ユーゴ紛争『反日プロパガンダの近現代史』 倉山満
《弾丸よりもキャッチコピー、優れたキャッチコピーはミサイルよりも威力がある》
これはすごい。あれはプロパガンダだったんだ。なんだか胡散臭いとは思ったけど、やっぱりプロパガンダだったんだ。
だけど、それによってミロシェビッチは最悪の独裁者にされた。一連のユーゴスラビア紛争における戦争犯罪人として身柄を拘束され、獄中で命を落とすことになった。
セルビアが国際的に孤立し、経済制裁によって国民の生活を困窮させ、すべての戦争に負けたことでセルビアの利益を損なった。コソボ紛争ではNATOの空爆まで招き、領土まで失った。その最大の責任が、ミロシェビッチにあるとされた。それがプロパガンダのものすごいところなのか。
ミロシェビッチはアメリカで銀行家をやっていて、経済合理性の分かる親米派だったという。アメリカにしてみれば、このミロシェビッチをうまく使えば、あんな最悪な状況になることは防げたんじゃないかと思うんだけど、その時のアメリカ大統領はクリントンだったんだよね。不幸な巡り合わせというか。
ユーゴスラビア紛争に顔を出してくる一連の政治家たちの中では、一番の真人間がミロシェビッチだって倉山さんは言っている。・・・“あれでも”一番だって。つまりは、その他のやつが、・・・クリントンはじめ、ひどすぎるんだって。
たとえば、クロアチアのトゥジマンはナチス崇拝のファシストで、トゥジマン時代のクロアチア人の家庭にはヒトラーの正造が掲げられていたという。ウスタシャの話が出てくるんだけど、これは知ってた。ナチスの傀儡国家と呼ばれたクロアチアのファシズム団体。だけど、そのあまりの残虐さにSSが逃げ出したとか、ヒムラーがヒトラーに帰国を嘆願したとか。
ユーゴスラビア紛争の始まりは、真っ先に独立戦争を仕掛けたスロベニアだった。そのスロベニアのクーチャン大統領、仕掛けるに当たって、クロアチアをたきつけて、トゥジマンを腰抜け扱いしたそうだ。
トゥジマンや、ボスニアのイゼドベゴビッチは、チトー時代から民族運動をやってる札付きで、ミロシェビッチは逆に、過激な民族主義を警戒する側だったようだ。




六つの共和国が七つに割れた、ユーゴスラビア紛争。
六つが七つ?
スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェコビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、コソボ、・・・本当だ。いつの間にか七つになってる。
いつの間にかってのはよくないね。だけど、当初、心底心配してたユーゴ紛争なんだけど、徐々に戦場と戦っている者たちが変化していって、その変容にこっちの頭がついていかなくなっていった。ついには、「ああ、なにかとドンパチやってるところね」という状況になってしまった。・・・恥ずかしながら。
もとはといえば、ソ連という共通の的に掲げていた武器が、そのソ連が勝手に潰れて以降、昨日までの同じユーゴスラビア国民に向けられるようになって、ボスニア・ヘルツェコビナみたいなセルビア人、クロアチア人、ムスリム人混住の地域では同じアパートに入っている者同士でひどいことになって・・・。
イスラム教徒がやられた強制妊娠施設では、女を拉致し、強姦して妊娠させ、中絶できない時期になったら解放するようなマネをしてたんだそうだ。もちろん、やられた側はやり返す。そうしてやった側、やられた側、生まれた子ども、その家族たち、そういう人たちが、紛争が収まった今、同じ街に住んでいる。貧乏だから、街を出ることもできない。
そんな状況なわけだから、誰が悪い、彼が悪いという話じゃない。そういう話じゃないんだけど、最も忍耐を迫られるのは、最大勢力のセルビアだったってことになる。実際、セルビア共和国の中でも、コソボのアルバニア人が暴れてもセルビア人は忍耐を強いられた。
それでもセルビアは軍事的にも力があったから、やり合ってもクロアチアやボスニアには負けない。ところが、彼らがアメリカやNATOを巻き込んで空爆しろと声高に叫ぶ。
その時、ボスニア・ヘルツェコビナは、アメリカの広告代理店を巻き込んでいたそうだ。私が覚えているのは、「エスニック・クレンジング」という言葉だ。これは、戦争広告代理店によって生まれた歴史に残るキャッチコピーなんだそうだ。「セルビアは民族浄化をやっている」、セルビアを空爆しろ!
