日本人のソウルフード。そこには握った人の愛情が一緒に詰まってる。だから、今でも山に行くときは、自分で塩で握ったむすびに梅干しを入れて海苔で巻いたのを作っていく。そして、景色のいいところに座って、それを取り出すんだ。
だけど、まだ食わない。銀紙を広げて、まずは置くな。近くに置いて、一緒に景色を眺めるんだ。腹が減ってるから、早く食いたい。だけど、むすびに景色を見せている間、ほんのちょっと待つ。そうすると、むすびはもっとうまくなる。「なっ、母ちゃん」
さっき、連れ合いに奥武蔵ロールケーキの話をしたんだ。そしたら、早く越生の山に登って来てほしいって。越生の山の帰りにロールケーキを買って来てってさ。
- 関連記事
-
- 『このレシピがすごい!』 土屋敦 (2020/03/16)
- 『ほったらかしレシピ』 和田明日香 (2020/03/05)
- 『おにぎりの本』 Onigiri Japan (2020/02/18)
- 『ごはんにかけておいしい。材料2つで炒めもの』 ワタナベマキ (2020/02/16)
- 『休日が楽しみになる昼ごはん』 小田真規子 (2020/01/31)