桜『日本の心を旅する』 栗田勇
今年は花が早い。
関東でも各地から、桜の開花の声を聞く。一週間で五分咲きだという。十日で七分というところだろうか。あとは、その時期の陽気によりけり。
埼玉県のへそを自称する東松山市では、まだ開花の声を聞かない。この週末でちょうどかな。一週間で五分、十日で七分となると、それが3月30日。あとはこの時期の陽気によりけりとなると、孫の入学式に向けて、やきもきした日々を過ごすことになりそうだ。
春の心はのどけからまし
新型コロナウイルスに振り回される世界。致死率も、決して低くはない。しかし、歴史の中で人々を絶望に追い込んだいくつかの伝染病には、比べるべくもない。繰り返し繰り返し人類を苛んだそれらとは違い、比較的短い時間で対応し、終息に向かわせることができるだろう。
直に平穏を取り戻しても、私たちはこの伝染病の世界的蔓延と、それに伴う社会機能喪失の危機から、必ず学び取っておかなければならないことがある。
第一に、それらの新たな病気が発生する場所は限られているということ。サーズの発生は2002年、たったの18年前のことだ。新しい伝染病が発生する場所として、“中国”はその可能性の大きな場所だということだ。
第二に、一旦事があれば、白人は容易にアジア人に差別の目を向ける。
第三に、韓国に理屈が通じると思ってはいけない。



おそらく、短期間で収束すると私は信じるが、それでも、それまでの間、絶えなければならないことはいろいろあるし、あきらめなければならないこともある。
そのうちの一つが、花見の宴だ。
都で桜の宴が始まるのは『伊勢物語』のころからだそうだ。
古代から万物生成の大神大山津見神の娘で春と豊穣の神木花佐久夜毘売が桜の木に依り降ったとされ、桜の木の下は聖域となり、祝宴が行われてきた。今日の「お花見」の源流であるという。
降臨したニニギノミコトは、木花咲耶姫を見初めて求婚し、大山津見神がともに差し出した石長姫を断って、寿命を持つことになる。
やがて散りゆく桜に木花咲耶姫が依り降ったことは、それ故に意味深い。限りある命故に、生きることは尊い。生ききった命ならば、散るのもまた美しい。
花見にと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の咎にはありける 西行
昔たれかかる桜の花を植えて 吉野を春のやまとなしけむ 藤原良経
吉野山こずえに花を見し日より 心は身にもそわずなりけり 西行
春風の花を散らすと見る夢は さめても胸のさわぐなりけり 西行
ねがわくは花の下にて春死なん その如月の望月の頃 西行
散る花を惜しむ心やとどまりて また来ん春の誰になるべき 西行
散る桜 残る桜も 散る桜 良寛
世の中に絶えて桜のなかりせば 春のこころはのどけからまし 在原業平
散ればこそいとど桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき 在原業平
関東でも各地から、桜の開花の声を聞く。一週間で五分咲きだという。十日で七分というところだろうか。あとは、その時期の陽気によりけり。
埼玉県のへそを自称する東松山市では、まだ開花の声を聞かない。この週末でちょうどかな。一週間で五分、十日で七分となると、それが3月30日。あとはこの時期の陽気によりけりとなると、孫の入学式に向けて、やきもきした日々を過ごすことになりそうだ。
春の心はのどけからまし
新型コロナウイルスに振り回される世界。致死率も、決して低くはない。しかし、歴史の中で人々を絶望に追い込んだいくつかの伝染病には、比べるべくもない。繰り返し繰り返し人類を苛んだそれらとは違い、比較的短い時間で対応し、終息に向かわせることができるだろう。
直に平穏を取り戻しても、私たちはこの伝染病の世界的蔓延と、それに伴う社会機能喪失の危機から、必ず学び取っておかなければならないことがある。
第一に、それらの新たな病気が発生する場所は限られているということ。サーズの発生は2002年、たったの18年前のことだ。新しい伝染病が発生する場所として、“中国”はその可能性の大きな場所だということだ。
第二に、一旦事があれば、白人は容易にアジア人に差別の目を向ける。
第三に、韓国に理屈が通じると思ってはいけない。
『日本の心を旅する』 栗田勇 春秋社 ¥ 時価 私たち日本人の“こころ”と“いのち”。その本当の煌きとは。新たな“生”の息吹に向けて |
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おそらく、短期間で収束すると私は信じるが、それでも、それまでの間、絶えなければならないことはいろいろあるし、あきらめなければならないこともある。
そのうちの一つが、花見の宴だ。
都で桜の宴が始まるのは『伊勢物語』のころからだそうだ。
古代から万物生成の大神大山津見神の娘で春と豊穣の神木花佐久夜毘売が桜の木に依り降ったとされ、桜の木の下は聖域となり、祝宴が行われてきた。今日の「お花見」の源流であるという。
降臨したニニギノミコトは、木花咲耶姫を見初めて求婚し、大山津見神がともに差し出した石長姫を断って、寿命を持つことになる。
やがて散りゆく桜に木花咲耶姫が依り降ったことは、それ故に意味深い。限りある命故に、生きることは尊い。生ききった命ならば、散るのもまた美しい。
花見にと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の咎にはありける 西行
昔たれかかる桜の花を植えて 吉野を春のやまとなしけむ 藤原良経
吉野山こずえに花を見し日より 心は身にもそわずなりけり 西行
春風の花を散らすと見る夢は さめても胸のさわぐなりけり 西行
ねがわくは花の下にて春死なん その如月の望月の頃 西行
散る花を惜しむ心やとどまりて また来ん春の誰になるべき 西行
散る桜 残る桜も 散る桜 良寛
世の中に絶えて桜のなかりせば 春のこころはのどけからまし 在原業平
散ればこそいとど桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき 在原業平
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