めんどくせぇことばかり 絹さやのみそ汁『このレシピがすごい!』 土屋敦
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絹さやのみそ汁『このレシピがすごい!』 土屋敦

私は、男だけの三人兄弟の三番目。

だから、三人目の出産が近づき、女の子を期待されてたのに、ちんちんをつけて生まれてきてしまった。長男の父には姉がいる。私にしてみれば伯母である。伯母は嫁いだ家で立て続けに三人男の子を産み、最後に女の子を産んで、お仕舞いにした。父はそれを考えたが、母と相談して私が末っ子になった。

父は後に、「お前が女の子で生まれていたら」と酔っ払って言ったことがある。私にとっては怖い父親だったのだが、そのときだけはカッとなった。私は、父の頭を叩いて逃げた。あとで母が取り持ってくれた。母は、それを口に出すことはなかったが、なんだか私に対する扱いが怪しく思えることがあった。

なにかと私に、手伝いをさせたがった。手伝いは、祖父母からもさせられた。だけど、祖父母から命じられる手伝いは、畑仕事だったり、卵を取るために飼っている鶏の世話だった。母のは違う。まるで、娘に対してそうするように、私に手伝いをさせるのだ。

風呂掃除、洗濯物の採り入れ、お使いや、夕飯の準備の手伝い。一番嫌いなのは、お使い。だいたい肉屋か、魚屋。肉屋でおばさんたちに交じって並ぶのは嫌だったな。あとから来たおばさんが、私より先に肉屋に声をかけたりね。いつまでも声を出せないでいると、肉屋の方から救ってもらった。

夕飯の準備の手伝いは嫌いじゃない。菜っ葉やネギを切ったり、うどん粉をこねたり、お釜の火の面倒を見たりするの。どれも単純で簡単なことばかりだけど、いろいろなことをやらされた。

あの手伝いっていうのは、間合いがあるんだな。兄は、その間合いを見切ってるから、危険な時間帯に、決して間合いの中に入ってこない。その点、私は違う。間合いが見切れないというのではなく、嫌がりながらも、どこかで手伝いに惹かれているところがある。だから、ぐずぐず間合いに入ってしまう。






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レシピというものは、それを作った人とその家族の幸せに直接に関わっている
たなかれいこ 蓮根のはさみ揚げ
土井善晴 サンマの塩焼き
米沢亜衣 豚のカリフラワー煮
栗原はるみ たこの香味サラダ
有本洋子 絹さやだけのみそ汁
奥園壽子 豚の角煮
奥園壽子 黒豆
佐藤雅子 小あじの牛乳漬け
阿部なを にしんの醤油漬け
辰巳芳子 煮サラダ
野崎洋光 牡蛎の青海蒸し
河田吉功 ほうれん草とにんにく
辻嘉一 なめこ汁
春田光治 魚のプロヴァンス風煮込みスープ
山本彩香 ヌンクー
オーディド・シュウォーツ ラブナ
難民支援協会 ニラたっぷりの卵焼き
浅野陽 常夜鍋
檀一雄 大正コロッケ
平松洋子 揚げ卵はさみバケットサンド
丸元淑生 タラのグラシオサ風
開高健 生ウニのオムレツ









うちは貧乏だけど、畑があった。野菜作りってのは季節のものだから、時期になると決まったものがたくさん取れる。三ちゃん農業でだけど、祖父母が元気な頃は市場にも出していた。祖父母が高齢化して、市場に出さなくなると、家で食べる分が増えた。時期により、なすばっかり。キュウリばっかり。そして、絹さやばっかり。

その絹さやの、筋をとるの。

絶望的な量の絹さやが、広げた新聞紙に山になっている。新聞紙に山になっている絹さやの筋取りを言いつけられると、それはやはり嫌だ。「相撲、見ながらでいいから」と言われても、終わりが想像できない量なんだから。

それでも、筋を取り始めると、ちょっとずつ気持ちが変わる。端から端まできれいに取れると、それなりにうれしい。どうすればそうなるのか。そうならないことには、どんな原因があるのか。自分が悪いのか。もともと絹さやに原因があるのか。

そのうち、一緒に相撲を見ている祖母が、絹さやの山に手を出してくれる。祖母のやるのを見ると、やたらとうまい。うまいし、早い。これで安けりゃ言うことなし。

そんなことを言ってるうちに、山は丘になり、やがて平らになる。

料理家の有元葉子さんは、省略の人だという。伝統的な料理から、何か省略できることはないか、不要な材料はないかなどを厳しく検討し、新しいレシピに生まれ変わらせるのだという。

そういう意味で、この本の著者は、有元さんの「絹さやだけのみそ汁」を取り上げている。ありきたりの料理人や料理研究家なら、もう一種類加えたり、吸い口を添えたりせずにいられなくなるのだが、有元さんは、そんな因習を苦もなく、楽しげに突き抜けたと評価する。

まったく文句ない。そこに有元レシピの魅力の一端があると思う。

だけどこれ、私は子どもの頃から、絹さやの時期が始まってから終わるまで、毎日食べていた。



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テーマ : 料理の本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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