ユーゴスラビア紛争は、キャッチコピーはミサイルよりも強いことを知らしめる出来事だったわけですが、そんな話が明るみに出たのは、イゼトベゴビッチが広告代理店の料金を踏み倒したからなんだそうです。
これはすごい。あれはプロパガンダだったんだ。なんだか胡散臭いとは思ったけど、やっぱりプロパガンダだったんだ。
だけど、それによってミロシェビッチは最悪の独裁者にされた。一連のユーゴスラビア紛争における戦争犯罪人として身柄を拘束され、獄中で命を落とすことになった。
セルビアが国際的に孤立し、経済制裁によって国民の生活を困窮させ、すべての戦争に負けたことでセルビアの利益を損なった。コソボ紛争ではNATOの空爆まで招き、領土まで失った。その最大の責任が、ミロシェビッチにあるとされた。それがプロパガンダのものすごいところなのか。
ミロシェビッチはアメリカで銀行家をやっていて、経済合理性の分かる親米派だったという。アメリカにしてみれば、このミロシェビッチをうまく使えば、あんな最悪な状況になることは防げたんじゃないかと思うんだけど、その時のアメリカ大統領はクリントンだったんだよね。不幸な巡り合わせというか。
ユーゴスラビア紛争に顔を出してくる一連の政治家たちの中では、一番の真人間がミロシェビッチだって倉山さんは言っている。・・・“あれでも”一番だって。つまりは、その他のやつが、・・・クリントンはじめ、ひどすぎるんだって。
たとえば、クロアチアのトゥジマンはナチス崇拝のファシストで、トゥジマン時代のクロアチア人の家庭にはヒトラーの正造が掲げられていたという。ウスタシャの話が出てくるんだけど、これは知ってた。ナチスの傀儡国家と呼ばれたクロアチアのファシズム団体。だけど、そのあまりの残虐さにSSが逃げ出したとか、ヒムラーがヒトラーに帰国を嘆願したとか。
ユーゴスラビア紛争の始まりは、真っ先に独立戦争を仕掛けたスロベニアだった。そのスロベニアのクーチャン大統領、仕掛けるに当たって、クロアチアをたきつけて、トゥジマンを腰抜け扱いしたそうだ。
トゥジマンや、ボスニアのイゼドベゴビッチは、チトー時代から民族運動をやってる札付きで、ミロシェビッチは逆に、過激な民族主義を警戒する側だったようだ。
『反日プロパガンダの近現代史』 倉山満 アスペクト ¥ 時価 国内外の反日勢力が仕掛ける情報戦&謀略戦に負けないために知っておきたいこと |
六つの共和国が七つに割れた、ユーゴスラビア紛争。
六つが七つ?
スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェコビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、コソボ、・・・本当だ。いつの間にか七つになってる。
いつの間にかってのはよくないね。だけど、当初、心底心配してたユーゴ紛争なんだけど、徐々に戦場と戦っている者たちが変化していって、その変容にこっちの頭がついていかなくなっていった。ついには、「ああ、なにかとドンパチやってるところね」という状況になってしまった。・・・恥ずかしながら。
もとはといえば、ソ連という共通の的に掲げていた武器が、そのソ連が勝手に潰れて以降、昨日までの同じユーゴスラビア国民に向けられるようになって、ボスニア・ヘルツェコビナみたいなセルビア人、クロアチア人、ムスリム人混住の地域では同じアパートに入っている者同士でひどいことになって・・・。
イスラム教徒がやられた強制妊娠施設では、女を拉致し、強姦して妊娠させ、中絶できない時期になったら解放するようなマネをしてたんだそうだ。もちろん、やられた側はやり返す。そうしてやった側、やられた側、生まれた子ども、その家族たち、そういう人たちが、紛争が収まった今、同じ街に住んでいる。貧乏だから、街を出ることもできない。
そんな状況なわけだから、誰が悪い、彼が悪いという話じゃない。そういう話じゃないんだけど、最も忍耐を迫られるのは、最大勢力のセルビアだったってことになる。実際、セルビア共和国の中でも、コソボのアルバニア人が暴れてもセルビア人は忍耐を強いられた。
それでもセルビアは軍事的にも力があったから、やり合ってもクロアチアやボスニアには負けない。ところが、彼らがアメリカやNATOを巻き込んで空爆しろと声高に叫ぶ。
その時、ボスニア・ヘルツェコビナは、アメリカの広告代理店を巻き込んでいたそうだ。私が覚えているのは、「エスニック・クレンジング」という言葉だ。これは、戦争広告代理店によって生まれた歴史に残るキャッチコピーなんだそうだ。「セルビアは民族浄化をやっている」、セルビアを空爆しろ!
ユーゴスラビア紛争は、キャッチコピーはミサイルよりも強いことを知らしめる出来事だったわけですが、そんな話が明るみに出たのは、イゼトベゴビッチが広告代理店の料金を踏み倒したからなんだそうです。
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