『縄文探検隊の記録』 夢枕獏 岡村道雄
題名に注目。
『縄文探検隊の記録』だって。・・・“探検隊”に興味はそそられるものの、“縄文”の“記録”と言われて、私は尻込みした。縄文研究の専門家の“記録”を読んで、私に分かるとは思えなかった。それで、その書架の前を通過しかかったとき、背表紙に夢枕獏の名を見つけた。
手にしてみれば、対談ものらしい。登場する縄文の専門家は岡村道雄さん。獏さんの、“縄文の師匠”なんだそうだ。その獏さん、今、縄文人が信仰していた神々の神話をでってあげようと企んでいるという。
獏さんの書く話には、怪しいものが多い。そういうのを伝奇小説と言うそうだ。その起こりは、“中国”の唐や宋王朝時代にあって、仙人、仙女の登場する怪しい話が書かれるようになったそうだ。そう言えば、唐王朝時代、道教や、それに関わる仙神思想が大流行した時代のはず。
獏さんが、そのルーツとしてあげている『捜神記』はさらに古く、儒教一辺倒の漢が滅びて、政治的には大混乱期を迎えるが、その分、文化は多様化して、仏教や道教も盛んになったという。その頃から動物や仙人や神様を登場させる短い話がたくさん作られたんだそうだ。
ちょっと前の、日本の伝奇小説としてあげているのが、芥川龍之介の『杜子春』、半村良の『黄金伝説』、『妖星伝』、吉川英治の『鳴門秘帖』。なんだ、ずいぶん前のことになるけど、全部読んでる。と言うことは、私は伝奇小説が好きなのか。
そのジャンルを突き詰めたきた獏さんだが、最後には「日本人とはなにか」「記紀神話以前の神々とは」という問いにたどり着いたという。それが獏さんにとっては、縄文だったと言うことのようだ。
さらにもう一つ企みがあって、旅する縄文の運び人「わたり」なるものが、行く先々で縄文の神とであう物語。・・・縄文の神々のでっち上げでも、縄文の車寅次郎でも、私はどちらでもいい。
この“あとがき”が書かれたのは、2018年とある。そのなかで、「2019年のどこかで」それをスタートさせるとある。すでにスタートしているようだ。
まもなくお目にかかれる。楽しみでならない。


垣の島Bから発見された漆製品は9000年前のもの、“中国”最古のものは8000年前。さらに古いものが、今後、“中国”から発見される可能性はある。ウルシの木が、縄文より前の日本にはない植物であったとするなら、起源は大陸にあると言う説が有力であるが、その後の利用の広がりと、現在、日本で行なわれている漆器技術につながる高度な技法を考えると、日本起源も捨てられないと言うことのようだ。
今後の発見によりけりだそうだ。“中国”からもっと古い漆製品が発見されること。あるいは、日本の縄文より前の地層から、ウルシの木の化石でも、花粉でもいいから見つかること。そうすりゃ分かるって。
ウルシの木が、縄文より前にはなかったって言うのは知らなかった。2018年なら現役の教員として、漆器は日本起源と生徒に伝えていた。勉強不足って言うのは、あとから知ると恥ずかしい。
発見された遺物の古さってことだけで片付けられるもんじゃないけど、漆器も土器も、日本列島は世界最古のグループに入ることは間違いない。すごい場所だったんだな。
ちなみに、アスファルトの章は地味そうだから飛ばそうかと思ってた。あぶない、あぶない。
なぜか。破壊説は、腕や足、首がよく壊れていて、“ひとがた”に代表されるような呪術的儀式の結果とするもの。しかし、壊れた状態で発見された土偶の中には、アスファルトで接着補修したものが少なからずあり、壊すことを目的に作られたという破壊説は疑わしくなってきた。
アスファルトでくっつけて大事に使っていたのが事実ではないか、ってことのよう。・・・なんか、こっちの方が納得できる。
縄文に関しては、ここのところの調査技術の進歩によって、どんどん新知識が登場してる。私なんかじゃとても追いつきそうもない。獏さんの縄文小説に期待して、雰囲気だけでも味わうことにしよう。
『縄文探検隊の記録』だって。・・・“探検隊”に興味はそそられるものの、“縄文”の“記録”と言われて、私は尻込みした。縄文研究の専門家の“記録”を読んで、私に分かるとは思えなかった。それで、その書架の前を通過しかかったとき、背表紙に夢枕獏の名を見つけた。
手にしてみれば、対談ものらしい。登場する縄文の専門家は岡村道雄さん。獏さんの、“縄文の師匠”なんだそうだ。その獏さん、今、縄文人が信仰していた神々の神話をでってあげようと企んでいるという。
