『日本語が不思議すぎる』 アン・クレシーニ 宮本隆治
どんなことが書かれているか分かってもらうために、ほんのちょっと、内容を紹介しておく。まあ、このくらいなら勘弁してもらえるだろう。
あってるのはどっち?
【1】
A 彼には大きな可能性がある
B 台風が来る可能性がある
【2】
A 梅雨の時期は洗濯物が乾きづらい
B 借金を頼みにくい
【3】
A 彼は仕事をおざなりにしている
B 客への対応がなおざりだ
答えと解説は、一番下にあります。


アン・クレシーニさんは言語学者のヤンキー娘。
日本に住んで、もう20年になるそうだ。北九州市立大学で応用言語学を研究しつつ、大学生に英語を教えているという。「日本語に恋に落ちた」と言ってるが、まあ、肌が合ったと言うことだろう。
日本語は母の言葉だから、私たちはその完全な愛に包まれて、なんの疑問も抱かずにいる。しかし、よそから来た人にとって見ると、日本語というのはだいぶ始末に困る言葉らしい。
「え、なんで、なんで?こんな簡単な言葉はないのに」って、そう思うんだけど、いざ、言われてみれば、答えられないことばかり。いや、それだけじゃない。私も間違って使ってた言葉がいっぱい。還暦を迎えたというのに恥ずかしい。
こうなったら名誉を返上して、汚名を挽回だ。・・・ダメだ、こりゃ
アン・クレシーニサンの疑問に答えてくれるのは、元NHKのアナウンサーの宮本隆治さん。そうそう、あの《NHKのど自慢》の視界のおじさん。日本語の番人であり“泉”。
これは本の中の話しってだけじゃなく、実際、生活の中で、アン・クレシーニさんは日本語の疑問を宮本さんにぶつけ、宮本さんはそれに答えてきたんだそうだ。それをまとめただけで、こんな面白い一冊になったと言うこと。
印象に残ったのは、「言葉は変わっていくものだ」ということ。誤用であっても、それで意味が通じ、一般化してくれば誤用ではなくなる。私はそれに目くじらを立てる質の人間だけど、それを分かった上で、「受け入れるのもいいかな」って思えてきた。若者言葉には抵抗を感じるが、「それを生み出していく想像力はすばらしい」ってアンさんに言われちゃあ仕方ない。
だいたい、ら抜き言葉に目くじら立てておきながら、自分は平然とい抜き言葉を使ってた。・・・おっとっと、使っていた。しかも、ブログでは、い抜き言葉で書いてる。・・・おっとっと、書いている。
歴史家の渡辺京二さんは、「日本語こそわが祖国」と言っていた。日本語は、日本人そのものなんだろう。言葉は変わっていくもので、その変化が日本人らしいものであるならそれでいいってことだな。
ただ同時に、宮本さんみたいに、変わりゆく日本語に柔軟に対応しながら、本則もしっかり抑えておける人になりたいもんだな。
【1】
A 彼には大きな可能性がある
B 台風が来る可能性がある
答えはA。「可能」は「できる」という意味。「できる」には完成させる、その能力があるという前向きな意味がある。だから、台風情報に「可能性がある」はおかしい。「台風が来る可能性がある」というと、それを望む意味になる。それを言うなら、「台風が来る危険性がある」と言うべき。
【2】
A 梅雨の時期は洗濯物が乾きづらい
B 借金を頼みにくい
答えは、両方とも間違い。「づらい」は漢字で「辛い」。体力や精神に負担を感じる時に使う。「にくい」は漢字で「難い」。その動作に抵抗を感じたり、達成に時間がかかる様子を表す。Aなら「梅雨の時期は洗濯物が乾きにくい」。Bなら「借金を頼みづらい」。
【3】
A 彼は仕事をおざなりにしている
B 客への対応がなおざりだ
答えは、両方とも正解。ただ、ちょっと意味が違う。ともに「いい加減な対応である」という意味だけど、「おざなり」はやってはいるけどいい加減。「なおざり」は、そもそもやってないという意味。
あってるのはどっち?
