『危機にこそ ぼくらは甦る』 青山繁晴
「予が諸君よりも先に、戦陣に散ることがあっても、諸君の今日まで捧げた偉功は決して消えるものではない。いま日本は戦に敗れたりといえども、日本国民が諸君の忠君愛国の精神に燃え、諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対し涙して黙祷を捧げる日が、いつか来るであろう。安んじて諸君は国に殉ずべし。」
硫黄島守備隊の総指揮官であった栗林忠道中将は、1945年3月25日、部下たちに上記のような訓示を与え、翌26日朝には攻撃の先頭に立って戦死する。
アメリカ軍の艦船が硫黄島に姿を見せたのは2月16日。上陸軍をしきするホーランド・スミスは、「占領は五日で終わる」と豪語した。
まずは、徹底した艦船からの砲撃を三日間続け、日本軍の火砲を沈黙させてから上陸を開始。守備隊は上陸部隊に集中砲火を浴びせて、4人に1人を死傷させるという打撃を与える。しかし、物量に勝る米軍は、上陸作戦開始から四日ですり鉢山に星条旗を立てる。
米軍にしてみれば、占領作戦はほぼ完了と思ったろうが、栗林中将と守備隊の兵士たちの共通する思いは、最後までゲリラ作戦を続け、少しでも本土への攻撃を遅らせ、少しでも米軍を消耗させるというものだった。
2月16日に始まった戦いは6日どころか30日を超えた。2万人いた守備隊の兵士も数を減らし、いよいよ1000人を切った。残された部下に上記の訓示を与えた翌朝、400人の兵士の先頭に立って米軍野営地に攻撃をかけ、米兵170人とともに、栗林中将は硫黄島に散った。
栗林中将は部下たちに、「日本国民が諸君の忠君愛国の精神に燃え、諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対し涙して黙祷を捧げる日が、いつか来る」と言ったが、大変残念であるが、まだその日は来ていない。
栗林中将はいみじくも、“いつか来る”と言っている。「日本国民が諸君の霊に対し涙して黙祷を捧げる」とは言い切っていないのだ。栗林中将は、日本は壊滅的な打撃を受け、もとのように復活するには相当の時間がかかると考えていたのだろう。
その通り、日本は壊滅的な打撃を受け、それ以上に米軍の占領によって国を作りかえられてしまった。徹底した洗脳で、祖先につながる物語を塗り替えられてしまった。
硫黄島の守備隊は、米軍による本土攻撃までの時間稼ぎをしてくれただけではない。特攻や、沖縄での戦いも合わせて、日本と戦う上での米軍の覚悟を変えた。曲がりなりにも日本が、日本として戦後世界にその地位を確保できたのは、それらの戦いで散っていった人たちの犠牲によるものに他ならない。
しかし、まだ、・・・


その作りかえられた国と、塗り替えられてしまった物語を、戦後ずっと支えてきたのは占領軍じゃない。占領軍は、ずっと前に引揚げた。それを支えているのは、マスコミと教育界。
マスコミは知らないけど、教育界なら学校に勤めていたので、少しは分かる。青山さんも話題にしてたけど、ちょっと学校のことに触れておくことにする。
私は今年60歳になったが、その私が高校に入った頃、だから昭和50年、1975年頃だな、変わり目は。戦前にすでに人格形成を終えていた教師たちが、徐々に引退していった頃だ。それに代わって、人格形成途上で敗戦による価値観の逆転と、強烈な洗脳で、日本を侵略国家と信じて疑わない人たちが学校の主導権を握るようになっていく。
私も一時流されたが、それなりの時間はかかったが、戻ってこれた。戻る場所を知ってたしね。で、自分自身学校に勤めることになる。組合には、迷ったあげくに入った。イデオロギーじゃなくて、職場闘争がどうしても必要だったから。ところが、当時は、日教組と県教委ってのは、上の方で妙に折り合ってるところがあって、汚らわしいからやめた。まさに、♬ 右を向いても左を見ても、馬鹿と阿呆のからみあい ♬ だった。
私は歴史の教員だったけど、歴史教科書なんてひどいもんで、実は、教科書って言うのはほとんど使ったことがない。嘘ばっかりだから使えない。
私よりも若い教員は、年齢が下るとともに、作りかえられた国と、塗り替えられてしまった物語に、なんの疑問も持たない人たちになってくる。そういう人たちが学校の先生だし、それに学校の先生だけじゃなくて、八百屋も魚屋も、定食屋も居酒屋も、みんなそうなんだよね。
だけど、私は“一時流された”ことがあるから分かるけど、“塗り替えられてしまった物語”では、どうしても歴史が成立しないんだな。納得できる、この国の歴史が成立しないんだ。
つまり、多くの人たちが、いまだに“納得できない歴史”を抱えて行き詰まってるはずなんだ。彼らが求めれば、化けの皮はたやすくはげる。
私たちに必要なのは、心を揺さぶるような、本物の物語だと、私は思っている。
