『美しい日本の詩』 大岡信 谷川俊太郎編
実は今、大阪にいる。・・・もとい、大阪から東京に帰る新幹線の中にいる。
すみません。これは何日か前に書いている。で、22日の17時にアップする設定になってる。その22日17時の時点で、私は大阪から東京に帰る新幹線の中にいるはず。この日、大阪で、息子が結婚式を挙げる。その式を終えて、16時40分大阪発に乗って東京に帰る途中のはず。
この日に決めたと言われたときは、まだずいぶん先の話と思っていたが、年が明けるとあっという間だった気がする。近づいてくると気ばかりが急いて、やらなければいけないことがたくさんあるような気がしたが、実際にはそんなにないんだよね。私の兄弟夫婦や娘家族も大阪に行くので、そのための手配くらいなもの。
そうは言っても、気が急くのは収まらない。気が急いたまま前日の大阪行きと、当日の式を迎え、そしてこの記事がアップされる22日17時。・・・無事に式を終えて、ホッとして、新幹線の中で兄たちとビールでも飲み始めているだろう。・・・いや、いる。・・・と、信じる。
式の最後に、両家を代表して御礼の挨拶をする。いや、・・・した。挨拶するのは、あまり苦手ではない。高校の社会の教員だったから、人前で話をすることが仕事たからね。もちろんどんなことを話すかは準備する。だけど、実際に声に出して話を始めると、授業ってのは水物で、そのクラスの生徒との掛け合いの中からどんどん変化する。
式での挨拶だってそう。もちろん何を話かはしっかり準備する。・・・いや、した。だけど、声に出して話を始めると、式の雰囲気とか出席者の様子によって変化するのが当たり前。そういう程度に準備する。・・・いや、した。
実は10月に親族で集まった。25人ほどになった。最後の挨拶を頼まれていた。準備していたわけじゃないけど、私たち兄弟の父母の話をしようと思っていた。亡くなった父母が、今日きっとこの会場に一緒に来ているだろうと言おうと思っていた。声を出して挨拶をはじめて、それを言おうと思ったら、声が詰まった。
・・・声に出してみないと、分からないこともある。
式の御礼は、気持ちを高ぶらせずに、淡々と挨拶するつもりだ。・・・いや、した。・・・と、信じる。
さてこの本は、『美しい日本の詩』という本。だけど、それだけじゃない。“声でたのしむ”『美しい日本の詩』という本。声に出さなきゃ意味がない。


そういう本であるわけだから、読むのに少々時間がかかった。
声に出さなきゃいけないから。たとえ自分の家にいるからって、和歌、俳句、詩を声に出して読めるわけじゃない。別個の人格を持った連れ合いと一緒に暮らしているわけだからね。彼女が好みのテレビやラジオをかけている時間も少なからずあるし、本を読んでいるときに詩の朗読なんかされたくはないだろう。単純に私の声なんか聞きたくないときがあってもおかしくない。
だから、結局、黙読して、声に出して読んでみたい詩を決めといて、連れ合いが出かけているここぞという時に、その詩を朗読してみたんだ。
文学としてどうかという価値判断は、まったく私には出来ない。ただ、声に出して読んで、心地よかったかどうかだけで考えればいいんだなと、そのくらいの意気込みで、はっきりと、大きな口をあいて、声に出して読んでみた。
ああ、きもちいい。
たしかに気持ちがいい。
“あとがき”は谷川俊太郎さんなんだけど、これらの詩は、声に出して読む、つまり吟ずるのが当たり前だったんだそうだ。体がむずむずして、自然に声に出したくなるのが、他の言葉とは違う詩というものの魅力だったと。さらには、吟ずることで自分も楽しみ、一とも交流する、今でいうカラオケみたいなものだったかも、とまで言っている。
たった100年前まで、それが当たり前のことだったそうだ。
しかし、それ以降、詩は本のページに印刷してあって、ひとりでひそかに黙読するのが常識の文学になってしまった。同時に、声に出して読む気になれない詩、音読してはかえって意味が分からなくなる詩が増えたことも、「詩を黙読する」ことに拍車をかけたそう。
声をなくしたことには、日本の詩歌にとって、得たものも、失ったものもあると言うことのようだ。
和歌、短歌、俳句、詩歌。あえて敬して遠ざけたわけではないが、深入りできなかったのは、勇気を出して吟じてこなかったところにも原因の一端はあったかも。いっそ、声をなくして何かを得た最近の詩歌を見限って、一人カラオケに入り浸って詩歌を吟じるのも、一つの手かもしれない。
すみません。これは何日か前に書いている。で、22日の17時にアップする設定になってる。その22日17時の時点で、私は大阪から東京に帰る新幹線の中にいるはず。この日、大阪で、息子が結婚式を挙げる。その式を終えて、16時40分大阪発に乗って東京に帰る途中のはず。