【1】
A 彼には大きな可能性がある
B 台風が来る可能性がある
【2】
A 梅雨の時期は洗濯物が乾きづらい
B 借金を頼みにくい
【3】
A 彼は仕事をおざなりにしている
B 客への対応がなおざりだ
答えと解説は、一番下にあります。
『日本語が不思議すぎる』 アン・クレシーニ 宮本隆治 サンマーク出版 ¥ 1,430 日本語に恋した外国人ヤンキー言語学者が、日本語のプロに弟子入りした |
|
アン・クレシーニさんは言語学者のヤンキー娘。
日本に住んで、もう20年になるそうだ。北九州市立大学で応用言語学を研究しつつ、大学生に英語を教えているという。「日本語に恋に落ちた」と言ってるが、まあ、肌が合ったと言うことだろう。
日本語は母の言葉だから、私たちはその完全な愛に包まれて、なんの疑問も抱かずにいる。しかし、よそから来た人にとって見ると、日本語というのはだいぶ始末に困る言葉らしい。
「え、なんで、なんで?こんな簡単な言葉はないのに」って、そう思うんだけど、いざ、言われてみれば、答えられないことばかり。いや、それだけじゃない。私も間違って使ってた言葉がいっぱい。還暦を迎えたというのに恥ずかしい。
こうなったら名誉を返上して、汚名を挽回だ。・・・ダメだ、こりゃ
アン・クレシーニサンの疑問に答えてくれるのは、元NHKのアナウンサーの宮本隆治さん。そうそう、あの《NHKのど自慢》の視界のおじさん。日本語の番人であり“泉”。
これは本の中の話しってだけじゃなく、実際、生活の中で、アン・クレシーニさんは日本語の疑問を宮本さんにぶつけ、宮本さんはそれに答えてきたんだそうだ。それをまとめただけで、こんな面白い一冊になったと言うこと。
印象に残ったのは、「言葉は変わっていくものだ」ということ。誤用であっても、それで意味が通じ、一般化してくれば誤用ではなくなる。私はそれに目くじらを立てる質の人間だけど、それを分かった上で、「受け入れるのもいいかな」って思えてきた。若者言葉には抵抗を感じるが、「それを生み出していく想像力はすばらしい」ってアンさんに言われちゃあ仕方ない。
だいたい、ら抜き言葉に目くじら立てておきながら、自分は平然とい抜き言葉を使ってた。・・・おっとっと、使っていた。しかも、ブログでは、い抜き言葉で書いてる。・・・おっとっと、書いている。
歴史家の渡辺京二さんは、「日本語こそわが祖国」と言っていた。日本語は、日本人そのものなんだろう。言葉は変わっていくもので、その変化が日本人らしいものであるならそれでいいってことだな。
ただ同時に、宮本さんみたいに、変わりゆく日本語に柔軟に対応しながら、本則もしっかり抑えておける人になりたいもんだな。
【1】
A 彼には大きな可能性がある
B 台風が来る可能性がある
答えはA。「可能」は「できる」という意味。「できる」には完成させる、その能力があるという前向きな意味がある。だから、台風情報に「可能性がある」はおかしい。「台風が来る可能性がある」というと、それを望む意味になる。それを言うなら、「台風が来る危険性がある」と言うべき。
【2】
A 梅雨の時期は洗濯物が乾きづらい
B 借金を頼みにくい
答えは、両方とも間違い。「づらい」は漢字で「辛い」。体力や精神に負担を感じる時に使う。「にくい」は漢字で「難い」。その動作に抵抗を感じたり、達成に時間がかかる様子を表す。Aなら「梅雨の時期は洗濯物が乾きにくい」。Bなら「借金を頼みづらい」。
【3】
A 彼は仕事をおざなりにしている
B 客への対応がなおざりだ
答えは、両方とも正解。ただ、ちょっと意味が違う。ともに「いい加減な対応である」という意味だけど、「おざなり」はやってはいるけどいい加減。「なおざり」は、そもそもやってないという意味。
- 関連記事
-
- 『漢語の謎』 荒川清秀 (2020/07/19)
- 『鑑賞 季語の時空』 高野ムツオ (2020/07/07)
- 『日本語が不思議すぎる』 アン・クレシーニ 宮本隆治 (2020/06/14)
- 『祖国とは国語』 藤原正彦 (2020/05/07)
- 『それっ❢日本語で言えばいいのに』 カタカナ語研究会議 (2020/03/07)