日本国民が硫黄島に散った守備隊兵士たちの勲功を称え、彼らのの霊に対し涙して黙祷を捧げる日が、早く来ることを切に願う。それは、今を生きる日本人にとっても、大変喜ばしいことだと思う。
硫黄島守備隊の総指揮官であった栗林忠道中将は、1945年3月25日、部下たちに上記のような訓示を与え、翌26日朝には攻撃の先頭に立って戦死する。
アメリカ軍の艦船が硫黄島に姿を見せたのは2月16日。上陸軍をしきするホーランド・スミスは、「占領は五日で終わる」と豪語した。
まずは、徹底した艦船からの砲撃を三日間続け、日本軍の火砲を沈黙させてから上陸を開始。守備隊は上陸部隊に集中砲火を浴びせて、4人に1人を死傷させるという打撃を与える。しかし、物量に勝る米軍は、上陸作戦開始から四日ですり鉢山に星条旗を立てる。
米軍にしてみれば、占領作戦はほぼ完了と思ったろうが、栗林中将と守備隊の兵士たちの共通する思いは、最後までゲリラ作戦を続け、少しでも本土への攻撃を遅らせ、少しでも米軍を消耗させるというものだった。
2月16日に始まった戦いは6日どころか30日を超えた。2万人いた守備隊の兵士も数を減らし、いよいよ1000人を切った。残された部下に上記の訓示を与えた翌朝、400人の兵士の先頭に立って米軍野営地に攻撃をかけ、米兵170人とともに、栗林中将は硫黄島に散った。
栗林中将は部下たちに、「日本国民が諸君の忠君愛国の精神に燃え、諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対し涙して黙祷を捧げる日が、いつか来る」と言ったが、大変残念であるが、まだその日は来ていない。
栗林中将はいみじくも、“いつか来る”と言っている。「日本国民が諸君の霊に対し涙して黙祷を捧げる」とは言い切っていないのだ。栗林中将は、日本は壊滅的な打撃を受け、もとのように復活するには相当の時間がかかると考えていたのだろう。
その通り、日本は壊滅的な打撃を受け、それ以上に米軍の占領によって国を作りかえられてしまった。徹底した洗脳で、祖先につながる物語を塗り替えられてしまった。
硫黄島の守備隊は、米軍による本土攻撃までの時間稼ぎをしてくれただけではない。特攻や、沖縄での戦いも合わせて、日本と戦う上での米軍の覚悟を変えた。曲がりなりにも日本が、日本として戦後世界にその地位を確保できたのは、それらの戦いで散っていった人たちの犠牲によるものに他ならない。
しかし、まだ、・・・
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その作りかえられた国と、塗り替えられてしまった物語を、戦後ずっと支えてきたのは占領軍じゃない。占領軍は、ずっと前に引揚げた。それを支えているのは、マスコミと教育界。
マスコミは知らないけど、教育界なら学校に勤めていたので、少しは分かる。青山さんも話題にしてたけど、ちょっと学校のことに触れておくことにする。
私は今年60歳になったが、その私が高校に入った頃、だから昭和50年、1975年頃だな、変わり目は。戦前にすでに人格形成を終えていた教師たちが、徐々に引退していった頃だ。それに代わって、人格形成途上で敗戦による価値観の逆転と、強烈な洗脳で、日本を侵略国家と信じて疑わない人たちが学校の主導権を握るようになっていく。
私も一時流されたが、それなりの時間はかかったが、戻ってこれた。戻る場所を知ってたしね。で、自分自身学校に勤めることになる。組合には、迷ったあげくに入った。イデオロギーじゃなくて、職場闘争がどうしても必要だったから。ところが、当時は、日教組と県教委ってのは、上の方で妙に折り合ってるところがあって、汚らわしいからやめた。まさに、♬ 右を向いても左を見ても、馬鹿と阿呆のからみあい ♬ だった。
私は歴史の教員だったけど、歴史教科書なんてひどいもんで、実は、教科書って言うのはほとんど使ったことがない。嘘ばっかりだから使えない。
私よりも若い教員は、年齢が下るとともに、作りかえられた国と、塗り替えられてしまった物語に、なんの疑問も持たない人たちになってくる。そういう人たちが学校の先生だし、それに学校の先生だけじゃなくて、八百屋も魚屋も、定食屋も居酒屋も、みんなそうなんだよね。
だけど、私は“一時流された”ことがあるから分かるけど、“塗り替えられてしまった物語”では、どうしても歴史が成立しないんだな。納得できる、この国の歴史が成立しないんだ。
つまり、多くの人たちが、いまだに“納得できない歴史”を抱えて行き詰まってるはずなんだ。彼らが求めれば、化けの皮はたやすくはげる。
私たちに必要なのは、心を揺さぶるような、本物の物語だと、私は思っている。
日本国民が硫黄島に散った守備隊兵士たちの勲功を称え、彼らのの霊に対し涙して黙祷を捧げる日が、早く来ることを切に願う。それは、今を生きる日本人にとっても、大変喜ばしいことだと思う。
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