めんどくせぇことばかり せがき『本当は怖い仏教の話』 沢辺有司
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せがき『本当は怖い仏教の話』 沢辺有司

私の生まれた家は、埼玉県秩父市にある。

秩父三十四ヵ所の札所巡りは有名だけど、家は、そのうちの一つの寺の檀家。十数年前までは住職のいない寺で、何かあれば檀家が集まって、相談して事を進めていた。

お寺から住職がいなくなったのは昔の話で、寺の財産をめぐってずいぶんすったもんだがあったようだ。私の祖父が現役だった時代の話で、私の記憶にはない。生まれる前のことだろう。すくなくとも50年近く、住職のいない寺だったんじゃないかな。お経を上げてもらうときは、同じ臨済宗建長寺派の別の寺から、お坊さんに来てもらってた。

だから、「なんとか、おらが寺にも住職を」っていうのは檀家衆の悲願だったが、過去に一度、住職を追い出したことがある。これが障害にならないはずがない。

父は晩年、あちらこちらに話を通して、ようやく若い住職に、おらが寺に入ってもらった。これは、何にもないところから養子縁組を一つまとめる以上に、けっこう大変なことだったらしい。それだけに父も、檀家の人たちも喜んでいた。

その若い住職さんの、住職としての最初の仕事は、彼を呼んだ、私の父の葬儀だった。

私は十八歳で家を出て、その時はそんなつもりはなかったんだけど、結局のところ、それっきり外の人間になった。三十歳の時に必要が生じて、秩父の外に墓も作った。秩父のお寺とのつながりもなくなった。先祖代々の墓は長男が守り、お寺とのつながりも担ってくれている。

父の時もそうだったが、檀家と寺の付き合いっていうのは面倒なことも多い。お金も取られる。田舎暮らしがかかえる“しがらみ”の一つ。ただし、これを“しがらみ”と言えば面倒なばかりだけど、これを“絆”と呼べば、助けにもなる。

その面倒な付き合い一つに、お盆の“せがき”がある。

あのお盆の暑いさなか、朝から白いパリッとしたシャツを着て、折り目のついたズボンをはいて、自転車をこいでお寺に向かう父の姿が思い出される。今は六十五歳を過ぎた兄が、同じようにお寺に出かける。




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仏教とは、仏になるための教え。それがどうして、こうも怪しげに変貌したのか
第一章 仏教の怖い教え
第二章 仏教の過酷な修行法
第三章 仏教の知られざる歴史
第四章 仏教に残る日本の風習


その「せがき」って言うのが、なんだか分からなかった。

私には、「せがきに行ってくるよ」という音でしかない「せがき」。お寺に大人が集まってやる「せがき」。

「背中をかくのかな」とか、「お札になにか書いて渡すのかな」とかね。ずーっと長い間、いったい何をやるんだろうって不思議に思ってた。

父に一度聞いたことがあるんだけど、「ううん、これといった大したことをするわけじゃないんだけど」と言うばかりで、さっぱり分からない。それ以上、聞いても仕方がない感じ。

大人がお寺に集まって、子どもにはちょっと口にできないようなことをやってるらしい。それが子どもの時分の、私の「せがき」観。

「せがき」は、「施餓鬼」だったというのを知ったのは、高校の頃。「餓鬼に施す」だったんだ。お盆の先祖供養と混同されるようになって、同じお盆の時期に、すべての餓鬼を供養することになったらしい。

だったらどうして父は、「これといった大したことをしているわけじゃない」なんて言ってたんだろう。

それもまもなく判明。

お寺に行って、みんなで食事の準備をして、施餓鬼棚を出して、そこに並べて、みんなでお経を唱えて、お昼近くなったら食事をおろして、みんなで食べて、帰る。

たしかに大したことはやってない。

そうそう、とっても大事なことを忘れていた。施餓鬼でお寺に行くときに一番大事なことを忘れていた。施餓鬼でお寺に行くときは、かならずお布施を持って行ってね。


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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


























































































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