獏さんの書く話には、怪しいものが多い。そういうのを伝奇小説と言うそうだ。その起こりは、“中国”の唐や宋王朝時代にあって、仙人、仙女の登場する怪しい話が書かれるようになったそうだ。そう言えば、唐王朝時代、道教や、それに関わる仙神思想が大流行した時代のはず。
獏さんが、そのルーツとしてあげている『捜神記』はさらに古く、儒教一辺倒の漢が滅びて、政治的には大混乱期を迎えるが、その分、文化は多様化して、仏教や道教も盛んになったという。その頃から動物や仙人や神様を登場させる短い話がたくさん作られたんだそうだ。
ちょっと前の、日本の伝奇小説としてあげているのが、芥川龍之介の『杜子春』、半村良の『黄金伝説』、『妖星伝』、吉川英治の『鳴門秘帖』。なんだ、ずいぶん前のことになるけど、全部読んでる。と言うことは、私は伝奇小説が好きなのか。
そのジャンルを突き詰めたきた獏さんだが、最後には「日本人とはなにか」「記紀神話以前の神々とは」という問いにたどり着いたという。それが獏さんにとっては、縄文だったと言うことのようだ。
さらにもう一つ企みがあって、旅する縄文の運び人「わたり」なるものが、行く先々で縄文の神とであう物語。・・・縄文の神々のでっち上げでも、縄文の車寅次郎でも、私はどちらでもいい。
この“あとがき”が書かれたのは、2018年とある。そのなかで、「2019年のどこかで」それをスタートさせるとある。すでにスタートしているようだ。
まもなくお目にかかれる。楽しみでならない。
『縄文探検隊の記録』 夢枕獏 岡村道雄 インターナショナル新書 ¥ 946 日本列島に住んだ祖先たちはどのような生活を送り、どんな精神文化を築いていたのか |
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世界最古の漆製品は北海道の垣の島Bという遺跡の墓穴から出土したシャーマンが身に着けていたもので、素材は糸で帯状にして漆で固めたもの。これはその時期の本州にはない独特の作り方である。また本州の縄文漆器は中国にもない塗りの独自性を持ち、特徴の一つが現在の漆器と同じ重ね塗り技術であると。ウルシの木そのものは縄文草創期の福井県鳥浜貝塚などから出土しているが、縄文時代より前のウルシの木の化石は見つかっていない。そして日本に生えているウルシは遺伝的に中国、朝鮮半島のものと同一であると。本来、日本列島に分布していない植物でありながら、利用は大陸よりもかなり先行している。 |
垣の島Bから発見された漆製品は9000年前のもの、“中国”最古のものは8000年前。さらに古いものが、今後、“中国”から発見される可能性はある。ウルシの木が、縄文より前の日本にはない植物であったとするなら、起源は大陸にあると言う説が有力であるが、その後の利用の広がりと、現在、日本で行なわれている漆器技術につながる高度な技法を考えると、日本起源も捨てられないと言うことのようだ。
今後の発見によりけりだそうだ。“中国”からもっと古い漆製品が発見されること。あるいは、日本の縄文より前の地層から、ウルシの木の化石でも、花粉でもいいから見つかること。そうすりゃ分かるって。
ウルシの木が、縄文より前にはなかったって言うのは知らなかった。2018年なら現役の教員として、漆器は日本起源と生徒に伝えていた。勉強不足って言うのは、あとから知ると恥ずかしい。
発見された遺物の古さってことだけで片付けられるもんじゃないけど、漆器も土器も、日本列島は世界最古のグループに入ることは間違いない。すごい場所だったんだな。
ちなみに、アスファルトの章は地味そうだから飛ばそうかと思ってた。あぶない、あぶない。
土偶は、その多くが壊れた状態で発見されることから、「壊すことに意味があった」と言われていた。それを壊すことによって、災いを土偶に背負ってもらう。“ひとがた”だね。それが、どうも、そうではなかったようだ。
なぜか。破壊説は、腕や足、首がよく壊れていて、“ひとがた”に代表されるような呪術的儀式の結果とするもの。しかし、壊れた状態で発見された土偶の中には、アスファルトで接着補修したものが少なからずあり、壊すことを目的に作られたという破壊説は疑わしくなってきた。
アスファルトでくっつけて大事に使っていたのが事実ではないか、ってことのよう。・・・なんか、こっちの方が納得できる。
縄文に関しては、ここのところの調査技術の進歩によって、どんどん新知識が登場してる。私なんかじゃとても追いつきそうもない。獏さんの縄文小説に期待して、雰囲気だけでも味わうことにしよう。
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