めんどくせぇことばかり 『どこからお話ししましょうか』 柳家小三治
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『どこからお話ししましょうか』 柳家小三治

一昨日、大阪に行き、昨日、息子の結婚式に参列して、そのまま埼玉まで帰ってきた。いい式だったと、兄たちから言われた。ああ、肩の荷が下りた。・・・と思ってたら、一緒に大阪から帰ってきた娘から、まご1号、2号を一晩預かってくれと、まもなく連れてくるらしい。

昔、山に行くとき、何かの都合で新宿に早く着きすぎて、時間をつぶさなきゃいけないことがあった。

今の自分なら、喫茶店で本でも読んでりゃいいって思えるんだけど、その頃はとにかく田舎者だから、喫茶店なんてところじゃ人の目が気になって落ち付かず、時間が経ちゃあしない。ちょっと前に、兄に連れて行ってもらった落語の小屋を思い出して、記憶を頼りにザックを背負ったままそれを探した。直に見つかった。新宿末廣亭。やってるみたいなので、そこで時間をつぶすことにした。

中に入ると、お客は数えるほどで、何人もいやしない。そんな中で、若い落語家さんが身振り手振りで話をしていた。その落語家さんが、私に気づいた。そしたら、いきなり話の腰を折って、「あっ、お客さんいらっしゃい」って、私に話しかける。数えるほどのお客のすべてが、私の方を振り返る。若い落語家は、さらに手招きして、「こっち、こっっち!」って。

その落語家が、「ここ!こーこ!」と指定した席は、自分の目の前のど真ん中の席。「もう、やだなー」と思いながら、仕方なく隣の席にザックを下ろして、そこに座った。後ろの方から、「落語やらねえのかよ」と声が飛んで、思い出したように続きが語られた。その人の落語が終わったらすぐに、私は目立たないところに席を変えた。

それ以来、中央本線で山に向かうときは、いつも、うんと早めに新宿に着くようにして、末廣亭に行った。

私がよく寄席に行っていた頃は、いつ行ったって、席にはゆとりがあった。ずいぶん間が開いて、娘が大学に入った頃だったろうか、寄席に行ってみたいと言われたことがあって、池袋演芸場に連れて行ったことがある。

私は用心深い性格で、どうせガラガラだろうけど、念のため、昼ごはんを食べて、あまり時間を空けずに中に入った。ガラガラ、・・・どころじゃないじゃん。なにこれ。こんな前座の段階で、なんでこんなに人がいるの?昔なら、仲入り後でも、こんだけ入るかどうかってくらい。しかも、あとからも人が続いて、仲入り過ぎたら立ち見が出ていた。

これじゃあ、ザック担いで、暇つぶしに寄席によるわけにはいきそうもない。




岩波書店  ¥ 1,650

独特の語り口はまさに読む独演会.芸と人生に対する真摯な姿勢が,初めて明らかに
一、父と母のこと
二、野菊の如き君なりき
三、落語と出会う
四、しろうと寄席
五、小さん師匠に入門
六、私の北海道
七、真打昇進
八、うまくやってどうする?
九、東京やなぎ句会―小沢昭一さんと入船亭扇橋さん
十、生き方を変えたバイク
十一、落語研究会
十二、談志さんと志ん朝さん
十三、会長、国法、そして大手術
十四、『青菜』と『厩火事』
十五、弟子たち


柳家小三治さん、傘寿だって。

寄席に行かなくなって久しいせいか、昔よくテレビに出ていたときの、ひょうひょうとした小三治さんの印象が強い。でも、その姿は若々しかった。それが、もう八十歳を超えたのか。

まあ、周囲からは、「晩年を迎えてますます・・・」なんてことを言われてるんだろう。それを本人は、「どうも人の話を聞くと、私は晩年を迎えているらしいんですよ。これからだと思ってるんだけどねえ」と来る。

「これから何やるつもりなんだよ、じじい!」って、返したやりたいところだな。

“うまくやろうとしてはいけない”って話はよく分かる。下手なまんまでいいって話じゃないんだよね。だけど、“うまさ”で人をうならしてやろうとしたって、”うまさ”だけなら、いくらだって替えが聞くんだよね。

小三治の落語もそうだけど、その噺の中に出てくる人物たちは、小三治の口から語られるときだけ生きてるわけじゃない。小三治の口から語られていないときでも、その人物らしく暮らしているんだ。

例えば、八つぁんがご隠居のところで、熊さんのように真面目に働くように小言を言われているとき、熊さんは仕事をほっぽり出して、どこかに遊びに行っちゃってるに違いないんだ。

名人の話を聞くと、話には出てきていなくても、その出来事が展開されている町の様子を、ちゃんと背景にして噺を聞いているみたいなんだ。

私も、人に話を聞かせることを商売にしていた。いろいろと工夫したけど、結局、工夫だけでなんとかなるもんでもないんだよね。もちろん、なんの工夫もしないようじゃ、話にならないけどね。

この本を読んで、自分のみに引き寄せて考えてみた。時間をかけて、こっちが成長すること、相手を思いやれるようになること、そういうことなのかな。

私は仕事辞めたけどね。落語家は、一生、落語家だね。うらやましいような気もするが・・・。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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