ナチスの原爆『ナチスの発明』 武田知弘
ナチスに関する言及は、あってはならない聖域か?
倉山満さんの本にも書いてあったな。以前、麻生太郎副大臣が憲法改正に関するシンポジウムの中で、「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」と発言したことに関するもの。
「ヒトラーは憲法を変えてなどおらず、停止しただけだ」と倉山さんは言うが、たしかに事実上停止されてるんだけど、正式には停止すらされてない。国会議事堂放火事件を政治利用して憲法の認める基本的人権のいくつかを停止し、さらにその状況下で全権委任法を成立させてる。全権委任法は、憲法を越える権限の譲渡であったから、事実上、ワイマール憲法は停止された状態になる。
誰も気づかないうちにナチス憲法が制定された“あの手口”なんて存在しないし、ファシズム体制が構築されたことを言っているのなら、それはかなり暴力的なものだった。
だから、やはりナチスを引き合いに出すことには慎重であるべきだ。少なくとも、“手口”云々とおちょくり半分で取り上げるべきではない。
その上で、ナチスに関して研究していくことは、実は大きな意味があると思う。その意味でも、この本はとても貴重な本だと思う。もっともっと、続いて欲しいとも思う。
よく韓国が、世界に対して、日本をナチス同等の悪であるかのような宣伝をする。ほらほら、あのオリンピックのサッカーの試合で、韓国の選手が竹島に関わるプラカードを持ちだして問題になったとき、韓国は旭日旗をハーケンクロイツ同等だと、問題を相対化しようとした。今は旭日旗問題だけが残されて、韓国人の新たな反日運動のカードとなった。
ナチスを悪魔化してしまえば、悪魔に良いところを見いだすなんてあり得ないことになる。だけど、ナチスは人間の集まりだ。それ以上に、ナチスの行なった“悪”と同じ根っ子を持つ行為は、今でも世界各地に存在する。やはり、しっかり研究すべきところだと思う。
そう言えば、この本の最後に、《ナチス原爆製造の謎》という項目があった。


《原子爆弾は、アメリカが世界で最初に発明した、ということになっている。そのためアメリカは、対日戦争を早期に終結させ、その後の超軍事大国になることにできたというのが、現在の歴史認識だ》
ずいぶん思わせぶりなことが書かれている。
1938年 ウランの核分裂を発見
1940年3月 世界初の原子炉が完成
1940年6月 フランス最先端原子力研究施設を没収
これはすべてドイツにより成されたこと。その後、ドイツは、当時のすべてのウラン産出地域を占領し、ウランの輸出を差し止め、原爆製造において圧倒的に優位な立場にいたんだそうだ。
アメリカのマンハッタン計画は、それに対抗する策で、ドイツから亡命したユダヤ人科学者たちがアメリカに進言したものだった。そして進んだ技術力と経済力があって、原爆は製造できたというのが貞節である。
ジェット機、ロケット、誘導爆弾など連合国に先駆けてナチスが開発した兵器は多い。だからこそ、ロケット技術もそうだが、ナチスの技術は争奪の対象だった。終戦後、中でも、最も手際よくナチスの技術者を引き抜いたのはアメリカである。
当時、原爆にはウラン型とプルトニウム型の2種類あった。日本には、ウラン型が広島に、プルトニウム型が長崎に落とされた。アメリカが実験に成功したのはプルトニウム型の原爆で、ウラン型の原爆は実験されていないんだそうだ。
・・・ウランは長らく、ドイツの独占されていたから、アメリカがウランを自由に手に入れられるようになるのは、ナチスがヨーロッパの支配を失ってからのはず。
枢軸国側のスパイであるベラスコは、ナチスは1944年までに原爆を完成させていたが、ヒトラーの命令で投下されなかったと証言しているという。軍需相シュペーアの回想録には「ヒトラーは原爆を嫌っていた」と書かれているという。
ヒトラーがためらった原爆を、アメリカは二発も日本に落とした。
今の段階で、それは“可能性”でしかないが、ナチスの揺るすべからざる悪の側面は、今の世界にも間違いなく存在する。
倉山満さんの本にも書いてあったな。以前、麻生太郎副大臣が憲法改正に関するシンポジウムの中で、「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」と発言したことに関するもの。
