めんどくせぇことばかり 『ナチスの発明』 武田知弘
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『ナチスの発明』 武田知弘

ナチスってのは、実はいろいろな意味を持っているはずなんだ。

だけど、ドイツはもちろんのこと、ヨーロッパでは“ナチス”の取り扱いに、とても敏感なんだそうだ。そりゃ、当たり前か。オーストリアにはナチス禁止法があって、ナチスの禁止と脱ナチズムを法で定めている。当のドイツでは、ナチスのマーク、旗、制服、言い回し、挨拶や敬礼などが禁止されていて、違反すれば罰金か最高3年の懲役となる。

ハーケンクロイツ、ハイルヒトラー、ジークハイル、ヒトラー敬礼なんかだな。

そういや、しばらく前に、日本のアイドルグループが、とある曲のパフォーマンスの中で、ドイツの軍服風のコスチュームで、ヒトラー敬礼風の動きを見せることが問題視されたことがある。

アメリカのユダヤ人団体で、サイモン・ウィーゼンタール・センターというんだそうだ。ホロコーストの記録保存や反ユダヤ主義の監視を行っているという。そこから抗議を受けて、謝罪を求められ、アイドルグループを主催するソニーミュージックが謝罪した。

どこでどうこの情報を仕入れたのかしらないが、この団体の講義の内容は、「10代の若者がナチス風の衣装を着てステージや観客席で踊っているのを見ることは、ナチス大量虐殺の犠牲者に多大な苦痛を引き起こす」 というものだそうだ。

歴史修正主義を許さないことでも知られた団体だそうだが、人類の歴史って言うのは、修正というものが必要なものだ。それを許さないって言うのは、どうでしょう。歴史修正を許さないユダヤ人も、パレスチナではずいぶん無理を押し通しているが。


そういや、スペインの高級ファッションブランド「ロエベ」が、同じように抗議を受けている。新しいコレクションとして売り出したシャツがダメだという。謝罪したホロコースト犠牲者の制服に似ているって指摘されたシャツって、私が夏場に来ているパジャマの袖が長くなっているだけなんだが。01-loewe-concentration-camp-uniform.jpg

これをデザインした人に謝らせて、発売をやめさせることに、・・・いや、やめておこう。スペインならば、日本とは感覚の違いがあるのかも知れない。


『ナチスの発明』    武田知弘


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今まで語られることの少なかった、ナチスの功罪の「功」の部分に光を
第1章 世界を変えたナチスの発明
第2章 ナチスがめざしたユートピア
第3章 だれがナチスを作ったのか?
第4章 夢の残骸


たしかに、ナチス時代のドイツは最先端の科学技術を誇ったと言って良い。

第二次世界大戦末期には“V2”と呼ばれたミサイル、爆弾つきロケットを、連合軍の基地に対して使っている。V2は発車台つきトレーラーから10分程度の作業で発車でき、迎撃もできない。連合軍がこれを防ぐためには、ドイツを降伏させるよりなかったという。ロンドンには3000発が打ち込まれ、1万人近くの死者が出ていた。ただ、4発で軍用航空機1機分に相当するほどコストが高く、連合軍の激しい空爆の中では生産もおぼつかなかった。

ドイツが制御を失ったとき、この技術者たちは、各国による分捕りの対象となった。ナチス親衛隊も技術者たちを追っていた。逃避行の間に多くはソ連軍につかまった。リーダーのフォン・ブラウンと数人は、希望通りアメリカに投降することができた。かくして、戦後、米ソの熾烈な宇宙開発競争が始まったんだそうだ。

ジェット機、テレビ放送、ラジオ放送、アルミニウム合金、合成ゴム、化学繊維、ヘリコプター、電子顕微鏡、リニア・モーターカー。

いずれも、ナチス時代のドイツが絡んでくる。これはすごい。

その上、社会福祉の充実度合いがものすごい。

「大衆車」という意味を持つという名車フォルクス・ワーゲンは、「労働者にも買える車を」というヒトラーの政策に後押しされた生まれたもんなんだそうだ。

金持ちの特権であったバカンスであるが、長期休暇を労働者にも与えなければならないというのは、ナチスの労働政策の理念の一つでもあったそうだ。さらに、労働者のレジャーに対する配慮は、おそらくいまの日本よりも上。なにしろ、当局がスポーツを奨励していて、戸のスポーツは勤務時間中に認められていたそうだ。

労働者でも、一生に一度は海外旅行をして、「外国から祖国を見る機会を与えよう」なんてことまで行なわれていた。海外に行くばかりでなく、当時のドイツは観光大国で、海外から50万人ほどの旅行者が訪れ、それに配慮した周遊コースが準備されていたそうだ。訪れた人の多くはドイツ好きになり、ドイツの国際的評価に影響を与えていた。

ナチスは、少子化も乗り越えた。「結婚資金貸付法」というのがあって、平均的な労働者の給料の半年分を、無利子で借りられた。それだけじゃない。この貸付金は、子どもを一人生むたびに返済が1/4免除され、4人で全額免除になったそうだ。

ガン撲滅運動、アスベスト対策、労働環境の改善、女性労働の促進、合成着色料の禁止などなど・・・

ナチスの人種差別、民族差別、身障者差別は、たしかに許しがたいものであった。しかし、それはいずれもナチスの新発明ではなかったことを理解すべきだ。

先進的な技術にしたって、社会福祉にしたってそうだ。ナチスの時代になって降って湧いたわけではない。世界が躊躇していたものを、彼らはあらゆる面で“押し進めた”のだ。



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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