めんどくせぇことばかり パソコンと漢字『漢字のいい話』 阿辻哲治
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パソコンと漢字『漢字のいい話』 阿辻哲治

本当に、字を書かなくなった。

字を書いてますか?私はまったく書いてない。先日の息子の結婚式で署名したとき、「いや、久々に字を書くなぁ」と、ちょっと戸惑ってしまったほどだ。その戸惑いが、字を流れさせそうになる。そんなとき、あるでしょう?どうしますか?肩の力を抜いて、指がいつも通り動くように努めますか?

私は逆。肩に力が入ってることに気がついたときはもう遅い。結婚式で後ろに人が並んでるのに、肩回しするわけにもいかない。逆にもっと力を入れて、筆圧を強くして、字を抑え込みます。いい字は書けませんが、おかしな流れ方をするのは押さえ込めます。

文章を作るのはパソコン。字を書くのではなく、キーボードを打つ。必要があればプリントアウトして、人が読めるようにする。漢字も、パソコンが選択する。私はそれに許可を出す。

字を書くことが多かったときは、記憶違いや単純な書き損じで漢字を間違えることがあった。今間違えるのは、パソコンの選択ミスに気づかず、それに許可を出してしまうこと。変換ミスというやつだが、それを許可したことがミスなのに、パソコンに責任を押しつけるような言葉だ。

だけど、記憶違いや書き損じによる漢字間違いは、甚だしいと恥ずかしいばかりだが、“変換ミス”は自分でも笑える。

《破れた紙は買い取ります》→《敗れた神破壊とります》
《おいしい新じゃが》→《おいしい信者が》
《魚市場》→《咲かない千葉》
《はい写真だよ》→《歯医者死んだよ》
《清掃して放下》→《正装して放火》
《友人にも止められた》→《友人に求められた》


『漢字のいい話』    阿辻哲治


新潮文庫  ¥ 649

日本人が日常的に使う表意文字の面白さと奥深さについての考察が満載!
1 漢字を楽しむ
虫歯の漢字学
「みち」の漢字学
「妻」の原点を探れば
象とペリカン――古代中国の動物世界
アイコンとしての漢字
コラム:漢字歳時記
2 文物と遺跡
北京図書館の『説文解字讀』
段玉裁の故郷を訪ねて
皇帝と青銅器――「伝国の儀器」の歴史
悲しい石碑の物語
馬王堆発掘のカラー写真
石刻の発生――人間のものになった文字
コラム:文字の形
3 東アジアの漢字文化
この世に漢字はいくつあるのか
可口可楽・魔術霊・剣橋大学
「上京」「来阪」。では、鹿児島行きは?
国字作成のメカニズム
新常用漢字の新しさ
当節中国漢字事情
漢字簡略化と繁体字の復活
コラム:色っぽい話
4 書と漢字
筆記道具が書体を決める
書はいつから書なのか
漢字のソフトとハード
漢字はどこへ行くのか――あとがきにかえて



この間、書かなくなったことで、確実に漢字文化は退化しているという意見を聞いた。

もしこれが退化なら、退化は止まらない。止まるはずがない。だけど、これは本当に、文化としての漢字の退化と言えるのか。漢字の本質は表意文字であること。表意文字であることによって、迅速に、正確に意味を伝えることが出来るところにある。そう私は思う。

書かなくなったことで、たしかに私は自力で漢字を書くことが出来なくなった。なかなか思い出せない。だけど、それは完全に忘れてしまったのではなく、パソコンに表示された文字を正しいか間違いか判断することは出来る。間違っている場合は、いくつかの候補から正しい漢字を選ぶことが出来る。

だから、完全に忘れてしまったのではなく、パソコンの登場で必要でなくなってしまったことで、なんの手助けもなく数多くの漢字の中から唯一の正解を紙に書き出す頻度が、以前よりも少し低下しているに過ぎない。それは世の中からパソコンが消えて、やむを得ず以前と同じように、分からない漢字は辞書を引きながら書く習慣を取り戻せば、容易にもとのレベルに戻るだろう。

本書の著者、阿辻さんは、パソコンで漢字を書くことを、“文字文化の堕落”とは捉えていない。パソコンと漢字の関係は、日本語表記についての新しい文房具の登場と言っている。毛筆からペンへ、ペンからパソコンへ。それだけのことと。

漢字の専門家にそう言ってもらえると、気が楽だな。パソコンの登場で、漢字はその本質を失っていない。同時に、かつて、書いていた時代にはなかなか使えなかった“鬱病”の“鬱”であるとか、“鋸や鑿”の“鑿”なんて漢字も使えるようになった。これは漢字の本質が強化されたことを意味しないか。

ただ、正確に書く自信はないが、その正誤を正しく判断するところまでは、漢字を習得しておかなければならない。それだって生やさしいことではないが、ハードルが下がったことは事実。

私はありがたい話だと思う。


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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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