「ヒトラーは憲法を変えてなどおらず、停止しただけだ」と倉山さんは言うが、たしかに事実上停止されてるんだけど、正式には停止すらされてない。国会議事堂放火事件を政治利用して憲法の認める基本的人権のいくつかを停止し、さらにその状況下で全権委任法を成立させてる。全権委任法は、憲法を越える権限の譲渡であったから、事実上、ワイマール憲法は停止された状態になる。
誰も気づかないうちにナチス憲法が制定された“あの手口”なんて存在しないし、ファシズム体制が構築されたことを言っているのなら、それはかなり暴力的なものだった。
だから、やはりナチスを引き合いに出すことには慎重であるべきだ。少なくとも、“手口”云々とおちょくり半分で取り上げるべきではない。
その上で、ナチスに関して研究していくことは、実は大きな意味があると思う。その意味でも、この本はとても貴重な本だと思う。もっともっと、続いて欲しいとも思う。
よく韓国が、世界に対して、日本をナチス同等の悪であるかのような宣伝をする。ほらほら、あのオリンピックのサッカーの試合で、韓国の選手が竹島に関わるプラカードを持ちだして問題になったとき、韓国は旭日旗をハーケンクロイツ同等だと、問題を相対化しようとした。今は旭日旗問題だけが残されて、韓国人の新たな反日運動のカードとなった。
ナチスを悪魔化してしまえば、悪魔に良いところを見いだすなんてあり得ないことになる。だけど、ナチスは人間の集まりだ。それ以上に、ナチスの行なった“悪”と同じ根っ子を持つ行為は、今でも世界各地に存在する。やはり、しっかり研究すべきところだと思う。
そう言えば、この本の最後に、《ナチス原爆製造の謎》という項目があった。
『ナチスの発明』 武田知弘 彩図社 ¥ 713 今まで語られることの少なかった、ナチスの功罪の「功」の部分に光を |
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《原子爆弾は、アメリカが世界で最初に発明した、ということになっている。そのためアメリカは、対日戦争を早期に終結させ、その後の超軍事大国になることにできたというのが、現在の歴史認識だ》
ずいぶん思わせぶりなことが書かれている。
1938年 ウランの核分裂を発見
1940年3月 世界初の原子炉が完成
1940年6月 フランス最先端原子力研究施設を没収
これはすべてドイツにより成されたこと。その後、ドイツは、当時のすべてのウラン産出地域を占領し、ウランの輸出を差し止め、原爆製造において圧倒的に優位な立場にいたんだそうだ。
アメリカのマンハッタン計画は、それに対抗する策で、ドイツから亡命したユダヤ人科学者たちがアメリカに進言したものだった。そして進んだ技術力と経済力があって、原爆は製造できたというのが貞節である。
ジェット機、ロケット、誘導爆弾など連合国に先駆けてナチスが開発した兵器は多い。だからこそ、ロケット技術もそうだが、ナチスの技術は争奪の対象だった。終戦後、中でも、最も手際よくナチスの技術者を引き抜いたのはアメリカである。
当時、原爆にはウラン型とプルトニウム型の2種類あった。日本には、ウラン型が広島に、プルトニウム型が長崎に落とされた。アメリカが実験に成功したのはプルトニウム型の原爆で、ウラン型の原爆は実験されていないんだそうだ。
・・・ウランは長らく、ドイツの独占されていたから、アメリカがウランを自由に手に入れられるようになるのは、ナチスがヨーロッパの支配を失ってからのはず。
枢軸国側のスパイであるベラスコは、ナチスは1944年までに原爆を完成させていたが、ヒトラーの命令で投下されなかったと証言しているという。軍需相シュペーアの回想録には「ヒトラーは原爆を嫌っていた」と書かれているという。
ヒトラーがためらった原爆を、アメリカは二発も日本に落とした。
今の段階で、それは“可能性”でしかないが、ナチスの揺るすべからざる悪の側面は、今の世界にも間違いなく存在する。
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