この日に決めたと言われたときは、まだずいぶん先の話と思っていたが、年が明けるとあっという間だった気がする。近づいてくると気ばかりが急いて、やらなければいけないことがたくさんあるような気がしたが、実際にはそんなにないんだよね。私の兄弟夫婦や娘家族も大阪に行くので、そのための手配くらいなもの。
そうは言っても、気が急くのは収まらない。気が急いたまま前日の大阪行きと、当日の式を迎え、そしてこの記事がアップされる22日17時。・・・無事に式を終えて、ホッとして、新幹線の中で兄たちとビールでも飲み始めているだろう。・・・いや、いる。・・・と、信じる。
式の最後に、両家を代表して御礼の挨拶をする。いや、・・・した。挨拶するのは、あまり苦手ではない。高校の社会の教員だったから、人前で話をすることが仕事たからね。もちろんどんなことを話すかは準備する。だけど、実際に声に出して話を始めると、授業ってのは水物で、そのクラスの生徒との掛け合いの中からどんどん変化する。
式での挨拶だってそう。もちろん何を話かはしっかり準備する。・・・いや、した。だけど、声に出して話を始めると、式の雰囲気とか出席者の様子によって変化するのが当たり前。そういう程度に準備する。・・・いや、した。
実は10月に親族で集まった。25人ほどになった。最後の挨拶を頼まれていた。準備していたわけじゃないけど、私たち兄弟の父母の話をしようと思っていた。亡くなった父母が、今日きっとこの会場に一緒に来ているだろうと言おうと思っていた。声を出して挨拶をはじめて、それを言おうと思ったら、声が詰まった。
・・・声に出してみないと、分からないこともある。
式の御礼は、気持ちを高ぶらせずに、淡々と挨拶するつもりだ。・・・いや、した。・・・と、信じる。
さてこの本は、『美しい日本の詩』という本。だけど、それだけじゃない。“声でたのしむ”『美しい日本の詩』という本。声に出さなきゃ意味がない。
『美しい日本の詩』 大岡信 谷川俊太郎編 岩波文庫 ¥ 1,210 日本語がもつ深い調べと美しいリズムをそなえた珠玉の作品だけを選びました |
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そういう本であるわけだから、読むのに少々時間がかかった。
声に出さなきゃいけないから。たとえ自分の家にいるからって、和歌、俳句、詩を声に出して読めるわけじゃない。別個の人格を持った連れ合いと一緒に暮らしているわけだからね。彼女が好みのテレビやラジオをかけている時間も少なからずあるし、本を読んでいるときに詩の朗読なんかされたくはないだろう。単純に私の声なんか聞きたくないときがあってもおかしくない。
だから、結局、黙読して、声に出して読んでみたい詩を決めといて、連れ合いが出かけているここぞという時に、その詩を朗読してみたんだ。
文学としてどうかという価値判断は、まったく私には出来ない。ただ、声に出して読んで、心地よかったかどうかだけで考えればいいんだなと、そのくらいの意気込みで、はっきりと、大きな口をあいて、声に出して読んでみた。
ああ、きもちいい。
たしかに気持ちがいい。
空のなぎさ 三好達治 いづこよ遠く来りし旅人は 冬枯れし梢のもとにいこいたり 空のなぎさにさしかはす 梢のすゑはしなめきて 煙らひしなひさやさやにささやくこゑす 仰ぎ見つかつはきく遠き音づれ 落葉つみ落葉はつみて あたたかき日ざしのうへに はやここに角ぐむものはむきむきに おのがじし彼らが堅き包みものときほどくなる 路のくま樹下石上に昼の風歩みとどまり 旅人なればおのづから組みし小指にまつはりぬ かくありて今日のゆくてをささんとす小指のすゑに |
“あとがき”は谷川俊太郎さんなんだけど、これらの詩は、声に出して読む、つまり吟ずるのが当たり前だったんだそうだ。体がむずむずして、自然に声に出したくなるのが、他の言葉とは違う詩というものの魅力だったと。さらには、吟ずることで自分も楽しみ、一とも交流する、今でいうカラオケみたいなものだったかも、とまで言っている。
たった100年前まで、それが当たり前のことだったそうだ。
しかし、それ以降、詩は本のページに印刷してあって、ひとりでひそかに黙読するのが常識の文学になってしまった。同時に、声に出して読む気になれない詩、音読してはかえって意味が分からなくなる詩が増えたことも、「詩を黙読する」ことに拍車をかけたそう。
声をなくしたことには、日本の詩歌にとって、得たものも、失ったものもあると言うことのようだ。
和歌、短歌、俳句、詩歌。あえて敬して遠ざけたわけではないが、深入りできなかったのは、勇気を出して吟じてこなかったところにも原因の一端はあったかも。いっそ、声をなくして何かを得た最近の詩歌を見限って、一人カラオケに入り浸って詩歌を吟じるのも、一つの手かもしれない。
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